“より良い社会への変革”に向け、課題と真正面から向き合う仕事 ~シンクタンク業界でも珍しい日本総研のインキュベーション部門~

“より良い社会への変革”に向け、課題と真正面から向き合う仕事 ~シンクタンク業界でも珍しい日本総研のインキュベーション部門~

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2018/09/20

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シンクタンクでありドゥ・タンクでもある

日本総研のインキュベーション部門である「創発戦略センター」では、すぐには解決できない社会の課題に長年かけて取り組んでいくという理念のもと、独自のコンセプト・ビジョンの提示から事業化までを一貫して担っています。一般的な“シンクタンク”の機能に加え、“ドゥ・タンク”の機能を兼ね備えた、業界でも極めて珍しい組織です。

さらに、社内のコンサルティング部門とは密に連携しており、人材の異動や合同でのプロジェクト推進を通じて、創発戦略センターの活動成果・知見がコンサルティング部門でも活用されるようになっています。

創発戦略センターの役割、仕事の特異性、やりがい、求める人材などについて、3人の現役社員に座談会で語り合ってもらいました。

〈Profile〉
写真左/松岡靖晃(まつおか・やすあき)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター エグゼクティブマネジャー。
日本総合研究所に新卒入社。営業戦略、マーケティング戦略コンサルティング業務に従事した後、中国にて日本企業の中国市場での業容拡大と中国の産業高度化実現コンサルティング経験を積む。現在、創発戦略センターにて顧客との共創による新規事業開発担当。
 
同中央/三輪泰史(みわ・やすふみ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター エクスパート。
日本総合研究所に新卒入社。現在、農業チームのリーダーとして、農業再生による地域活性化、IoTやAI等を活用した先進農業技術の事業化・導入支援などを推進。農林水産省「食料・農業・農村政策審議会」委員や株式会社農林漁業成長産業化支援機構(A-FIVE)社外取締役等を歴任。
 
同右/武藤一浩(むとう・かずひろ)
株式会社日本総合研究所 創発戦略センター マネジャー。
日本総合研究所に新卒入社。現在、次世代交通チームのリーダーとして、自動運転を活用したコミュニティ・モビリティ・サービス事業の立ち上げを推進。専門は、モビリティサービス(自動運転、電気自動車、カーシェアリングなど)の事業検討。

 

より良い社会への変革に向け、厳しく揉まれながら成長できる仕事

松岡:今日は、日々現場で活躍している三輪さんと武藤さんに来てもらいました。まずは簡単にそれぞれ担当していることを紹介してください。

三輪:私のテーマは農業です。この10年間、農業チームのメンバーは自らを「日本農業の再生請負人」と呼んで活動しています。

日本の農家は、一言でいうとすごく高い技術を持っているのに、儲からないし辛い。他のビジネスでは優れた人なら必ず高い収入を得て社会的にも評価されるのに、農業ではそれができていない。学生時代抱いたこんな悔しい思いが原点です。

武藤:私は交通をテーマにしています。これは私自身の、地域コミュニティを活性化したいという問題意識から始まっています。

東日本大震災などで地域コミュニティのつながりが注目されましたが、約50年前に建てられた「ニュータウン」では、居住者の高齢化に伴い、足回りの不便性も顕在化しつつあり、活性化のネックになっています。これを解消するために、地域内を移動できるモビリティサービスを展開しようとしています。

松岡:私は、2人のようなチームリーダーと共に、我々のコンセプトを価値ある事業へと形にしていく上で、そのプロセスを戦略的に考え、ともに汗を流しながら、実現に向けた環境を整えていく役割です。

具体的には、各テーマの活動に関わるさまざまな利害関係者、例えば企業や住民、国、自治体などにどういったメッセージを伝えると仲間になってくれるか、何のノウハウを提供してもらえば付加価値の高い事業につながるか、そういったことを考えながら、チームリーダーやメンバーが活動し易い環境を作り上げていく仕事をしています。

さて、2人にさらに詳しく仕事の内容を聞きたいのですが、三輪さんには「農業再生」についてもう少し具体的に説明をお願いします。

三輪:「皆が儲かる農業、誇り高き農業」を実現するため、政策提言から事業立ち上げに至るまで、様々な活動をしています。

私の場合、農業ビジネスの現場で得た知見や、我々独自のビジョンを広く発信するために、論文や書籍の執筆を積極的に行っています。その分野のシンクタンカーとして社会的に認知され始めると、マスメディアへの出演や国の政策立案に携わってほしい、と声がけを受けるようになり、最近は農林水産省の審議会委員や、テレビ番組のコメンテーターとしても活動しています。

こうした活動も経て、現在は大学や企業と一緒に農業ロボットを開発して運用するという新規事業立ち上げを担っています。

松岡:「農業」という分野はなかなか新しい動きを起こすのは難しそうです。どういう苦労があるのでしょう?

