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外資系投資銀行のリアル。業界出身者だからわかる、外資系金融業界の実態とは(1)

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※こちらの記事は、弊社が運営する若手プロフェッショナル向けキャリアアップ支援サービス「Liiga(リーガ)」からの転載となっております。

はじめに

今回はIBDなど金融業界のクライアントへの人材紹介を得意とするエグゼリンク株式会社代表・李淳一氏にインタビューを行い、外資系投資銀行やPEファンドへの転職について伺いました。

李氏はご自身が約25年間外資系金融業界にお勤めになった経歴の持ち主で、そこで築き挙げた人脈や知識を生かして人材紹介を行っておられます。

第1回である今回は、投資銀行業界のトレンドやそれを受けた採用市場の動向について語って頂きました。

どうぞご覧ください。

第2回「外資系投資銀行が必ずしもキャリアの最適解ではない」
第3回「PEファンドに必要な「熱意」をはき違えるな」

インサイダーだから把握できる内部事情

―まず自己紹介をお願いします。

海外の大学在学中と卒業後もしばらく現地会計事務所の日本デスクで働いていました。日本への帰国後外資系投資銀行に入り、25年に亘りデリバティブ取引に従事しました。デリバティブでは主にエクイティや金利と為替関連商品を扱い、その後はクレジット関連のデリバティブ商品に移っていきました。

しかし2008年にクレジットデリバティブ市場が壊滅状態となり、翌年長年在籍していた金融業界を辞めることになったのです。このとき私の専門としていた領域は世界規模で消滅(メルトダウン)していました。

そこで自分の金融業界でのバックグラントを生かして人材紹介を始めることにしたのです。3年ほどの修業期間を経てさらにビジネスを学ぶために数年を費やし、やっと今年5月に独立するに至りました。

―金融業界での長い経験は他のエージェントにない魅力ですね。現在の業界の中でも候補者に紹介できる領域、または紹介が難しい領域はあるのでしょうか。

先ほど申し上げたように、この仕事を始めた当初は、自分が専門としていたクレジットデリバティブ市場は消滅して候補者を紹介する先もほとんどない状態で話にならず、IBD(投資銀行部門)での人材紹介にフォーカスすることにしました。

私自身の経歴はセカンダリーマーケットが中心ですが、長年の投資銀行勤めで培ったネットワークは幅広く、投資銀行部門にも知人がたくさんいました。これらのIBDの知人たちの助けを借りて投資銀行に関する知識を積み上げIBDを中心に実績を積んでいきました。

―李さんの人脈を活用して人材紹介を行っていると。

はい。人脈をフルに活用しての人材紹介を行っています。長年投資銀行に勤めていましたので、内部事情はそれなりによくわかります。

特に外資系投資銀行の人達が今何を考えているのか、あの投資銀行のカルチャーはどうなっているのか、業界で起きている事象の原因は何か、過去の自分の経験と照らし合わせると業界の外からではありますがかなりの部分想像がつきます。

これは外部者にとってわかりづらいかもしれません。例えば昨年、日本の株価はアベノミクス効果で飛躍的に上昇していたにも関わらず、外資系投資銀行はさらなる大幅な縮小を行っていました。

これはリーマンショックや更には証券化やクレジットデリバティブがブームになった背景、そしてその後に米国や欧州で起こった金融規制強化、大規模な訴訟による巨額の賠償金、全世界的なウォールストリートへのバッシングなど、投資銀行業界の構造的な部分に由来しています。

そのため、ウォール街の裏事情や世界的な動向をきちんと理解できなければ、候補者の皆さんには理解が難しいのではないでしょうか?

外資系投資銀行縮小の摩訶不思議

―仰る通り、外資系投資銀行が縮小しているというのはにわかには信じがたいです。

私はこの9年程、投資銀行のM&Aアドバイザリー、ECM(株式資本市場)部門、 DCM(債券資本市場)部門、カバレッジ(営業)部門、などへの人材紹介を中心に行ってきました。そのため各部門への採用状況や転職の難易度が相対的にどうなっているかそれなりにわかるつもりです。

外資系投資銀行は近年、世界規模で一斉にシュリンク(縮小)していました。その最たる時期が2016年の前半でした。日本でも外資系投資銀行は縮小傾向にあり、言い換えれば椅子の数をどんどん減らしているわけです。一方でこの少なくなった椅子に座りたいと思う候補者は引き続き数多く、ミスマッチがどんどん大きくなっています。その結果買い手市場となり、選考の難易度が上ってしまうわけです。

