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学生時代から、インターンシップ生としてウェブサービスの開発に取り組み、新卒で株式会社ディー・エヌ・エー(以下DeNA)に入社。アプリ開発に携わっていたが、1年半でDeNAを辞め、創業間もないスタートアップに新たな活躍の場を見いだしたのが、時武佑太・株式会社LegalForce取締役CTO(最高技術責任者)だ。
ITエンジニアやデータサイエンティスト志望の大学生に向けたオンライン就職イベント「外資就活Terminal」の基調講演では、時武氏がエンジニアとして生きることになった契機や、自らの強みを生かしたキャリア形成の方法などについて語った。
聞き手は、外資就活Terminalを主催する株式会社ハウテレビジョンの大里健祐CTO。【斎藤公也】
◇本記事は、2021年7月7日開催の外資就活Terminal基調講演の一部を編集したものです。
1.学部時代に参加した二つのプロジェクトが人生を変えた
2.「技術力が高い社員と働いてみたい」とDeNAに入社
3.リスクを取って、スタートアップに転職した決め手
4.契約書に関わる業務を効率化するSaaS
5.半年かけてつくったβ版をリリースできなかった理由
6.フロントエンドは、React、TypeScriptが鉄板
学部時代に参加した二つのプロジェクトが人生を変えた
大里:司会進行を務めます、ハウテレビジョンの大里と申します。CTOをやっています。本日のメインゲストは、人工知能によって契約業務の効率化を進める、株式会社LegalForceの取締役CTOの時武佑太さんです。
時武:株式会社LegalForceでCTOをしています、時武と申します。実際に私が学生時代から今日までのキャリアを振り返って、どういうことをしてきたのか、どういうふうに就活に向き合ってきたのかというお話ができればと考えています。
まず略歴をご紹介します。2010年に東京大学に入学しまして、工学部の航空宇宙工学科に進みました。いくつかインターンとしてウェブサービス開発に携わりまして、大学院では情報理工学系研究科に進みました。
2016年に卒業後、新卒でDeNAに入社しまして、主にスマホアプリの開発を行っていました。その後、2017年に現在在籍しているLegalForceにCTOとして入りました。2019年には、TechCrunch Japanが主催するCTO of the yearという賞も頂きました。
プログラミングと出合ったのは、小学校高学年ぐらいの頃でして、初めて触ったのはVBAで、いわゆるエクセルのマクロです。家に「マクロでいろいろしよう」という内容の本がありまして、それを模倣して遊んでいました。
もともとコンピューター好きな子どもだったので、プログラミングには夢中になりました。PerlやC#などの言語を触っていろいろ遊んでいたというのが、私の中学校時代における体験です。
その後、プログラミングにずっと打ち込んでいたかというと、そうではありません。中学生になって、プログラミングもしつつ、その裏でネットゲームにはまっていました。中学校から大学時代前期まで、その状況が続きました。
風向きが変わってきたのが、学生プロジェクトに参加したときです。東大工学部の航空宇宙工学科は、飛行機に搭載するエンジンやロケットのエンジンを造ったり、ロケットに載せる衛星の設計について学ぶ学科です。
学部時代に、二つのプロジェクトに参加しました。まず一つ目が、海外ヒストリックラリー参戦プロジェクトという、自動車であらかじめ決められたコースを走るラリー競技で、古い自動車を修理して走らせるというものでした。
これはヨーロッパで開催され、スポンサーから海外への渡航費も頂いて、船で運んだ自動車を使います。自動車の競技なので、あらかじめ決められたルートを通ります。ルートの模式図のような地図で、これまでどれくらい距離を走ってきたのかを正確に管理しながら地図を読み解かないと、そもそも目的地にたどり着けないという結構難しい競技です。通常はこういったアナログの装置(右図)を使って地図を読みますが、われわれはそれをAndroidタブレットでアプリ化しようと考え、3人でそのアプリを開発しました。
