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株式会社の仕組みを理解しよう
こんにちは。外資就活ドットコム 金融チームです。
皆さんは「金融」という言葉を聞いて、イメージが湧くでしょうか。一般に金融業は、会社の財務活動を支援する一連のビジネスのことを指します。
そのため、会社の財務活動について理解しておくことで金融業についての理解が深まります。前編・後編の全2回にわたる本シリーズでは、その中でも特に株式会社の仕組みと財務活動の目的について説明していきます。 「株式会社」「資本市場」「財務」「投資」 といったキーワードに関して、しっかりとその意味を理解していきましょう。
投資銀行や資産運用会社を志願している方はもちろんのこと、他の業界に関心がある就活生にとっても、おさえておくべき重要なトピックであるいえます。ぜひ本コラムを通じて理解を深めていってください。
株式会社の定義は「株主によって組織された有限責任会社」
株式会社は1人では運営できないほど大きな会社を運営するために作られた仕組みです。歴史を踏まえながら株式会社の性質を理解していきましょう。
株式会社は、株主によって組織された有限責任会社のことを指します。
会社とは営利目的の法人のことですから、 株式会社は「株主によって組織された有限責任で営利目的の法人」 であるといえます。
このままではよくわかりませんから、分解して1つずつ定義を確認していきましょう。
1. 株主によって組織される
株主は株式の所有者のことです。株式の仕組みについては少し複雑なので、あとでじっくり説明します。株式という仕組みによって成り立っているということを意味していると考えていただくとよいと思います。
いまのところでは、 「株式という仕組みによって成り立っている有限責任で営利団体の法人」 という定義になります。
2. 有限責任である
会社が大きな損害を与えたり借金を返済できなくなったりしたときでも、株主が責任を取る必要はないという意味です。
株式会社における「有限」という単語は、具体的には株式の価格を指しており、 株価がゼロになる以上の損失は受けない ということを含意しています。
3. 営利目的であるということ
営利目的とは、 利益をあげることを目的としていること を意味します。会社には社会貢献などの役割もあるかもしれませんが、利益を上げることが前提となっています。
社会的な意義はあるけれど利益を上げることができない仕事については、会社ではなく公務員が行っています。
公的な仕事のうち稼ぐ力のある仕事は、JR(もともとは国鉄)や日本郵政(もともとは郵政省)などのように民営化されることがあります。
4. 法人であるということ
法律においては人間に権利が与えられますが、モノに権利が与えられることはありません。法人とは、モノに権利を与える便宜上の仕組みであり、人格を有するモノのことを指します。
株式会社はモノでありながら人格をもつため、権利を持ち義務を課されるなど法律による保護・規制を受けます。
代表的な義務には納税の義務があり、法人税として利益の一部を納税しなければなりません。また、法律によって保護を受けることなどの権利を持っています。
ここまでのまとめ
ここまでをまとめると、株式会社の定義は次のようになります。まだまだ分かりにくい定義ですが、金融業界の仕事を理解するうえで欠かせないことですから、しっかりと理解できるように少しずつ学んでいきましょう。
世界初の株式会社「オランダ東インド会社」
このような株式会社の仕組みはいつ考案されたのでしょうか。 世界初の株式会社は17世紀のオランダ東インド会社 だといわれています。
イギリス東インド会社なども存在しますが、このうち今日の株式会社と同じ仕組みを持っていたのはオランダ東インド会社のみです。
このオランダ東インド会社の仕組みを学ぶことは、株式会社の仕組みや目的を学ぶうえで大きな示唆があります。一見遠回りに見えるかもしれませんが、今日の株式会社の仕組みが考案された背景を知ることができるためとても有意義な方法なのです。
東インド貿易が栄えた時代の市場環境
アジアの産品がもてはやされる
17世紀の世界は現代のようにグローバル化が進んでいませんでしたから、他地域の文化などを知る機会はあまりありませんでした。
そのような中で、アジアでとれる香辛料などの産品がヨーロッパに持ち込まれ、真新しい製品として当時のヨーロッパでもてはやされました。
当時のヨーロッパは世界的に裕福な地域ですから、高いお金を出してでもアジアの産品を購入しようとする人びとがたくさんおりました。
このため、アジアの産品をヨーロッパに持ち込んで売買すれば非常に大きな利益を出すことができたのです。
ハイリスク・ハイリターンの東インド貿易
東インド(現在のインドネシア)で産出される香辛料などの産品を輸入するための航海が行われるようになりました。
