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データサイエンティスト3類型。就職時のミスマッチ回避や、習得するスキルの目安に

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「データサイエンティスト」。この言葉から連想される人物像は、実に多様ではないだろうか。ある人は数学的理論を駆使して保険料金の設計をするデータサイエンティスト、別の人はディープラーニング(深層学習)を用いて自動車の自動運転システムを開発するデータサイエンティスト、さらに別の人は高い問題解決力を武器に電力会社で電力の需要予測を行うデータサイエンティスト――。

滋賀大学データサイエンス学部の河本薫教授は、自身が民間企業で働いた経験も踏まえ、今から1年ほど前にデータサイエンティストを独自の3類型に分類した。この分類は、個人の志向性と就職先の要求のミスマッチを回避したり、何のスキルを伸ばすべきかを考える目安にしたりできるのではないか。河本教授にその狙いを聞いた。【丸山紀一朗】

〈Profile〉
河本薫(かわもと・かおる)
滋賀大学データサイエンス学部 教授 兼 データサイエンス教育研究センター 副センター長。
1989年、京都大学工学部数理工学科卒業。1991年、同大学大学院工学研究科応用システム科学専攻修了。同年、大阪ガス入社。1998年、米ローレンスバークレー国立研究所でデータ分析に従事。2005年、大阪大学で博士号(工学)。2011年、大阪ガス社内のデータ分析専門組織「ビジネスアナリシスセンター」の所長に就任。2013年、日経情報ストラテジーが選出する「データサイエンティスト・オブ・ザ・イヤー」の初代受賞者に。2014年、神戸大学で博士号(経済学)。2015年、大阪大学招聘教授を兼任。2018年4月から現職。著書に『会社を変える分析の力』(講談社現代新書)、『最強のデータ分析組織』(日経BP)がある。

 

一義的ではない「データサイエンティスト」。何を教えるかを学生に伝えるため、3類型が必要だった

――そもそも、「データサイエンティスト」とは何か。河本さんの定義を教えてください。著書では、1990年代後半にはデータサイエンティストという「派手な言葉」はまだなかった、と書かれていました。

河本:難しい。定義ができないものを「データサイエンティスト」というバズワードで表していて、それが弊害を生んでいると思います。僕が講演などをするときには、「一義的な定義はない」としょっちゅう言っています。

ただ仮に、研究者や大学の先生ではなく、企業で勤めている人に限って考えたとき、「データやAI(人工知能)、分析力などを使って会社に貢献する人」が最も広義なデータサイエンティストかと思います。しかし、この定義に当てはまる僕の知り合いを見渡すと、それぞれ全然違う価値観や特徴があるのです。

――そうしたことから、河本さんはデータサイエンティストを3つの類型(下図)に分けているのですね。

河本:そうです。3つの類型とは、「ビジネスデータサイエンティスト」「AIデータサイエンティスト」「理論データサイエンティスト」です。

僕がこれまで会社や大学で多様なデータサイエンティストと交流する中で、「自分と違うな」と思うところや、「教えている内容や各スキルへの比重の置き方が違うな」と感じるところを踏まえて、今から1年ほど前に、こうした独自の分類を行いました。


河本ゼミの公式サイトや取材などを基に編集部作成

 
――大学で教え始めてから分類したのですね。

河本:そうですね。世間でのイメージが固まっていない中で、こうやって整理しないと、学生と僕が向き合えない感じがしたのです。私はあなたに何を教えるのか、というのを伝えるために必要でした。逆にこういう風になりたいなら僕の所においで、という感じで。

――河本ゼミは「ビジネスデータサイエンティスト」を目指す学生向けだと思います。例えば、研究者を目指す学生が来る所ではないということでしょうか。

河本:はい、研究者を目指したい学生は、僕の所に来るべきではないと思います。ただ、前提として、いろいろな学生の希望や多様な進路があっていい。学生のゼミ選び、そして企業選びなどの際にミスマッチがないように、こうした大局的な整理をしながら考えていくのが大事でしょう。