もう一つは、ARLISSというプロジェクトです。ARLISSとは「A Rocket Launch for International Student Satellites」の略語です。アメリカのネバダ州にある砂漠で学生が作った小さい小型衛星を打ち上げ、その衛星が目的地まで自律的に戻ってこられるかを競うというものです。この小型衛星は地球の周りを回るわけではなくて、打ち上げられて落ちてくるのですが、落ちてくる間にさまざまなデータを集めることも求められます。これに参加して、人生が変わってきたかなと思います。
このプロジェクトでわれわれが開発したのが、写真右の滑空機です。後ろに羽が付いていて、これを曲げることで方向を抑制しています。向かっている方向や速度から、この羽を制御するプログラムをマイコンで書き、搭載しました。
Androidアプリや組み込み開発をしたことで、プログラミングで遊んでいた記憶がよみがえり、仕事に対してのイメージが徐々に自分の中で具体化してきました。
ソフトウエアエンジニアを目指したいと思い始めて、長期インターンの案件を探し始めました。学部では航空宇宙工学を専攻しましたが、そういった経験から、大学院ではもともと興味のあった情報系を専攻し、ソフトウエア工学に関する研究を始めました。
長期インターンで初めて参加したのが、「外資就活ドットコム」の開発でした。当時はPHPを使い、管理画面を作っていました。
大里:それはいつくらいですか。
時武:2013年から2014年くらいだったと思います。外資就活ドットコム以外にも、サービスのバックエンド開発や、フロントエンドの開発をしました。長期的なインターンだけではなく、短期インターンもいくつか参加しました。
一つ目が、株式会社サイバーエージェントのスマホアプリを作るハッカソンです。二つ目が、アメリカに2週間くらい滞在しながらさまざまなワークショップを行う、株式会社リクルートでのインターンに参加しました。実際にシリコンバレーへ行って、プロダクト開発やUXに関して現地の人たちから学ぶワークショップを経験しました。
短期インターンと長期インターンの違いを、私なりにまとめてみました。短期インターンでは、1位のチームに賞金が出るというケースなどがよくあると思います。腕に自信があれば、短期間でまとまったお金を手に入れることができるのはメリットかなと思います。
優勝チームはメディアに掲載されるので、実績づくりにはなると思います。短期インターンにしかない特徴としては、同じ職種を目指すさまざまな大学の学生が集まってくるので、横のつながりをつくりやすいと思います。私もサイバーエージェントやリクルートの短期インターンに参加したことで、大学外でのつながりを持つことができたと思います。
長期インターンの特徴としては、現場レベルでの実務を経験できることです。スキルを身に付けたい、実際に実務で携わりたいって思っていらっしゃるのであれば、確実に長期インターンの方がプラスになると思います。
私の就活体験をお話ししていこうと思います。残念ながら、私は非常に不真面目な学生だったので、あまり就活に関しての温度感が高くなく、失敗談となるかもしれませんが、お伝えしておこうかなと思います。当時は主に、RubyやTypeScriptを使っていましたが、そこから探していくと、とても良い企業がありました。特にピックアップせずに、何となく就活をしていたのは、今思うと失敗だったと思います。就活ではきちんと事前にリサーチしておきましょう、という教訓です。
就活を始める前にやっておいた方が良いと思うのは、将来のキャリアパスをイメージしておくことです。エンジニアとしてどういったスキルを伸ばしていきたいのか、3年後にどういったことができるようになっていたいか、どういった所で働いていたいか、というようなイメージをしておくことで、おのずと選考を受ける企業が分かってくると思います。
これら以外には、なりたいエンジニア像と、その伸ばしたい技術から企業を絞り込むことです。受けてみようと思っている企業が、自分が得意な技術や使いたい技術やフレームワークに特化しているか、詳しい技術者がいるかなどは、最低限リサーチしておいた方が良いと思います。
