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こんにちは。総合商社、プロフェッショナルファームを中心に就活をし、各業界から複数の内定を獲得した者です。3回に分けてファイナンスの知識を紹介しています。これまでの基礎知識と実務的な評価手法を踏まえ、第3部では現代の投資環境で求められる高度な財務分析手法を解説します。
ROE分解によるデュポン分析、リスク管理に不可欠なVaR(Value at Risk)の概念、そして企業の財務安全性を評価する流動性・効率性分析など、プロフェッショナルとして必須の分析ツールを習得します。
さらに、複雑な企業構造の分析に必要なSum-of-the-Parts(SOTP)分析や、不確実性を定量化する感応度・シナリオ分析など、実務で直面する高度な分析課題への対応力を身につけます。
最後に、現代の投資環境において重要性が高まっているESG投資の財務分析への統合、そして特殊な状況下での評価手法である破綻企業・事業再生の分析手法まで、幅広い専門知識をカバーします。ぜひ最後まで読んでマスターしてください。
投資銀行&FAS&総合商社 最低限押さえておきたいファイナンスの知識第2部:企業価値評価の実務
投資銀行&FAS&総合商社 ファイナンスの知識第3部:高度な財務分析概念advance編
第1章:収益性分析の高度な理論
①デュポン分析(ROE分解)とは?
デュポン分析は、ROE(Return on Equity:自己資本利益率)を構成要素に分解することで、企業の収益性の源泉を詳細に分析する手法です。この分析により、企業がどのような経営戦略で株主価値を創出しているかを体系的に理解できます。
基本的なデュポン分解 : ROE = 純利益率 × 資産回転率 × 財務レバレッジ ROE = (純利益/売上高) × (売上高/総資産) × (総資産/株主資本)
5要素デュポン分解 : ROE = (純利益/税引前利益) × (税引前利益/EBIT) × (EBIT/売上高) × (売上高/総資産) × (総資産/株主資本)
この分解により以下の経営効率を個別に評価できます:
1 税務効率性 (純利益/税引前利益):税務戦略の有効性
2 金利負担効率性 (税引前利益/EBIT):資本構成の最適性
3 営業効率性 (EBIT/売上高):本業の収益創出能力
4 資産効率性 (売上高/総資産):資産の活用効率
5 財務レバレッジ (総資産/株主資本):負債活用による効果
実務的応用 : デュポン分析は、同業他社との比較や時系列分析において、ROEの改善・悪化要因を特定するために広く活用されます。例えば、ROEが低下した場合、それが営業効率の悪化によるものか、資産活用の非効率化によるものかを明確に識別できます。
②ROA、ROE、ROICの違いと使い分けは?
これら三つの収益性指標は、それぞれ異なる視点から企業の資本効率性を評価し、投資判断や経営評価において重要な役割を果たします。
ROA(Return on Assets:総資産利益率)
ROA = 純利益 / 総資産
ROAは企業の全資産がどれだけ効率的に利益を生み出しているかを示します。資本構成の影響を受けるため、負債比率の異なる企業間比較では注意が必要です。
適用場面 :
・資産集約型企業(製造業、不動産業)の効率性評価
・企業の基本的な収益創出能力の測定
・銀行による融資審査での収益性評価
ROE(Return on Equity:自己資本利益率)
ROE = 純利益 / 株主資本
ROEは株主投資に対するリターンを直接的に示し、株主価値創出の最重要指標とされています。財務レバレッジの効果を含むため、負債活用戦略の評価にも使用されます。
適用場面 :
・株式投資判断の主要指標
・経営陣の株主価値創出能力評価
・配当政策や自社株買い政策の基準
ROIC(Return on Invested Capital:投下資本利益率)
ROIC = NOPAT / 投下資本 投下資本 = 株主資本 + 有利子負債 = 総資産 - 無利子負債
ROICは企業の事業活動に投下された資本(株主資本と有利子負債)に対するリターンを示し、企業の真の価値創出能力を評価します。
適用場面 :
・企業価値創出の評価(ROIC > WACC の場合に価値創出)
・事業部門別の資本効率性比較
・M&Aによるシナジー効果の測定
使い分けの原則 :
1 株主視点 :ROEを重視(株式投資、株主価値経営)
2 事業評価視点 :ROICを重視(事業戦略、資本配分)
3 総合効率視点 :ROAを重視(全体的な経営効率)
③持続可能成長率とは?
持続可能成長率(Sustainable Growth Rate:SGR)は、企業が外部からの資金調達を行わずに、内部留保のみで維持できる最大成長率を表す重要な概念です。
基本算式 : SGR = ROE × (1 - 配当性向) SGR = ROE × 留保率
詳細算式 : SGR = (純利益率 × 資産回転率 × 財務レバレッジ × 留保率)
経済的意味 : 持続可能成長率は、企業が現在の:
・利益率水準
・資産効率性
・財務レバレッジ
・配当政策
を維持しながら、追加的な資金調達なしに達成できる売上成長率の上限を示します。
実際の成長率との比較分析 :
1 実際成長率 < SGR :
・成長機会の不足
・保守的な経営戦略
・余剰資金の蓄積
2 実際成長率 = SGR :
・理想的な成長バランス
・効率的な資本活用
3 実際成長率 > SGR :
・外部資金調達の必要性
・株式発行または借入増加
・配当削減の検討
戦略的含意 : SGRを超える成長を持続的に実現するには、以下の改善が必要です:
・利益率の向上(コスト削減、価格戦略)
・資産効率の改善(在庫管理、設備稼働率向上)
・財務レバレッジの活用(負債比率の最適化)
・配当政策の見直し(留保率の調整)
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