――どういったミスマッチがあるというイメージでしょうか。

河本:例えば今、「AIデータサイエンティスト」は社会からすごく求められています。彼らを生んでいくためには、若いときからプログラミング力を相当に鍛えなければなりません。その学生が就職するときに、AIを求めていないような会社や、AIの看板は掲げているものの実質が伴わない「なんちゃってAI企業」などに入ってしまうことですね。

――これら「ビジネス」「AI」「理論」の各データサイエンティストの二つ以上に当てはまるような人もいるのですか。

河本:例えば、マッキンゼー・アンド・カンパニーのパートナーには、全てに当てはまる人もいるかもしれません。ただ、担当者レベルであれば基本的にはどれか一つだけです。例外はあると思いますが、ほとんどはきれいに分類できると感じています。


滋賀大学内で取材を受ける河本氏

 

「デジタルの時代=専門家の時代」ではない。専門知識を備えた経営者を育むことが重要だ

――話は多少戻りますが、河本さんの周りのデータサイエンティストの中に、「自分がテータサイエンティストと呼ばれることに違和感がある」という人もいるのでしょうか。

河本:いますし、僕自身もそう思うときがありますね。言葉が少し先走っている感があります。特に「サイエンティスト」という部分。ここが、「専門」や「研究」といった要素を強く醸し出すじゃないですか。

しかし現実には、僕みたいに企業で、データと分析力で成果を出すためにコンサルティング力のようなものも必要です。そういった部分は、「データサイエンティスト」という言葉からは連想しづらいですよね。

――一方で、データサイエンティストという“派手な言葉”によって、職種として人気が出て来たという背景もありますか。

河本:そう。だから一長一短です。ここの名前も「データサイエンス学部」だし、世の中に認知されやすくなれば学生も目指すし、企業との連携もスムーズになる。注目を集めるという観点ではすごく大切です。一方で、言葉の正確さを追求し出すと、皆が口にしづらい言葉になってしまうこともある。

そういう意味で、割り切っています。だからデータサイエンスという言葉自体はいいと思うのです。「自分と合致していますか」と問われたら、「違和感はある」ということかと。

――日本の競争力を高めるためには、若い優秀な人がデータサイエンティストやITエンジニアになっていく必要がある、と思いますか。

河本:その考え方は否定しませんし、それも一つの手であることは間違いありません。でも僕は元々企業人だったので、この国を見ていて思うのは、将来を左右するのは専門家ではなくて経営者だということです。今、この国の競争力が低下しているなら、それは専門家や技術者がいないのが原因ではなく、経営者がふがいないからでしょう。

今のこの「デジタルの時代」は、「専門家の時代」と認識されている傾向がある気がします。でもそれは大きな勘違い。専門家も必要なのですが、ある程度の専門知識を持ちながらビジネスで戦っていきたいという思いを持つ人間、すなわち経営者がより必要です。そういった人を育んでいかないといけない。

ただ、今の大学では、例えば「AI」といえば専門家になるための教育に偏っていると考えています。僕はそこをすごく心配しています。かつて「技術で勝ってビジネスで負ける」と日本が揶揄されたように、このままいくと、AIとデータサイエンスの技術では何とか追い付いて、ビジネスでは全く負けるという事態になりかねません。

 

日本企業の「アナログ」を痛感。データ活用するには、暗黙知を形式知に変換する必要がある

――この国の競争力を高めるためには、ビジネスにおける問題解決力を備えたデータサイエンティスト、すなわち「ビジネスデータサイエンティスト」が特に必要ということですね。その考えに至った背景を教えてください。

河本:これまでの経験から痛感しているのは、日本企業の人材の思考回路が基本的に「アナログ」だということです。アナログとは、仕事が暗黙知、つまり勘や経験、あうんの呼吸で進められており、形式化されていないということ。一方でデータ分析は、コンピューターにデータを食わせてやるので形式知の世界です。

この二つは水と油のようなものなので、くっ付けることができません。仮にくっ付けようと思ったら、まずは暗黙知となっている仕事をいったん形式化するというステップを踏まなければならない。日本企業の現状はこうです。そのステップも含めて現状を変えていけるのは、問題解決力に長けたビジネスデータサイエンティストだと思っています。

