【コンサル vs IBD】音楽家になる夢が音楽ファンドに。元アーティストは投資銀行の道を選んだ~シリーズ「あなたよりすごいヒト、紹介してください」vol.3
2018/05/11
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こんにちは、ライターの野原うさぎです。
「あなたよりすごいヒト、紹介してください」シリーズの第三弾は、前回のリョウさんから紹介されたノリヒロさん。定年まで働くどころか、短期間で会社を卒業し、起業をすることを宣言してなお、IBDの内定を勝ち取った、ツワモノの裏側に迫ります――。
人生のテーマは「音楽」
――とてもスマートで、爽やかな第一印象なノリヒロさん。まずはご経歴を教えてください。
こんにちは、ノリヒロと申します。都内の私立大学出身で、今年の4月から某証券会社の投資銀行部門で働いています。いま(インタビュー当時)はまだ新入社員研修の真っ只中です。
社会人になる前の話をすると、高校3年生当時は音楽大学への進学を希望していて、将来は音楽家になるのが夢でした。3歳の頃から続けてきたピアノの技術についてはそれなりに自信がありましたし、自分としては音大を受験するだけなら十分準備は整っていたと思っています。しかし、音楽家として食べていくという進路ついて両親と意見が対立。特に公務員の父の理解がどうしても得られず、1年浪人した結果、前述した私立大学に入学しました。
――音楽に関わる夢は、音大受験が叶わなかった時点で諦めてしまったんですか?
「クラシック音楽が好き。そして一生を通じて、音楽に関わっていたい」
たとえ音楽家になる夢が叶わなかったとしても、これが私の人生のテーマであることに変わりはありませんでした。
結果的に大学は経済学について学べる学部・学科に進学したので、この勉強を活かして音楽に関わる道はないものか思索していたところ、偶然にも幼い頃お世話になったウィーン国立音大(※音楽の都ウィーンにある、クラシック関係者なら誰もが憧れる名門大学)の教授にお会いするため訪欧する機会に恵まれました。そこでヨーロッパの“芸術系投資ファンド”の存在感と、ファンドによって芸術産業が活気づいている姿を目の当たりにし、私ならではの音楽への関わり方はこれだ! と決意するに至りました。
実は日本にもすでにJ-POPを中心にした「音楽専門の投資ファンド」といえるものが1社あり注目を集め始めていますので、事業形態そのものは皆さんもご存知かもしれません。
従来、ミュージシャンは音楽事務所やレーベルに所属し、CDを売り出すという形でしか活動できませんでしたが、このファンドは音楽の原盤権を証券化して販売、CDの売上に応じて利益を分配する仕組みをとっています。CDの制作・プロモーションには初期投資に莫大な資金が必要で、とても個人でまかなえる金額ではないため、これまでミュージシャンになりたい人はどこかの事務所に所属、そこからメジャーデビューする必要があったのです。
しかし、このファンドの仕組みを使えば、個人でCDの販売を果たすことが可能になりますし、音楽の道に挑戦できる人も増える。この形を踏襲してより長期的なスキームに変形し、クラシック音楽はもちろん、映画や絵画、その他全ての芸術領域に長期的にお金を回して行く。そんな総合型アートファンドを作ることが私の夢であり、目標です。
――「ファンド」という、就職先の企業選びにも繋がるようなキーワードがでてきましたね。はじめから金融系に絞って選考を受けていたのでしょうか?
「音楽ファンドをつくる」という目標を持った私は、PEファンドやVCの方々のファーストキャリアを辿って志望業界を絞り込み、特に事業の立ち上げや資金管理の基礎が学べる外資系コンサルティングファームに狙いを定めて就職活動をスタート。
しかし、(失礼ながらも)片手間程度の意識で選考を受けた日系のIBDインターンで、自分についてくださったメンターに将来の夢を打ち明けたとき、「それならば、先にファイナンスについて勉強したほうがいいのではないか?」と助言を受けました。選考を受けながらも薄々感じてはいたのですが、コンサルでは入社した後にアサインされる案件は完全には自分で選べません。
ですから、音楽ファンド立ち上げに直接的に役に立つような仕事を経験できるかは不透明。それよりも確実にファイナンスの知識や金融系の資格が得られるIBDに就職し、力をつけるほうがいいと考えを変えました。
また、IBDで専門知識を付けた後に、コンサルに転職することも可能だと思ったことも、進路を決めた理由のひとつです。
その時点では外資系コンサルに複数内定を持っていましたが、就職活動を仕切り直し。コンサル会社は全て内定辞退し、その時点で選考に残っていたIBD選考に気持ちを切り替えました。
MBBを含む戦略コンサルや、IBDにも複数内定をいただくことができましたが、最終的には、自分の夢に理解を示してくれた証券会社のIBD部門に就職します。
この会社の選考プロセスにおいて印象的だったのは、面接で「将来やりたいことがあり、短期間で独立する可能性がある」という話をしても、内定がいただけたこと。海外採用の方も多く在籍しており、部門全体にも転職を受けいれるカルチャーがあることも、転職や独立に対してネガティブな感情が少ない要因のひとつかもしれませんね。
また、アマゾン創業者のベゾス氏や、フランス大統領マクロン氏など、投資銀行を経てから独立し、活躍する人は山ほどいるので、採用側も一定数は独立していくことを覚悟の上で採用しているのが業界らしいところです。
ただ、この話を鵜呑みにして、面接で不用意に「2〜3年で辞めますけど」なんて、言ってはダメですよ! 終身雇用を基本にする会社では、面接官によってはいい印象を持たれない可能性も考えられます。受け答えは慎重に。
先人たちが教えてくれた、「人生に王道なし」の考え方
――実はリョウさんから、「ノリヒロさんは不労所得がすごい」と紹介をいただいているんです。本当のところはどうなのでしょうか?
