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エリートこそ「AI革命」の担い手だ~東大生がインターネットよりAIに“向いている”理由とは?


日本のAI(人工知能)研究の第一人者である東京大学大学院の松尾豊・特任准教授と、「外資就活ドットコム」を運営するハウテレビジョンの代表・音成洋介との対談記事は、お読みいただけたでしょうか(下記リンクをご参照ください)。

 
今回は、その松尾研究室とも関わりのある椎橋徹夫さんにインタビューしました。

椎橋さんは海外大からボストンコンサルティンググループ(BCG)に入社し、ビッグデータ活用チームの立ち上げなどに従事。BCG退職後、PKSHA TechnologyでAI事業部の立ち上げをリードしたほか、松尾研の寄附講座のディレクターを担当しました。

現在は、Laboro.AIの代表取締役CEOとして、AI(人工知能)を活用したソリューションの開発などを行っています。

日本企業、ひいては日本社会へのAI導入の最前線で活躍する椎橋さんは、「AIによるイノベーションは、戦略コンサルティングファームや投資銀行などのプロフェッショナルこそ志向すべき」と言います。その真意を聞きました。

〈Profile〉
椎橋徹夫(しいはし・てつお)
株式会社Laboro.AI(ラボロ エーアイ)代表取締役CEO。
米国州立テキサス大学 理学部 物理学/数学二重専攻卒業。2007年にボストンコンサルティンググループ 東京オフィスに参画。ワシントンDCオフィスへの出向を経て2014年、当時最年少でプリンシパルに昇進。社内のテクノロジーアドバンテージグループのコアメンバーとして、ビッグデータ活用チームの立ち上げをリード。同年退職し、東大発スタートアップ・PKSHA Technologyの初期メンバーとして参画。AI事業部の立ち上げをリード。また同年より現在まで、東京大学大学院 工学系研究科 技術経営戦略学専攻 松尾豊研究室 グローバル消費インテリジェンス寄付講座 ディレクターを兼任。2016年、AIを活用したソリューション開発などを手掛けるLaboro.AIを創業。2018年よりDigitalBCG Japanのディレクターも兼務。

 

 

 

米中も、AIによる「既存産業の変革」は進んでいない

――松尾先生は日本社会へのAI導入について、まったく進んでおらず「絶望的」という見方でしたが、実際にクライアントへのAI導入を進めている椎橋さんはどう見ていますか?

椎橋:まず、松尾先生のおっしゃる通り、米中は間違いなく進んでいます。AI研究に関する新しい学術論文の数は中国がアメリカを抜いてトップです。それに比べたら日本は全然ダメで、絶望的というのも分かります。

ただ一方で、私は、見方を変えると日本もまだまだ可能性があるというか、むしろ「勝負が始まってすらいない」という側面があるのではないかと考えています。

なぜ米中がAI先進国といわれるかというと、Googleやバイドゥといったインターネット系のジャイアントが大量の資金を投下して先導しているからです。でも、その現状では、「AIによる本質的な革命」はまだ起こっていないと私は見ています。

――その「AIによる本質的な革命」とは何でしょうか?

椎橋:端的に言うと、AIによる「既存産業のイノベーション」です。

例えば製造業や農林水産業といった古い業界を変えることが、AIの本当のインパクトだと考えています。その観点でいうと、中国もアメリカも、そして日本も、大差ない。後ほど説明しますが、日本の方がむしろ分があるのではないかとさえ思えます。

 

インターネットは消費者の革命、AIは既存産業の革命

――「日本の方にむしろ分がある」と言いますと。

椎橋:少し説明が必要なので、順に話しますね。


AIによる変革は「第四次産業革命」と呼ぶべきものと考えています。

上図(タップまたはクリックで拡大)を説明していきます。まずは上部のリアルな世界で起きた、第一次と第二次の産業革命についてはご承知の通りですので、割愛します。

下部のデジタル世界で起きた第三次産業革命は、大きく2つに分けられ、一つがトランジスタの発明に代表されるICT革命。これにより情報の処理や加工の効率が飛躍的に上がりました。もう一つはインターネットの登場で、情報の流通効率が劇的に上がりました。

こうして、リアルもデジタルも、それぞれモノと情報の加工や流通が効率化された。しかし、モノをデジタルな情報に落とし込んだり(=情報化)、デジタル情報を基にモノを動かしたり(=情報活用)することは、まだ非効率な方法でしか行えていないのが現状です。

――そこの「溝」を埋める、つまり効率化するのがAIというわけですね?