三輪:今から5年ほど前、無人トラクターやドローンなどの新たなテクノロジーを農業に活用する「スマート農業」について、講演したときのことです。

「こんな効率的な機器が登場して日本の農業が変わるんです」といったことを話したところ、あるベテラン農家の方から「山がちで小さな農地が分散している地域では、大型の無人トラクターなんて走れない。我々を切り捨てるのか」という質問が出たのです。

松岡:もっともなご指摘ですね。

三輪:やはり我々が一緒に取り組みたいのは、まさに目の前で自分に疑問をぶつけるような方々なのです。ですから、その農家の方々の思いに答え、それを伝えていきたいと思い直しました。

実際、この方の意見を真摯に受け止めて、小回りの利く農業ロボットを発想しました。「非常に貴重なご指摘」だったのだと思います。あの場面で単に反発してしまっていたら、零細農家は全て切り捨て、無人トラクターでアメリカ型農業をやるべきと、誰にも共感・評価されない主張をしていたかもしれません。

こうした社外の利害関係者との緊張感溢れる環境の中に自らを置くことによって、私自身も大きく成長できたと感じています。


独自のビジョンやコンセプト発信のため、書籍出版やテレビ番組への出演等のメディアへの露出も多い三輪

 

利用者本位の発想で初めて「社会」が変わる

武藤:私は、ここ数年にわたり、神戸市内の高齢化が進む一つのニュータウンで、地域コミュニティを活性化するための自動運転移動サービスのトライアルを行っています。

このトライアルの特徴は、移動サービスを欲している住民や自治会と直接話し合いをしながら、サービスの形を作っていっていることにあります。

また、移動サービスは交通事業者が担うことになりますので、地域交通事業者とともに進めています。技術を持つ企業や研究機関のシーズ起点ではなく、利用者や交通事業者のニーズ起点で進めている点が他の類似の取り組みとは違います。

結果として、国内で初めて、自動運転技術の開発者でなく、交通事業者が自動運転車の運行を担う実証実験ができ、国からも社会実装につながる第一歩として評価を得ています。

松岡:「交通」もなかなか変革が難しい分野ですよね。

武藤:そうですね。我々が最初にこの自動運転サービス事業を始めようとしたとき、誤解を受けてしまったことがあり、厳しいご指摘をいただいたことがありました。

こうした経緯がありつつも、我々も「住民起点の、住民による、住民の交通」という信念に基づき、粘り強く調整にあたり、結果的に、関連する交通事業者の皆さんも協力して、一緒にプロジェクトを進めることができています。

三輪:我々が投じた石に対する跳ね返り、つまり反発とか厳しい意見をもらうのも我々の重要な一つの役割だと思います。自分の描いていたような石の波紋だけ追っかけていたら、たぶん社会は変わらないでしょう。

武藤:たぶんその跳ね返りが出てきて、ようやく「本物」といえるかと思います。「きれいごと」ではなくなったと。

松岡:2人とも、規制を突破したり改革したりすることが目的ではなく、住民や農業者の立場から、より良くしていきたいという思いで進めていったところ、規制の壁に突き当たり、だったらそれを解決しよう、というロジックで動いていますよね。

三輪:もしかすると学者や批評家の中には規制改革や規制緩和ありきで発言する人もいるかもしれませんが、我々は違う。目指すべき社会と、それを切望する農業者や住民の方々がいて、その視点で本当に必要だから主張しています。改革論者でも改革ありきでもないのです。

松岡:あと、2人は強いですよね。情熱を持って先頭に立ち、社会を変えようとしている2人だからこそ、そうした指摘や批判でも、農家や交通事業者の「怒りの声」としてではなく「本音」として聞くことができたのだと思います。