そのためここ数年、外資系投資銀行への転職はさらに難化しています。ある米系大手投資銀行の例で言いますと、候補者は約40人弱の面接者と面談して選考に半年かけてようやくオファーを貰うことができました。もちろんその間に何十人もの候補者が振り落とされているわけです。もともと難易度は高いのですがこの数年でさらに難易度は増しているように思います。

―外資系投資銀行の採用枠が減少したのは具体的にはいつ頃からなのでしょうか。

2011年までは、ジュニア、シニアのポジションともにまだ結構採用枠はありました。2011年頃からなだらかに減っている印象です。その間明らかにアメリカの株価は上昇していましたが、ウォール街の金融人材市場では右肩下がりのトレンドが続いていました。

―株価が上がっているのに銀行業界が縮小しているのは不思議です。

この原因は金融規制によるところが大きいですが、それに加えて巨額の賠償金支払いも各社の収益を圧迫しました。

例えば去年9月頃、サブプライム関連証券化商品の不正販売問題で某欧州系大手投資銀行はアメリカ司法省から140億ドルもの罰金を言い渡されていました。会社存続の危機に陥る可能性もあり、ハードネゴシエーションの末結果的には72億ドルの罰金支払いで決着しました。他にも巨額の罰金を言い渡されるウォール街の投資銀行が相次いでいます。

投資銀行は資金を失い、更に金融規制によって利益を得る手段を奪われ、挽回できない状態です。こうなると、誰が考えてもビジネスモデルを変えるしかありません。このように外資系投資銀行にとっては非常に厳しい環境が続いているのです。

―140億ドルとは、実感が湧かないほど途方もない額ですね。しかし手数料ビジネスのIBDでしたら、金融規制の影響は受けにくいように感じます。

そこも構造的理解が必要なのです。つまり、手数料ビジネスであるIBDが高額なIBDバンカーたちの給料やボーナスを支払うだけの収益をあげられるかという問題です。

例えば2006年度末の某米系大手投資銀行の収益構造を見ると、トレーディング収益が全体の75%と莫大な利益を上げていました。それに対してIBDの収益は全体の8%しかありません。

しかし、この8%の収益では高額なIBDのバンカーたちの給料やボーナスを払いきることはできず、そのためトレーディング収益の一部をIBDに回すことで、彼らのボーナス支払いを賄ってきました。

それは、当時トレーディング収益が潤沢であったからこそできたことです。それは、IBDという世界的な看板が投資銀行全体の収益に寄与していたという事情もあったからです。

―トレーディングの収益がIBDを養っているということでしょうか。

はい、当時はそうでした。しかし、近年の金融(リスク)規制によって多くの投資銀行で従来のようなトレーディングができなくなり、トレーディング収益事態も大幅に低下しました。そのためIBDのバンカーは自分の給料を自分で稼がなくてはなりません。

そしてそのコストを賄うだけの高い手数料をあげるには案件そのものが巨大でなければなりませんが、巨大な案件はどこにでもあるわけではなく激しい競争が起こるわけです。さらに、M&Aで稼げる手数料は1%にもならず、そうするとバンカーの頭数を減らし、少数精鋭にすることで利益率を上げるしかないわけです。

彼らは確かに精鋭ですし、会社も世界有数のグローバルプラットフォームを持ち、世界最高クラスのリサーチ力、リレーションシップマネジメント力を持っています。ですので日本の大企業を中心にこれらの能力への需要は高く、部門が消滅することはないでしょうが、椅子の数が減り、転職が難化していることに変わりはありません。

世界的な金融規制の潮流

―金融規制が業界のあり方を大きく変え、IBDを従来の規模で維持できなくなったということですね。なぜこのような金融規制が起きたのでしょうか。

2008年のリーマンショックが原因です。リーマンショックを社会人として体験していない若手層にはわかりにくいかもしれませんが、あれは空前の世界大恐慌や戦争を招く可能性すら秘めていたほどの危機でした。

最悪の結果を防ぐため、アメリカのFRBが中心となって、歴史上かつてない世界規模で巨大な規模の金融緩和や公的資金注入による大手金融機関救済を行い、これにイギリスなどヨーロッパ諸国、日本などが加わり同様のオペレーションを行いました。