私は「GitHub採用」を使っていました。DeNAに入って気付いたのですが、応募したときのリポジトリによって、どんなエンジニアかを判定されてしまう場合があります。Androidアプリのリポジトリで応募しましたが、当時は、バックエンドエンジニアとしてキャリアを積んでいきたいと思っていました。しかしDeNAに入ってみると、応募したときのリポジトリからアプリ系に詳しいメンターが付いて、そのままAndroid、iOSのアプリを開発している部門で仕事をすることになりました。
それはそれで結果的に運が良かったというか、サーバーも触ることができて、非常にいろいろな開発を経験することができましたが、企業によってはそこまでうまくいかない場合もあります。
大里:GitHub採用というのは、僕のPRするリポジトリはこれだ、みたいなものを1つ添えて応募するような形式ですか。
時武:企業によって違うと思いますが、私が経験したときは、リポジトリの中で一番出来の良い、アピールしたいものを書いた記憶があります。
大里:そこでどれを選ぶかが、後のキャリアに結構響いてきますね。
時武:そうです。GitHub採用自体は選考フローを省略できたりするので、非常に有用だと思いますが、ポートフォリオは留意した方が良いかと思います。
大里:ありがとうございます。
「技術力が高い社員と働いてみたい」とDeNAに入社
時武:なぜDeNAを選んだのかというと、全盛期のモバゲーを支えていた非常に技術力の高い方々と一緒に働いてみたいという思いがあったからです。また、優秀な同期が多いなと思ったことも決め手でした。
さまざまな事業を展開している企業なので、経験の幅を広げられそうだという思いもありました。何かしら一つのサービスしかつくっていない企業では、事業的な広がりを期待しづらいという側面はありますが、DeNAのような企業だと、この開発に飽きちゃったなっていうときでも、何かしらつぶしが利くかなと思ったのが大きかったです。
実際にDeNAでは、ヘルスケアの事業部に配属されて、「歩いておトク」という、歩数計のアプリの開発に携わりました。AndroidアプリとiPhoneアプリを開発していましたが、開発に携わる人数が少なかったため、バックエンドの開発にも携わりました。与えられた裁量が大きく、幅広く開発できたのは運が良かったなと思います。
DeNAで1年半くらいアプリ開発をしまして、このタイミングでキャリアを見つめ直す契機が発生しました。そもそもDeNAに入社した当初は、技術一本で食べていこう、技術のスペシャリストになろうというキャリアを目指していました。ところが、スペシャリストの軸としてバックエンド周辺を考えていたものの、技術一本で食べていくのがいかに大変かが分かってきました。
周りには自分以上に優秀な同期がたくさんいました。また、さまざまな業務を経験するうちに、自分はジェネラリスト気質だとも考えていました。技術一本でやっていくというよりも、エンジニアにとって貴重だといわれているマネジメントスキルを身に付けていこうと考えるようになりました。
社内での異動と転職を比べていたときに、LegalForceを創業した代表の角田望と小笠原匡隆の2人に会って、2人の考えに共感し、LegalForceに入社を決めました。
リスクを取って、スタートアップに転職した決め手
時武:LegalForceは当時、創業間もないスタートアップでした。なぜ、創業期のスタートアップを選択したか。インターンやDeNAで実務を経験したことで、自分でサービスをつくることに関しては、一定経験できたと考えました。そこに関して、そんなに不安はなかったです。
もともとメガベンチャーだけではなく、いつかはスタートアップで仕事をしてみたいという思いはありました。しかし、私はそんなにリスクを取る人間ではありません。メガベンチャーであと3年、5年在籍して実績を上げれば、当然給与水準も上がります。それから創業期のスタートアップに行って、給与が大幅ダウンする、という状況に直面するような度胸は正直ありませんでした。また、年齢を重ねてスタートアップへ行くよりは、若いうちに働いてみたいと思っていました。
大里:面白いですね。リスクを取るタイプじゃないからこそ、リスクを取っているように見えます。
時武:そうですね。リスクを取るタイプではないんですが、これまでの行動を振り返ると、あの時リスクを取ったのが今に生きています。