椎橋:そうです。例えば、膨大な数の製品を、AIを搭載した高性能センサで認識してデジタル情報化したり、逆に膨大なデジタル情報をAIが処理することでロボットを動かしたりということです(下図、タップまたはクリックで拡大)。


そして、ここで重要なのは、「インターネットによる革命」と「AIによる革命」は、本質的に意味合いが異なるということです。

つまり、インターネットがもたらしたのは情報流通の変革だったので、「消費者にとっての革命」という意味合いが強い。例えばAmazonは、既存の小売の店舗などのアセットを全く使わずインターネットで賄ったことで、消費者の利便性が劇的に上がり、受け入れられました。

すなわち、ECという新しい市場を開拓した。このように、既存産業とは全然別のところで起こる「新市場の開拓革命」が、インターネットがもたらした変革だと思います。

一方でAI革命は、消費者ではなく、既存産業側の生産性が劇的に上がることがメインになると考えています。既存産業のコアな業務プロセスがAIに置き換わる。例えば、自動車メーカーなら、一連の自動車生産プロセスがAIに代替されるということが、社会にとって最もインパクトが大きいのです。

つまり、AIによる変革は、「既存産業にとっての革命」で、彼ら自身の関与を抜きにしては起こらない革命なのです。

 

「インターネットの勝ちパターン」とは異なるアプローチが必要

――そう考えると、AmazonやGoogleなどはインターネットにより誕生した企業であり、無論「既存産業」ではありませんよね?

椎橋:その通りです。彼らのようなIT企業は、基本的には既存産業に対してではなく、まずは自分たちの得意分野であるインターネット事業にAIを導入しています。しかし、インターネットの世界はすでに情報化されているものばかり。インターネット以外の産業に比べてAI活用の余地が小さいと思われるのです。

そう考えると、実は、AIについてすごく先を行っているように見えた米中も、既存産業へのAI導入はそんなに進んでいない。むしろ米中は、IT大手にAIの優秀なタレントが吸い取られているため、もしかしたら日本の方に分があるかもしれないということなのです。

実際、中国のコンサルタントと話していても、AIの優秀な人材は古い産業には全然入り込めていないと聞きます。タレントがたくさんいるように見えますが、バイドゥやアリババ、テンセント、その他のAIスタートアップにほとんどが吸収されています。

――ただ、例えばアメリカでは自動運転など、自動車業界といった一部の既存産業にもAI導入が進みつつある気がします。

椎橋:ご指摘の通り、アメリカが少し違うのは、例えばテスラなど、シリコンバレーの企業が、リアルな世界さえも、資本の強さで「割と無理やり」変えつつあることだと思います。Amazonもインターネットにとどまらず、リアルな店舗を生み出したりしています。

ただ、これもあくまで一部にとどまっていて、それらIT企業が全産業をカバーするかというとそれはない。そう考えると、やはりAIで既存産業が変わるというのは進んでいないと思います。繰り返しますが、まだ勝負すら始まっていないのです。

――「既存産業にチャンスあり」と考えることもでき、これは松尾先生の言う「“Cool”じゃないもの」にチャンスがあるという考え方に近いですよね?

椎橋:近いかもしれません。ここで“Cool”というのは、あくまでインターネットのレンズを通して見た“Cool”であり、インターネットカルチャーでいう“Cool”なのだというのが重要です。言い換えると、例えば“to B”よりも“to C”の方が“Cool”という感覚ですね。

何が言いたいかというと、この感覚と同様、今の世の中ではイノベーティブなものイコール「インターネットをベースにして生まれたもの」という感覚があると思うのですが、それはあくまでこの数十年がインターネット革命の時代だったからなのです。

しかし、説明した通り、インターネットとAIによる変革は構造が全く異なるので、インターネットの「勝ちパターン」でAIのイノベーションを起こそうとしても、うまくいかない可能性が高い。そちらに引っ張られるのはリスクだと思うのです。

――AIの勝ちパターンはどういうものになるのでしょうか?