三輪:現場に常に出入りしているからこそかもしれません。私はほぼ毎週、全国の農家を訪ね、雑草取りや田植え、稲刈りなども手伝っていますし(笑)。その後のお酒の席でしか聞けない本音もある。「東京の大企業の研究者が来た」と思われないよう注意しています。

武藤:私も同じですが、一方で、一定の距離を保つことも心掛けています。

地域住民に「この人たちが何かやってくれる」と頼られ、地域内の調整などもすべて我々が手取り足取り進めてしまうと、最終的には我々の手を離れて実装させる段階で機能しなくなってしまいます。住民側で自らできる「自助」「共助」をうまく引き出しながら進める必要もあります。

松岡:2人とも、自身の思いが本当に社会にとって正しいことなのかを常に悩み考え抜き、周囲からの批判にも真摯に向き合いながら、思いをブラッシュアップしていくことを続けられてきたということですよね。

そういった地道な活動があったからこそ、やがて社会的にも認知・受容されるようになり、それとともに自身も、思いだけではない、理論だけでもない、「本物」を語るインキュベーターになられたのだと思います。


「創発」とは、ある一つの動きが相互作用をもたらし、その影響で新たな秩序が形成される現象。自らの投げた“石”への跳ね返りがあって、初めてそのプロジェクトは「本物」になる、と語る武藤

 

コンサルティング部門との密接な連携

松岡:事例の説明が終わったので、ここで改めて、「創発戦略センター」とは何かについて整理したいと思います。

三輪:そうですね、我々の活動の全体像は、独自コンセプトの立案から事業化までを4つのフェーズに分けて説明すると分かりやすいと思います。

まず、フェーズ1では、我々個人が何に問題意識や憤りを感じているか、ひたすら自問自答しながら、もしくは、実際に現場に通いながら関係者の話しを聞き、考えることから始めます。ですので、組織から「あれをやれ、これをやれ」と言われる形では始まらないのです。

その結果、見いだした課題を解決するための独自のビジョンやコンセプトを、書籍や論文、政府の審議会委員になるなどして発信します。これは「シンクタンク」の部分で、ここでどういう主張をするかがこの先の軸となります。

そのため、個人の情熱が単なる自己満足で終わらないようにするために、組織内や組織外、政府や社会などに常に問いながら、あるいは問い掛けられながら進めることが重要です。もしも最初のコンセプトが間違っていれば、修正や出直しも含めて対応する姿勢が不可欠です。

フェーズ2では、その発信内容に共感する企業や自治体等に集まってもらい、彼らとコンソーシアムを形成し、コンセプトを具体化するための活動を開始します。ここからが「ドゥ・タンク」です。

フェーズ3では、コンソーシアムメンバーと共に、実証事業を行い、その成果を受けて先導的なプロジェクトを立ち上げます。単なる寄せ集め集団ではなく、軸となるビジョンの下に主体的に集まったという組織の強さがあります。

最後にフェーズ4では、プロジェクトの事業化を実現します。事業化の形態は様々ですが、過去にはコンソーシアムメンバーと共同で事業会社を設立したこともあります。また、そこで得られた知見や新たな視点を活用して、今度は別の企業や自治体、グローバルにコンサルティング活動を行い、コンサルティングファームとしてのポジションを確立していくのです。

松岡:フェーズ4では、コンサルティング部門との連携や共同での案件推進なども本当に密に行っていますよね。

武藤:はい。我々がコンセプトを具体化していく過程で体験し蓄積した知見は、コンサルティング部門にとって新たな付加価値となります。

例えば、自治体や民間企業が交通分野のIoT化やサービス参入を検討するようなコンサルティングを展開する際、先行して実証事業を経験した我々の知見や実績が活きてきます。

松岡:「ドゥ・タンク」でもある創発戦略センターが、実際に事業を立ち上げるほどのリアルな経験から地に足の着いた深みのある知見を提供できるということですよね。この知見とコンサルティング部門所属の経営コンサルタントの専門領域との融合がお客様向けのコンサルティングサービスの差別化につながるわけですね。

PFIや農業等に纏わるコンサルティング展開において、コンサルティング部門へ担当人材が異動するなど、深く相互交流することで、密な連携を実現しています。逆に問題意識を鮮明に持ったコンサルタントが希望して、当センターに異動してくるケースもあります。そのため、新卒採用は共同採用となっていますよね。


創発戦略センターでは、個人の主体的な行動と社内外のステークホルダーとの調和が重要と語る松岡

 

「ファーストペンギン」として未知の海に飛び込める部門

松岡: 2人とも20歳代ではコンサルティング業務にも携わっていた経験から、あえてコンサルティングとの違いを表現するとどうでしょう?