しかしながら、当時の航海技術でヨーロッパからアジア地域まで航海を行うのは容易なことではありませんでした。
実際、ヨーロッパとアジアを往復してアジア産品を持ち込めば非常に大きな利益が出るものの、航海に失敗してしまうことも珍しくなかったようです。
出航する船には大量の食糧や資金が積まれますから、一度の航海でかかるお金は非常に大きな額となります。
大きな費用のかかる航海が失敗して利益が得られないとなると、何人もの富豪が集まって事業を行っていたとしても破産はまぬかれないでしょう。
このように、 東インド貿易は、現代の言葉でいえばハイリスク・ハイリターンなビジネス だったと言えます。
航海に失敗しても破産しない仕組み
航海が失敗しても破産してしまわないように、大勢の投資家から少しずつお金を集める仕組みを作りました。航海が成功したときに生まれた利益は、お金を出した投資家に少しずつ分配されることになります。
さらに「有限責任」という会社が借金を返せなくなったり損害賠償をしなければならなくなったりしても、会社の代わりに支払う必要はない仕組みを導入すれば、 破産する可能性をゼロにして事業に投資することができる のです。
東インド貿易は、事業が成功したときに得られる利益が非常に大きいので、失敗する確率を考慮しても投資したいという人が大勢集まりました。
オランダ東インド会社をめぐる権利
取締役会が会社の方針を決める
数人で集まって事業を行っていたときとは異なり、大勢で投資することになると誰が会社の方針を決めればよいのかがわからなくなってしまいます。
そこで、オランダ東インド会社では出資した金額に応じて議決権が与えられました。
オランダ東インド会社における重要な意思決定は巨額出資者によって会社の重要な意思決定が行われていました。
出資した額が特に多い76人を重役として扱い、重役のなかから17人が取締役として選出されました。そして、17人の取締役によって行われる取締役会で、会社の重要な意思決定が行われていました。
資金を出すことを出資といいます。
会社は、事業をはじめたり事業を拡大するときに、必要な資金を投資家に出資してもらいます。
半永久的に事業を続ける会社
オランダ東インド会社以前の会社では、一定期間の間だけ事業を行ったのちに事業を終了して、会社の儲けをすべて山分けするという仕組みで成り立っていました。
当時のこのような形態の組織のことを 期間組合 と呼びます。
実際には事業が終了する前に期間組合を脱退する人などがいたため、必ずしも事業終了後だけに利益を分配したわけではありませんでした。
しかし、東インド貿易はヨーロッパとアジアを何度も往復して継続的に利益を上げることができる事業でしたから、一度の往復ごとに事業を終了させて利益を山分けする前提ではありませんでした。
航海に失敗する可能性もありましたから、一度の航海で失敗して終わりという組織では儲けられるとは限らなかったともいえます。
オランダ東インド会社は、事業を終了せずに続けることを前提としたため、航海の時期や会社の終了を意識しない形式で儲けることができるようになりました。
もし事業を終了することになった場合は、従来どおり資産を売り払ったうえで残ったお金を山分けすることになっていました。
利益を受け取る権利の売買
オランダ東インド会社は解散を前提としない会社でしたから、オランダ東インド会社に出資することは定期的に利益を分配してもらう権利を取得している状態だと考えることもできます。
そして、事業をずっと続けていく前提になると、人びとが投資を行う期間よりも会社が存続する期間のほうが長くなります。
このため、オランダ東インド会社の権利が売買されるようになっていきました。
オランダ東インド会社の 「定期的に利益を分配してもらう権利」 を手放したいという人が現れる一方で、オランダ東インド会社の 「定期的に利益を分配してもらう権利」 を欲しがる投資家もいるわけです。
このような人達同士で権利の売買が行われました。
支払いを受ける権利を売買できるようになったのが株式です。
オランダ東インド会社は今日の株式会社とほぼ同じ仕組み
いままでの内容を整理すると次のようになります。
・継続的に事業を行う前提で運営される
・定期的に利益を分配してもらう権利がある
・出資額に応じた議決権が与えられる
・利益を分配してもらう権利と議決権は売買ができた
これらは、ちょうど今日の株式会社と同じ仕組みになっているのです。
オランダ東インド会社は、利益を分配してもらう権利や議決権を持ち売買することもできる「株式」という仕組みを利用して設立された会社だったのです。
おわりに:株式会社の定義の再確認
ここで、株式会社の定義をもう一度掲載しておきます。さきほど見たときよりもイメージが付きやすくなったのではないでしょうか。
後編では株式会社の盛衰と株主の権限について解説します。
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