椎橋:Laboro.AIでは日々それを模索していますが、まずインターネットの勝ちパターンを一言で表すと、「プロダクト化してスケールする」。つまり、汎用的な単一のウェブサービスを作って、多くの人に使ってもらうということです。

一方で、AIは各企業のコアな業務プロセスを置き換えるわけですが、他社との差別性や競争力を生み出したいはずの各企業に、汎用的なプロダクトを入れるのは矛盾します。ですから、個々の企業に合わせてカスタマイズ開発したAIソリューションを提供しているのです。

 

東大生にこそ向いている、AIによるイノベーション

――日本においてAIによるイノベーションを起こすプレイヤーはどういう人材になるのでしょうか?

椎橋:松尾先生はよく、「東大生にインターネットサービスを考えさせるとクオリティが酷い」と言います。この理由は、誤解を恐れずに言えば、一般の消費者の感覚とは少し違った人が多く、センスがないから。そのため、東大生はインターネットの世界では比較的成功しにくかったというのです。

しかし、AIは真面目にコツコツやればいい。そういう意味で、東大生に限りませんがエリートにすごく向いています。AI革命に必要な人材要件としては、既存産業に対する深い産業理解を基にコアな業務プロセスを見極め、そこにAIをどうカスタマイズして導入するか、つまりビジネスと技術をつなぐための分析力や設計力が最重要です。

そしてこの力は、コンサルティングファームや投資銀行に就職するようなプロフェッショナルに求められるものと近い。こう考えると、インターネット全盛のころよりも、AIのイノベーションの方がエリートに期待されることが多く、彼らこそ志向すべきだと思うのです。

――ただ、新しいAI技術自体が生まれにくい日本国内にとどまっていて大丈夫でしょうか?

椎橋:それはアカデミアの競争と、国や産業の視点での競争の違いですね。考え方次第で、あえて極端に言えば、新規性のある論文が日本から一本も出なくても、それら技術を広く世界からキャッチアップして、産業に実装する部分さえ国内でできればいいともいえます。「知識の加工貿易」と呼んでいるのですが、そのAIを実装した産業を今度は輸出すると。

日本が勝つとしたらこの部分だと思っていて、繰り返しますが、これに必要な能力は新しい技術を適切に持ち込んで、深い産業理解と組み合わせて、産業に実装する力。それができるのはプロフェッショナル。

外資就活ドットコムのユーザーの皆さんに伝えたいのは、皆さんがこのプレイヤーになっていけば、日本は勝つ可能性があるということ。誤解しないでもらいたいのが、AIの技術に対する深い理解は必要ですが、エンジニアとして技術を実装する力というよりは、産業とつなぎ合わせる設計力が肝要です。

 

AIとビジネス、両方に精通した新たなプロフェッションが生まれる

――コンサルや投資銀行に就職する学生の中には文系も多く、AIのテクノロジーを身につけるハードルは高い気がします。

椎橋:これも松尾先生が言っていたように、彼らも勉強さえすれば、半年とか1年でトップレベルに近いところまでいけます。実は、従来の技術の方がよっぽど理解しにくい。ディープラーニングなどはハードルが高いイメージが強いですが、本当は逆に易しい部類です。

ですので、これからは例えば「ファイナンスを勉強するようにAIを勉強する時代」になるかもしれません。ファイナンスは汎用的な知識として、一流のビジネスマンはこれまで必ず勉強していたじゃないですか。AIを含むデジタルテクノロジーもそれと同じような扱いで、一流になるためには誰もが身につける知識になるのだと思います。

――職業でいうと、例えばコンサルタントがAI革命を起こすのでしょうか?