大里:ずっとリスクを取らないのではなく、リスクを取るタイミングをきちんと見極めているという感じですかね。
時武:そうかもしれないです。
最終的な決め手としては複数あります。まず、一緒に働く人です。創業者2人の勢いに押された、というのがあったのかなと思います。自分も楽しい未来を見せてもらい、その2人と一緒にやりたいという思いが強かったです。
また、DeNAで裁量の大きい開発を経験できたので、引き続き裁量を大きく持って自分でいろいろ決めながら開発ができる環境を維持していきたいと考えていました。
プロダクトの新規性や将来性も決め手です。私が入社した頃は、日本におけるリーガルテックの業界は、関連する事業を展開する企業が片手で数えるくらいしかないほど、全然盛り上がっていませんでした。しかし、創業者2人の話を聞いて、ここからどう伸びていくのかというイメージがかなり明確にできたため、コミットしてみたいという思いがありました。あと、少しの若さゆえの勢いもあったと思います。
スタートアップとメガベンチャーの比較を、私なりにまとめてみました。スタートアップに関しては、やろうと思えば何でもできるので、バイタリティーがある人にはぴったりだと思います。自分の領域をどんどん広げていきたいという人にとってはこれ以上ない環境だと思います。比較的自由な働き方ができます。ルールや制度だけでなく、会社の文化自体もつくっていける面白さはあるのかなと思います。
ただデメリットとしては、スタートアップにはお金がありません。メガベンチャーが億単位で予算を取ってやっているようなことはできないです。技術面では、初期の頃は大体、自分が何かしらの分野で一番できるエンジニアとして、この領域を背負っていくことになるので、圧倒的にできる人に付いていってスキルを伸ばしたいと考えている方には、あまり向かないかもしれないです。
一方、メガベンチャーに関しては、タスクをこなしていれば成長できるし、スキルは高まっていくと思います。付いていくに値する、すごいエンジニアもいる企業が多いと思います。同期がいることも貴重です。スタートアップだと新卒採用をやっている企業は少ないので、同期がいるとは限りません。メガベンチャーでは数人から数十人程度の同期ができるので、そのつながりは大きいと思います。
逆に、人が多くなって業務が細分化されている結果、ある程度配属がどうしても決まってしまいます。それによってスキルセットが制限されてしまい、自分のキャリアパスに影響が出るのは否めないと思います。
契約書に関わる業務を効率化するSaaS
時武:LegalForce は2017年にできた企業です。私は2017年の10月に入社したので、創業して半年後ぐらいに入ったことになります。創業から私が入るまでは、企業が何かしら開発をしていたわけではなくて、私が入ってからいろいろな開発を始めています。
今では従業員数が200名を超えて、結構順調に伸びています。角田、小笠原という2人の弁護士が立ち上げた企業で、弁護士と一緒に働くことは、私にとって新鮮に映りましたし、面白そうだなと思いました。
技術的な側面においても、京都大学の森信介教授や、Ruby開発者のまつもとゆきひろさんに技術顧問として入っていただき、初期段階からサポートいただける体制もつくれたことが大きかったと思います。
大里:技術顧問がそうそうたる方で、すごいですね。
時武:ありがとうございます。最近は、機械学習に関しての専門の研究部門も設立して、データからどうやって契約書を読み解いていくのかについて、より研究が進んでいます。
LegalForceは、二つのSaaS(ソフトウエア・アズ・ア・サービス)と、契約に関するメディアを運営しています。SaaSは、社名と同じ「LegalForce」というサービスと、「LegalForceキャビネ」というサービスです。どちらも企業の法務部などの契約書に関する業務を効率化していくことにフォーカスしています。
契約書の作成や審査をLegalForceが、管理をLegalForceキャビネがカバーしています。作成や審査では、印刷して赤入れする業務がいまだに残っています。さすがにエンジニアは、レビューするときにソースコードを印刷して赤入れしないと思いますが。
