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クロスボーダー~外資系若手バンカーの葛藤~ 第一章 光の川 後編

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前回までのあらすじ〉
外資系投資銀行のドイチェガン証券株式会社IBD部門に入社した、小川克貴。都内一等地にあるオフィスで入社式は開かれた。克貴は華やかな雰囲気に圧倒されながらも、投資銀行で働く高揚と不安感を改めて覚える。会場には入社を決めたきっかけになった先輩社員の町田もおり、就職活動時のことが自然とよみがえってきた。

〈著者Profile〉
ショー・ターライ
国立大学を卒業後、外資系投資銀行に入社。退職後は起業家として活躍している。
▶Twitter:@ShowTurai_Novel

 
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注:この物語はフィクションであり、実在の人物・団体とは一切関係ありません。

第一章 光の川 後編

町田さんに出会ったのは就職活動を始めてすぐ、木々が色づききった季節だった。もう1年半近く経つ。

サマーインターンに乗り遅れた克貴にとって、とある理由で「外資系投資銀行へ何としても入ってやる」と決意してからの就活は早かった。あっという間にウェブテストやエントリーシートの締め切りが迫り、すぐに1次選考に突入した。

就職活動をしている期間は、乾いていて、おおよそ楽しいものではなかった。

情報の波にのみ込まれ、不確かな希望と失望でたびたび疲弊した。

就活生同士の探り合い、戦場のような選考の奔流、痛いところまで掘り下げられる面接、数日間のジョブでのアピール合戦……。

それでもかつて経験したあの非情な出来事から比べると、就活は耐えられる程度のものだった。とはいえ、じりじりとあぶられるように精神をむしばんだ。思いやりの心がすり減ってしまうようだった。

そんな中で、町田さんとの出会いは克貴のしぼんだ気持ちを膨らませるものだった。

町田さんとは個人面接で顔を合わせた。

「なあ、就活の必勝法を知りたいか?」

面接官を務めていた町田さんは出し抜けにそう言った。彼の中で面接は終わったのか、これから始まるのか克貴には分からなかった。

「ぜひ聞きたいです」と克貴は前のめりになった。

「相手を思いやることが大事って聞いたことがあるか?」と町田さんはくすくすと笑いながら克貴に尋ねた。

「はい、もちろんあります」と克貴は真面目な顔をして答えた。

「じゃあ就活に応用するとどうなると思う?」

「面接官の方の気持ちも考えて答えることですかね。例えば今なら、町田さんがなぜこういう話を始めたのかを推し量るべきなのでしょう」

「さあ、なぜだと思う?」と町田さんはニヤニヤしながら克貴の目の奥を見つめた。

「すみません、正直、そこまでは分からないです」

「川だよ。京都だと鴨川だな。来年も納涼床行きたいな」

町田さんは克貴が困惑するのを楽しんでいるみたいだった。

「はい?」と克貴は思わず聞き返した。

「流れがあるんだよ。上から下へ流れるのさ。そういった摂理を知ることだよ」とあたかも当然かのように町田さんは言った。

「えっと、川上から川下へのバリューチェーンみたいな話ということですか?」

「はは、金平糖みたいだな。甘いけどかみ応えはある」と町田さんは克貴の回答で遊ぶように言った。

「僕は町田さんのカモみたいですね」

「ははっ、鴨川だけにか。俺の意図をある意味でくんでいるのは評価してやろう」

「ありがとうございます」

「話を戻すと、企業の論理を考えればいいのさ。位置エネルギーと同じで何事も上から下へと行くだろう?下の本筋を知りたければ、上までさかのぼればいいのさ」

「採用という下流を知りたければ、もっと上流までたどればよいのですね。しかしはたして上流には何があるのでしょうか?」

「カッパや幻竜でも現れそうかい?」

「いやそんなつもりでは……」

言いよどんだ克貴の顔を見て、町田さんは面白がるように頭を上下させた。

「投資銀行を受けるならこれくらい分かっていないとな。コーポレートファイナンスの基本さ」

「経営戦略でしょうか?」

「悪くない。そしてその上は?」とさっきまでニヤついていた町田さんは本気の目で言った。

「企業価値の向上とかですか?」と克貴はおそるおそる答えた。

「その通り。それでは企業価値を向上させるには?」

「将来のキャッシュフローを高めることです」

これがれっきとした面接だったことを思い出し、克貴は冷や汗をかいた。町田さんはふざけたふりをして、時折鋭い目をするのだ。

「正解」と町田さんは満足そうに顎をなでた。

「ありがとうございます」

町田さんの表情を見て克貴は思わずほほえんだ。

「つまり将来のキャッシュフローを最大化するために採用も行われているということさ。じゃあ就活の必勝法は分かったか?」

「はい分かりました。利益を出せる人材を探しているということですね」

「そう。つまり何が、採用されるかどうかを分けると思う?」

――企業で活躍できるかどうか。

「さあ、カツのこれからが楽しみだな」

就活時代の回想にふけっていた克貴に、町田さんが肩を抱いてきた。

社長のスピーチは既に終わっており、スクリーンには会社のプロモーションビデオが流れていた。会場はすっかり顔を赤らめた人たちでごった返していた。

器用にも町田さんは片手にワイングラスを2つ持っていた。片方を克貴に渡し、「乾杯」とグラスを合わせた。

そのカンッという快音を聞きながら、克貴は感慨に浸った。

もう町田さんは「町田先輩」なのだ。その事実がたまらなくうれしかった。

胸が躍った。町田さんのような魅力的な人たちと一緒に働ける。

そして経営の上流部分を扱い、企業価値向上を目指すクライアントに対してアドバイザリーをしていくダイナミックさ。学生時代には絶対に関われなかったようなドラスティックな世界に身を投じることができるのだ。

「次はカツたちの入社スピーチだな。あそこの隅に立っている子を口説き落とすつもりでやれよ」と町田さんはいつもの調子で言った。

「いやそんな……」と克貴は口ごもった。

新入社員も前に出てスピーチをしなければならない。それも英語でだ。

初っ端に、先ほどの女性が流暢な発音で格言を引用した堂々たるスピーチをし、会場は沸いた。彼女はエレン・橘という名前らしい。

克貴は頭にメモした文章を復唱したり、口をパクパクさせたりしていた。同期のスピーチは耳に入ってこなかった。

司会に「小川克貴」と名前を呼ばれ、拍手とともに歩み出した。

「素晴らしい場をありがとうございます。おいしい料理にワイン、そして大勢の先輩方も来てくださり、非常に光栄です。私は他の同期のように華々しい経歴はありませんが、何としても外資系投資銀行で働かなければならない理由がありました。ですので会社の利益に貢献できるように、プロフェッショナルの姿勢を先輩方から学びつつ、人の3倍働くつもりで頑張っていきます」

冒頭かみながらも、何とかスピーチを終えた。一息つき周りを見渡すと、克貴は先輩社員たちから喝采を浴びていた。

熱いほどのライトが注がれ、克貴は光の川に飛び込んだような高揚感に包まれていた。

第二章 複雑な味 前編につづく。2022/2/18更新予定です)
 


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