博士課程に進学してその後ポスドク等の低賃金で不安定な仕事を経た上で、最終的に常勤の大学教員の職を得るためには、やはり実家が太く金銭的な余裕がありお金の心配を全くしなくてもよいような人でないと、現実的には生き残るのが難しいものなのでしょうか?裕福な家庭に生まれず実家の金銭的な支援が全く期待できない場合、たとえ大学教員や研究職に強い興味があったとしても、安易に大学院に進学してしまうと後々非常に苦労することになるのでしょうか?
この質問への回答 1件
相談室回答者
学生時代から30年以上京都大学に在籍しています.2018年に共同創業者として大学発ベンチャー企業を立ち上げました.
日本国内限定で考えていますか? もしそうだとすると,それは何か強い制約があってのことでしょうか.ポストを求める場を世界に広げると,見える景色が変わってくるかもしれません.
私は工学分野しか経験していないので,他の分野のことは全然わからないのですが,分野によって大学院進学の中身は大きく変わるのではないかと思います.外部から研究費を得ている研究室であれば,博士後期課程の学生にも十分とは言えないまでもそれなりの経済的支援はしていると思います.もちろん,研究室レベルではなく,より大きな組織として取り組まれているところもあります.
日本の大学に限定すると,ポストを得るのは難しくなっていると思います.今後も少子化が進み,海外の学生が日本に魅力を感じなくなるとすれば(あくまで仮定です),状況が好転することは期待できません.大学教員にこだわらず,研究職に就きたいということであれば,選択肢は大きく広がると思います.グローバル大企業の研究資金は大学が太刀打ちできるような水準ではないですし,面白い研究もできるのではないでしょうか.
自分自身の経験から思うのですが,大学教員のキャリアというのは非常に強く運に左右されます.そもそもポストが空いていないところには着任しようがないわけで,「私講師や研究所助手が他日正教授や研究所幹部となるためには,ただ僥倖を待つほかはない(中略)これほど偶然によって左右される職歴はほかにないであろう.」とマックス・ウェーバーが述べたとおりです.このため,「後々非常に苦労することになる」かどうかを断定的に述べることはできません.少なくとも私には.
オススメしたいのは「やりたいことをやる」です.研究職に就きたいという想いが強いなら,そのために大学院に進学したいという想いが強いなら,それを諦めると後々まで後悔することになりませんか.そうなってしまうのはとても残念なことに思えます.
回答日:2020/07/31