この金融緩和は規模もさることながら内容においても常識を覆すものでした。単にマネーベースを増やし、金利を下げるというだけでなく、市場に流動性を持たせ、市場全体の暴落を防ぐため長期債券も株も不動産証券化商品も買いました。

そして当然ですが、公的資金注入も含めてこれらすべてが各国の税金で賄われました。普通の納税者たちは当然怒ります。そしてウォール街占拠事件をはじめ似たような事件が世界中で起きました。このようなリーマンショックは従来のトレーディングがリスクを無法図にとっていたせいであると結論付けられ、その再発を防ぐために、特にリスクに関しての金融規制が行われました。

―この金融規制が投資銀行の苦境を招いたと。

アメリカ政府では金融政策アドバイザーのポール・ボルカー元FRB議長が金融規制の先頭に立ち、金融機関が取るリスクを制限する「ボルカールール」を作りました。今年になってトランプ大統領がボルカールールの撤廃をほのめかしています。

株式市場などはその話題に敏感に反応しており投資銀行各社の期待は高まっていますが、まだ断定することもできないため、例えばトレーディング部門の強化・拡大といったような具体的な話はまだあまり聞こえてきません。それでも昨年までの右肩下がりの状況からの底入れ感が出てきていることも確かです。

―金融規制ではリスクのとり方が制限されたとのことでした。

はい。金融機関はリスク量を自己資本の1.5%までに圧縮しなくてはなりません。1.5%と言うと、例えば2006年の某大手米系投資銀行の場合、約1週間のリスク量にも満たないと言われています。

これでは従来のようなビジネスは全くできません。今までの収益の75%を生み出していたトレーディングが特にそうです。株や為替のトレード、債券のトレードにしてもその日の内に手仕舞う程度のことしかできません。

ヨーロッパでもボルカールールに歩調を合わせ、バーゼル3という国際金融の枠組みで金融リスク規制を行っています。こうして世界中の金融が抑制され、従来の儲ける手段を失い、現在の収益は従来の半分以下になりROEに至っては4分の一以下になりました。

ポスト=リーマンショックの投資銀行の対抗策

―金融規制の影響力の大きさがよくわかりました。しかし先ほどのお話では、リーマンショック後もしばらくの間、2011年頃まではまだ採用枠があったと伺いました。

はい。外資系投資銀行もおとなしく諦めたわけではありません。失ったトレーディング収益を別の形で生み出さなくてはなりませんから、リスクがとれないのなら手数料ビジネスを増やそうという話になりました。これがボルカールールの法案が成立して間もない頃、2010年から11年頃の話です。

手数料ビジネスの最たるものがIBDです。リスクゼロですから、金融規制にこれほど適したビジネスはありません。そこで日本を含めて、世界中のオフィスでIBDを強化した時期が実はありました。当時は日本でも採用枠が増えていました。

―なるほど。金融規制を受けてIBDの強化が目指されたのですね。

しかし、たとえIBDの強化が図られても、人材コストへの圧力が働くので、最終的に少数精鋭による事業運営、そして採用枠の縮小を余儀なくされました。IBDの業務は急拡大が難しいものです。今まで全体ので8%だったIBDの収益が、 10%、15%分になることはあっても、50%、60%分になることは難しいです。

そのため2015年から2016年までに、特にヨーロッパ系を中心に、強化を諦め、IBDから撤退すると宣言した大手金融機関もいくつかあります。

―結局、IBDの採用枠は減少したままだと。

はい。一方でボルカールール撤廃に向けて各社が努力していましたが、ここにきて先ほど申し上げたトランプ大統領による同規制撤廃の話が出てきており期待感は膨らんでいます。

しかし、投資銀行各社は引き続き撤廃に向けて様々な策を模索しているもののまだ断定的なことは言えず、日本での外資系投資銀行の現状でのIBD採用枠は底這いの状態が続いていると思います。

おわりに

いかがでしたでしょうか。

長い間金融業界の中で活躍していた李氏による投資銀行業界の分析は、多くの方にとって説得力があるものだったのではないでしょうか。

株価が上昇しているにも関わらず、金融規制によって外資系投資銀行への転職の難易度が上がっているという話は、なかなか聞くことのできない貴重な話だったと思います。

以上を踏まえた上で、次回は金融業界でのキャリアパスについて、外資系と日系の企業を比較しながら話してくださっています。

ぜひご覧下さい。

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