三輪:コンサルティング業務はクライアントの課題解決、クライアントの求める価値を提供する仕事です。ある意味、クライアントの制約条件を共有して必死に考えるのです。

一方、我々の業務は「完全フリーハンド」であるべき社会の仕組みを考えます。自由な発想を持てる一方、責任も重い。我々のコンセプトに社会の誰も共感しなければ、そのまま埋もれてしまう可能性もあり、それは当社ブランドにも迷惑を掛けることにもなりかねないのです。

我々はこの業界では非常に珍しい機能をもつ部門となっていますが、これは、収益面では直接的な貢献につながらないものの、こうした活動の価値を認め、許容してくれている経営陣の懐の深さがあってこそだと思っています。

武藤:集団行動のペンギンの群れから、天敵がいるかもしれない海の中に最初に飛び込む「ファーストペンギン」のごとく、我々も、一筋縄ではいかないことが分かっていたとしても、勇敢に未知の海に突っ込んでいける立場ですね。

三輪:創発戦略センターでは、数カ月や数年で解決することではなく、針の穴を通すような難しいこと、10年後にようやく周りから評価されるようなことに取り組め、といわれます。まさに「ライフワーク」です。これに注力し続けるには、取り組む個人に情熱がないとダメなんですよね。

松岡:「ファーストペンギン」たる我々の部門ですが、2人はどのようなカルチャーだと感じていますか?

三輪:非常にアグレッシブで、失敗も許される文化ですね。それと、明るいワイガヤ文化ですかね。 男女比率もほぼ半々ですし、外国籍のメンバーもいてダイバーシティも進んでいます。

武藤:創発戦略センターには、個々人がそれぞれ主張をもって自発的に動けるメンバーが多いです。そして互いに互いの主張をリスペクトする雰囲気が醸成されているため、和気あいあいと仲が良い。

ただ、たるんでいると先輩から叱られ、後輩からも突き上げがきますけどね(笑)。「刺激しあう、活気のある家族」という感じです。


創発戦略センターの男女比率はほぼ半々。お互い厳しくも助け合う組織

 

来たれ、鋭く、熱く、たくましい方

松岡:さて最後に、どういう学生さんと一緒に働きたいか。それぞれの意見を聞かせてください。

三輪:コンセプト作りや情報発信に際しては、やはりコンサルタント同様の資質は必要ですので、論理的思考力や、分析力、的確な表現力などは最低限必要だと思います。

あと、厳しい環境で自分が成長したいと思っている人と一緒に働きたいですね。私も複数いただいた内定先から日本総研を選んだ理由は、「一番厳しそうだから」でした。

それは360度、全方位からの厳しさです。社内からも本当にやるべきことをやっているのか、前進しているのか、常にチェックされると同時に、住民や自治体、政府からも評価される。非常にドライに見られているんですね。台風のような向かい風が吹きつけてくる環境ですが、それを推進力に変えられる人を求めています。

武藤:付け加えるとすれば、打たれ強さや胆力のある人。何かに心底熱中し、いかなる状況があっても打ち込み続けられた経験を持つ人であれば、この組織で起こる大抵のことも乗り越えられるかと思います。

そして、やはり何か自分の取り組みたいテーマがあると頑張れると思います。周囲がそれに取り組ませようとサポートしてくれます。

三輪:私は新卒入社した当時、「10年後は日本総研を卒業し、大学教授になります」と言っていましたが、15年以上経った今でもここにいます(笑)。今の私にとってはまだ、この日本総研こそが、一番成長できるし、日本農業の役に立てる場所なのです。

松岡:2人のような、社会への問題意識や憤りを持った人が次から次へと入ってくれることを願います。また、そのテーマが仮に大学での専門領域であるとしても、変化の激しい現在、素直に周りの声を聞くことができる素直さを持ち続けられる人が必要です。

社会に耳を傾け、自分自身もどんどん変わっていける人に、創発戦略センターという舞台で大いに活躍してほしいと思います。


社会に対する問題意識の議論も日々自由闊達に行われている

 

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