「すごい」かはわかりませんが・・・不労所得はあります(笑)。
大学生になったら、みんな一斉にバイトを始めますよね。ところが、バイトを始めてすぐに私はみんな一律の「時間給」という対価に違和感を覚えました。時間給では、いくら工夫しても、成果を出しても、もらえる金額差は微々たるもの。
さらに、学生という身分をフルに楽しみたかった私は、日中は自分が好きなこと“だけ”するにはどうしたらいいか考えて・・・「そうだ!自分が寝ている間に収益が発生することをすればいいんだ!」と。
株やFXの自動売買、仮想通貨、不動産投資など含めて様々な手法を試しましたが、「寝ている間に稼ぎたい」という自分の理想に一番近かったのはYouTube。トライアンドエラーをしながら、YouTubeの配信アルゴリズムに「良質な動画」の判定を得られるロジックを研究、動画を作って配信を続けていきます。
たとえばクイズ番組のような脳トレ系問題はユーザーもついつい見入ってしまうのか、安定した収益を出し続けてくれましたね。もちろん、動画の制作スキルも、YouTubeについての知識もない状態で挑戦しますから、参入障壁は決して低くはないというか、収益が軌道に乗るまではある程度まとまった時間の投資が必要です。
ですから、私にとっての「不労所得」とは、決して「楽して稼ぐ」ことではありません。単に、投資の時点とリターンが得られるタイミングにラグが発生するビジネスモデルという風に理解をしています。このタイムラグに関しては、作曲にも通ずるものがありますよね。ゼロから作り出すのには相当のエネルギーが必要で、収益が発生するのは作曲時点から考えるとずっと後。
しかし一度軌道に乗ってしまえば、放送や演奏で収入が得られる可能性があります。だからこそ、私はYouTube配信に面白みを感じたのでしょう。
――将来の目標がしっかり固まっているからこそ、そこに向かう道順を柔軟に選択していらっしゃる印象を受けます。将来の道を決める上で、迷った時に参考にした書籍や、アドバイスをもらった人はいらっしゃいますか?
ここまで「自分の道」を作る過程で拠り所のひとつになったのは、子供の頃から繰り返し読んできた、伝記のなかの芸術分野の巨匠たち。特に音楽やアートの世界の先人たちは変わり者ばかりですから、私がちょっと変わった選択をしたり、苦労をしたところで、彼らの人生に比べれば大したことはしてない、もっと攻めなければ! と思えてきます。「人生に王道なんてない」と、自分だけの道を次々に開拓していけたことこそが、私がいま幸せでいられる理由だと考えています。
また、起業家であった祖父の影響は強く受けていると感じます。家にもビジネス書が数多くありましたから、子供の頃からそういったことには慣れ親しんでいました。実は自分自身も学生時代に小さな事業をひとつ興しているのですが、起業が身近にあったことは大きいと思います。
――最後に、この記事を読んでいる就活生にアドバイスをお願いします。
1)「人と違う経験」をしておく
繰り返しになりますが、「他人と違う経験」は、就活でもかなりのアドバンテージになります。即物的なことを言えば、変わったエピソードがあるだけでグループ面接で目立つことができますし、面接でも話せます。経験の数はあって損をするものではないですから、学生の間に、エントリーシートに書ききれないくらい、たくさんのことに挑戦するといいと思います。
2)伝え方が9割
とはいえ、みんながみんな、音大受験を志していたわけでも、海外育ちでもないわけです。「自分には平凡なエピソードしかない!」と悩んだら、面接官にそれをどう伝えるか、特に“何を言わないか(どこを削ぎ落とすか)”についてよく考えると良いと思います。ありがちなバイトリーダーのエピソードも、伝え方・話し方をよく考え、練習することで、他の就活生と差別化を図ることはできるはず。伝え方に磨きをかけてください。
3)就職先は人で選ばない
学生が面接の段階で会える社員なんて、せいぜい10人が限度。さらに、人事部が面接や説明会の場に登場させる社員は、学生を惹きつけるための「キラキラ社員」です。一般的な会社では、将来その人たちと一緒に働ける可能性はそれほど高くありません。であれば、会社の事業状況や入社後に関われるであろう案件の内容、勤務地など含めた“ファクト”を集めて、冷静に判断することが重要です。
採用面接の本質はシンプルで、「聞かれたことに答える」ことができれば受かります。
・・・これが本当に難しいんですけどね。聞かれたことの言葉尻を捉えるのではなく、質問してきた相手の状況であったり、裏の意図を汲み取り、さらに単純明快に回答する。テクニック的なことになりますが、とても重要なことです。
これから本格化する就職活動、頑張ってください。
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