椎橋:既存の職業の中で近い能力を持っているのは、確かにコンサルタントや、ITエンジニアをまとめるプロジェクトマネージャーらだと思います。でも、その各々を見ても、理想形にはそれぞれ欠けている部分があります。

ビジネスのことも技術のことも深いレベルで知っており、その融合に基づいて適切なアルゴリズムを設計できる人間。Laboro.AIではその人材を「ソリューションデザイナー」と呼んでいるのですが、新しいプロフェッションとしてこういう職業ができていくと考えているのです。

 

「改革への抵抗」の“壁”が崩れる3つのパターン

――社会全体へのAI導入の道のりを考えると、既存産業の内部からの抵抗が一つの「壁」になるかと思いますが、どのように進めていくのでしょうか?

椎橋:そこは実際これからなので、どうなるか不透明な部分です。とはいえ、考えられるのは3パターンですかね。

一つは、先程触れたアメリカのモデル。インターネットで莫大な成功を収めている新興企業が、資本力によって既存産業のアセットをそろえ、「外様」として既存産業自体をディスラプトしてしまうパターンです。ただこれは、例えば国による統率力が強い中国では起こりにくい。日本でも起こらない気がします。

二つ目は、「テクノロジーベースのプライベート・エクイティ(PE)・ファンド」のような存在が主導するパターン。例えば既存産業の大手企業の経営が立ち行かなくなったとき、それをファンドが買収しAIなどの最新テクノロジーを注入することで生産性を劇的に上げ、バリューアップさせてエグジットするモデルです。

三つ目は、やはりこれが王道だと思いますが、コンサル的なアプローチです。つまり経営者と一緒になって、社内の反発を受けつつも、ハードランディングではなく、手順を追って上手く企業をアップデートしていく。

二つ目と三つ目のパターンで最もありそうなのは、既存産業の業界2位とか3位の会社が、他社に先駆けてAIを導入して成功し、すると業界1位も含めた他社も追随してAI活用に乗り出すというストーリーです。こういう事例がいくつも出てくると、社会全体が変わるはずです。

――椎橋さんが仕事をする中でも、実際に企業側の抵抗を感じる場面はありますか?

椎橋:それはやっぱりあります。AIを導入すると、現場の仕事自体が変わってしまうので、それは個人レベルではどうしても面倒だと思ってしまいますよね。

これはRPA(ロボットによる業務自動化:Robotics Process Automation)の導入との対比で考えると理解しやすいです。RPAは一人一人の仕事を分かりやすく楽にするので、導入に当たって社内のウケが非常に良いですが、AIほどの生産性向上のインパクトはありません。

AIによる真のイノベーションでは、RPAのように部分的な仕事の置き換えではなく、そもそもやること自体が変わります。そうすると抵抗が生じるのは自然です。ですからそれを前提に、業務プロセスを再設計する力や組織を動かす力が必要になるのです。

 

「古い産業」に触れられるキャリアプランを考えよう

――これまでのお話を踏まえ、今の大学生は就職先としてどういうところを目指すのが良いのでしょうか? あるいは起業すべきですか?

椎橋:今までカジュアルには「そんな大企業行くとか言ってないで起業しなよ」とか言っていましたが、改めてこれまでの話を考えてみると、古い産業に根を張ることが最も大事な気がします。

今現在の「先進的な企業」はインターネット系になりますし、起業するにしてもITサービス事業が前提のようになっています。でもそれだけだと、既存産業とのパイプがあまりないので、古い産業に深く入り込むことはしづらい。そういう意味では、コンサルや投資銀行、あるいは大きな事業会社も選択肢として悪くない気がします。

ただ一方で、コンサルや投資銀行も含めて大企業の仕組み上、そのまま中からイノベーションを起こせるようにはなっていないと思います。ですから、どこかのタイミングで外に出る。外から刺激を与える立場になった方が良いのでしょう。

あくまで一例ですが、コンサルを2〜3年で辞めて、AI系のベンチャーに転職する人が私の周りでは多い。こうしたキャリアを歩めば、まさに既存産業にも根を張りつつ、最先端のテクノロジーにも造詣が深いという人材になれるのかもしれません。
 

 

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