大里:そんなことをすると、すごく手間がかかります。
時武:作成や審査を自動化していくのがLegalForceです。契約書のコードリンターというイメージです。コードを静的解析して、修正点や改善点を指摘してくれるライブラリがありますが、その契約書版と思っていただけると、明確にイメージがしやすいかなと思います。
大里:すごく分かりやすいですね。
時武:LegalForceキャビネは、契約の管理に特化しています。契約書をアップロードすると、自動的に内容を読み、タイトルや契約の相手、締結した日付などの情報をデータ化します。これまで、そういった作業は全部手作業でした。
半年かけてつくったβ版をリリースできなかった理由
時武:ここからは、私がこれまでLegalForceでどんな業務を行ってきたかについて、お話ししようと思います。まず創業初期についてです。肩書はCTOですが、ただの1人目のエンジニアとして、サービスの開発や立ち上げに携わりました。当然人がいないので、フロントエンドからインフラなど、全部やっていました。また採用活動や、CEO(最高経営責任者)とともに会社を伸ばしていくための投資家開拓、投資家の元に行って技術的な話をして、今後の展望をアピールする、というような業務も担当していました。本当に技術が分かる「何でも屋」みたいな立ち位置でしたね。
このとき、半年ぐらいかけてつくったβ版がボツになっています。今のサービスにはコードは全く入ってないですね。完全につくり直しましたね。
なぜ失敗したかというと、サービスをつくる技術はありましたが、プロダクトマネジメントに関して認識が甘かったからだと思います。そのユーザーの声を、そのまま反映してしまったんですね。ユーザーが何に困っているのかという本質的な課題を、きちんと読み解けないままに開発を進めてしまったのが一番大きな失敗の要因だったかなと思います。
ユーザーは弁護士や企業の法務担当者ですが、そういった方々は当然ですがエンジニアと比べるとITリテラシーが高くない方も多いです。ですので、技術に関する擦り合わせが弁護士とうまくできていなかったのも、大きな要因だと思います。
当時は、契約書のレビューに関するコミュニケーションを効率化するというコンセプトでつくっていました。真ん中に契約書のプレビューが出てきて、それに関するチャット欄やコメント欄というかたちで左右に出すような画面をつくっていました。
完成して角田に見せにいったら、「なんか違うね」と言い始め、小笠原に至っては「全然使えない」という評価でした。
大里:悲しい。
時武:はい。その時の失敗から学んだのは、まず開発者とユーザーの間で共通言語をきちんとつくっておく必要があるということです。専門用語とユビキタス言語と言われますが、これがないと、機能をつくるときにユーザーが持つイメージと開発者が持つイメージが全然違ってきます。例えば、開発者側は移動手段として三輪車から作るという認識で話をしているのに、ユーザーから見ると自動車ができるという前提だったなど、その程度の温度感の違いがあることもあります。ですので、擦り合わせには注意を払った方が良いと思います。
次に、want to haveとmust haveという観点です。want to haveは全て削っても良いですが、must haveは一つでも削ってしまうと、ユーザーにとって刺さらないものになってしまいます。
その違いを自動車製造で例えると、want to haveは自動車の中のインテリアをどのように取り付けようかという話をしています。一方must haveは、タイヤをきちんと四つ付けるか、それとも二つで良いよ、という話をしているか。これくらいの違いだと思っていただければ良いかなと思います。
2019年は自分にとっての転換期でした。TechCrunch Japanが主催するCTO of the yearを頂いた年でもありましたが、それまで開発に携わっていた所から、マネジメントに重きを置くようになりました。コードを書く時間が減ってきて、開発メンバーの課題解消や採用などにも注力するようになりました。何でも屋をし始めたのが2019年ですね。