一方で、例えばビジネスに関心のないようなデータサイエンティストが日本企業に入っても、水と油で全くくっ付かず、会社の中で浮いてしまいます。会社にとっても、そのデータサイエンティスト個人にとっても不幸です。

――現在の日本企業において、社内にビジネスデータサイエンティストがいるかいないかで、その会社の成長性は変わってくるのでしょうか。

河本:例えば、二つのメーカーの工場があったとします。それらの工場で機器などのトラブルの発生前にそれを予知したい、これを「異常検知」といいますが、そのニーズが生まれたとしましょう。一つのメーカーでは外部のコンサル会社などに依頼し、もう一方のメーカーでは工場内にコーディングのできる若手がいて、異常検知のモデルを自前で作ったとします。

すると、この二つのメーカーが得る結果は大きく違ってくるのです。データ活用というのは、上流工程から下流工程まできちんと順を追って進めていく「ウォーターフォール型」ではワークしません。外部に頼ると、そうなりがちです。

またデータ活用は、事業ドメインに関する知識と密接に連携しながら進めないといけません。とりあえず試してみてうまくいかなければ対応するという試行錯誤のプロセスが重要です。そうした進め方は、実際に手を動かせる人が工場内にいる方がうまくいきます。

こうした仕事ができる人材が、日本にはとても少ない。ですから名称はともかく、そうした力のあるビジネスパーソンを増やすのは至上命題です。もう全然足りていなくて。今、そうしたスキルを持つ人が特別扱いされているのがおかしなことです。データサイエンティストでなくとも、普通のビジネスパーソンがちょこちょこ自前でできますという感じにならないとつらいですよね。

――企業によっては、実際にそのような動きが出てきているのですか。

河本:例えば大きなメーカーは、理系の大学院を修了した学生を大量に採用しています。そこでは、本社のデータ分析専門チームに頼らなくても、工場単位で勝手にディープラーニングを使ってデータ活用していくという状況になっています。

ですから、そうした素養のある人が増えていけば、自ずと変わってくるのだと思います。今後は、教育の力によって、そういった能力の高い人を圧倒的に増やしていかないといけません。

 

「飯の種」として志望する学生が多い。社会を変える意気込みのある人も増えてほしい

――今日本では、十分に優秀な若い人たちがデータサイエンティストなどデジタル人材を目指す状況になってきていると思いますか。

河本:僕は大学という狭い世界にいるので、半分想像ではありますが、そうした状況にはなっていないと考えています。うちの学部に来る学生も、志望動機がどちらかというと後ろ向き。どういうことかというと、「データサイエンスを勉強していたら何とか食っていけるのではないか」といった“守り”の理由です。「社会を良くしていきたい」という人もいますが、マジョリティーではないですね。

なぜこうなのかと考えると、うちの大学もそうですが、日本人ばかりであることが理由の一つかなと。国の外側が見えないのですよね。中国やアメリカがどれだけドラスティックに変わっているかというのを目にすれば、多少変わってくると思いますが。そうした機会に恵まれていないと、そう簡単に心が動かないですよね。

――データサイエンスで社会を変えたいというより、自分の飯の種にしたいという学生の方が多数派なのですね。

河本:個人の価値観なので、それはそれでいいのですが、社会に対する閉塞感を感じているというか、「いっちょやってやろう」といった野心を感じることは少ないですね。社会を変えていきたいという動機の学生も増えてほしいです。能力の優秀さというよりも、意気込みが欲しい気がします。

――データサイエンス教育における課題は、他に何がありますか。

河本:今、「AIデータサイエンティスト」も社会から強く求められています。ですが、彼らを育てるための教員が足りていないと思います。AIデータサイエンティストの人たちは、今どこに行ってもお金を稼ぐことができるので、大学教員のポストになかなか来てくれないという事情があります。

ですから僕は、民間企業の力も貸してもらったらいいと思っています。大学の教育を大学のリソースだけで行うことにこだわり過ぎず、学生こそが大切と考えて、外部のリソースも最大限活用させてもらえばいいのです。日本と世界といった垣根も作らずに、全てのリソースを総動員して、いかに効率的に質の高いAI教育を学生に提供できるかを考えたいですね。

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