マネージャーがするべき仕事が何なのかを考えたときに、自分の影響力が及ぶ組織、全体のアウトプットを最大化することだと思います。CTOは経営陣の一人なので、経営目線からしか見えないところを担当するべきです。経営目線から技術的な方針や目標を定めて、それを開発組織に落とし込んで、それぞれメンバーが日々やっている開発タスクに意味付けをするのが一番重要な仕事かなと思っています。
2020年には、もともと携わっていたLegalForceのマネージャー役割も完全に委譲しまして、私は新製品の立ち上げを新たに始めました。
最近やっているのが、開発組織の整理です。2020年から比べると、会社全体だと人数が2.5倍くらいに増えました。開発メンバーも人数が増えまして、組織間での連携が取りづらい、人間関係がうまくいってないという課題などが出てきています。CTOとして組織を俯瞰して、整理して課題を解決していくのがやるべき仕事です。
最後に、エンジニアとして伸びる人はどんな人かを、三つお話しします。まず一つ目は、何でもやってみるのが、スタートアップに限らず重要かなと思います。チャレンジ精神や自走力。それに対して周りを巻き込んでいけるところは、基礎力として非常に大事かなと思っています。
二つ目は、自分のことをきちんと客観視できる人です。仕事をしていてこなれてくると、別に頑張らなくても仕事をこなせるタイミングが来ると思います。そういうタイミングでは、うまくいっていないことが見えていなかったり、ストレッチできる余地が残っているが現状に満足してしまったりしている場合があります。そういう自分を認識できる人は伸びると思います。
最後に、目的を見失わないことです。エンジニアにありがちなのが、目的と手段を取り違えてしまうことです。目的が何なのかをきちんと自分の中で落とし込んで、自分が今何をやるべきかを見据える批判的思考力が必要だと思います。
フロントエンドは、React、TypeScriptが鉄板
大里:時武さん、ありがとうございました。貴重なお話をたくさんありがとうございました。視聴している皆さんからの質問にお答えいただけますか。まず、時武さんがこれだけは勉強しておいた方が良いと思う技術は何でしょうか。
時武:フロントエンドに関しては、JavaScriptライブラリの一つであるReactとTypeScriptをやるのが鉄板かなと思います。バックエンドに関しては、どの言語でも正直良いかなと思いますが、最近だとGo言語が良いと感じています。
大里:フロントエンドでいうと、ReactとVueは、流派が割れているようなところもあったりしますか。Reactと時武さんの中では決まっているのでしょうか。
時武:そうですね。VueとReact、日本国内だとどうでしょうね。数年前まではVueの方が勢いはあったかと思います。最近Reactも勢いを盛り返してきているイメージはあります。ただReactの方が、私がやっているような企業向けのプロダクトに関してはマッチしやすいですね。TypeScriptは外せないと思います。
大里:そうですね。おっしゃる通りだと思います。大規模で複雑なアプリケーションになると、VueよりもReactの方がきちんと作ることができるという印象はありますよね。
時武:ウェブアプリケーションを作る際に必要なのは、データモデリングとインターフェースとアルゴリズムです。ですので、こうした理論的なところを基礎力として付けておくと、言語やフレームワークに関しては後から何とでもなると思います。
大里:なるほど。ありがとうございます。DeNAで自分より優秀な同期がいたということですが、時武さんが考える優秀なエンジニアとはどういう資質を備えている人でしょうか。
時武:チャレンジ精神と自走力を備えている人です。自分と比べると、そこまでやるんだと思える人がいました。
大里:なるほど。ありがとうございます。iOSとフロントエンド両方の技術が得意ですが、iOSエンジニアとフロントエンジニア、どちらを目指したら良いと思いますか。結構難しい質問。モバイルかウェブフロントか、みたいなところですかね。日本のiOS求人が少ない気がしますが、モバイルよりもウェブでしょうか。難しい二択だと思います。
時武:そうですね、難しいところです。どちらでも就職に関しては困らないと思います。確かにiOSの方が、求人が少ないのは事実です。一方で、フロントエンドエンジニアに関して求人が多いかといえば、そうともいえません。しかし企業によっては、単純にマークアップするエンジニアのことをフロントエンドエンジニアと呼んでいることもあるため、求人数が多いように感じます。
本質的なモダン技術が使えるフロントエンドエンジニアという点では、iOSとフロントエンドとで、求人数としてそれほど差がないかなと思います。最近はウェブ系の方が、エンジニアの枯渇がかなり深刻化しているので、本当に売り手市場だと思います。
大里:なるほど。LegalForceさんもそうですけど、B to B SaaSはフロンティアになってきています。B to Bだと、まだまだウェブが主流でしょうか。
時武:そうですね。B to Bだとスマホアプリ対応が求められないユースケースも多いです。とりあえず、ウェブから入るのが多いかと思います。
大里:普段業務でコーディングをする機会はどれぐらいありますか。
時武:そうですね。2021年になってから、全然やってない時期もありました。最近は組織や技術に関して向き合うところが多くなってきました。最近だと、週8時間ぐらいはやっていると思います。週1日ぐらいですので、メインの開発とかには入ってないですね。
大里:いやいや。時武さんのポジションで週1日開発できたら十分すごいなと思いますけど。ありがとうございます。学生時代のインターン先は、どういったところを重視して探しましたか。
時武:未経験でもやらせてくれる企業、ウェブサービス開発を経験できる企業という観点でも探しました。また、どういったものがつくれるのかを重視して探していた記憶がありますね。基本的にウェブサービス開発を重点的に探していましたが、バックエンド、フロントエンド、どの領域に関われるのかも重視していた記憶があります。
大里:なるほど。ありがとうございます。メガベンチャーかスタートアップかの比較がありました。DeNAは1年半で辞めましたが、就活は失敗だと思っていますか。
時武:失敗だとは正直思ってないですね。幸い、DeNAでは非常に優秀な同期とチームメンバーに恵まれていたので、そこで得られた経験というのは値千金だったかなと思います。DeNAでの開発経験が、今の仕事に生きているところはたくさんあります。仮に、就活をやり直すとしたら、きちんとリサーチをして、もう少し多くの企業で選考を受けますね。
大里:その結果、またDeNAさんみたいなメガベンチャーに行くのか、もうちょっと小さいスタートアップに行くのかは、比較は難しいかなと思いますけど、いかがでしょうか。
時武:そうですね。創業期のスタートアップに行くのは、就活生の時だと決意できなかったろうなと思います。従業員が200~300人程度の企業に行くという選択肢はあったかもしれないですね。
大里:なるほど。スタートアップかメガベンチャーかでいうと、LegalForceはちょうど中間ぐらいでしょうか。
時武:そうですね。中間くらいになってきているかなと思います。
大里:そのぐらいのフェーズだったら、視野に入りますか。
時武:はい。
大里:なるほど。ありがとうございます。マネジメントスキルを身に付けようと思ったきっかけになるできごとは何かありましたか。
時武:そうですね。技術一本で食べていくのが難しいと悟ってしまったことでしょうか。バックエンドが専門だったので、バックエンドという柱以外にもう一つ柱を立てていくという戦略を考えました。その戦略自体は良かったと思います。市場価値が高い方は、いくつかのスキルを掛け合わせて仕事をされている方です。フロントエンドとバックエンド、どちらもできるなら、それだけで二つの柱があると思いますが、そういったエンジニアはマネジメントキャリアに進まない人が多いです。
大里:そうですね。
時武:私は、逆にそこに目を付けました。
大里:逆張りですね。
時武:はい。バックエンドのスキル以外に、エンジニアとしてのスキルを身に付けるときに、マネジメントスキルを身に付けて、エンジニアリングスキル×マネジメントで、希少性を出していきたいという戦略を立てました。
大里:個人のスキルの多角化をなさっている感じですね。ありがとうございます。
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