就活生です。素人質問で恐縮なのですが、企業が返さなくてもいい自己資本ばかりを調達して、返済義務のある他人資本は調達しないようなスタイルは良くないとよく言われていると思いますが、それはなぜなのでしょうか?
この質問への回答 1件
yasu
理系院卒 国内金融→欧州駐在員→外資系アセマネアナリスト
B/Sの負債におけるコストの問題です。株式は株主資本コストが高い一方、負債のコストは金利であり日本の金利は御存知の通り非常に低いため、低コストで資金調達できるからです。
企業価値を分析するにあたってWACCというものを用いますが、このWACCは株主資本と負債コストのざっくり加重平均です。WACCが高い企業は、投資家により高いリターンを提供する必要があります。
ちなみにググれば出てくると思いますが、
WACC = (E/(D+E)) * Ce + (D/(D+E)) * r * (1 - t)
E:企業のEquityの市場価値
D:企業のDebtの市場価値
Ce:Eのコスト(Cost of Equity)で、CAPMで計算することが多いです(CAPMはググってください)
r:負債コスト(Cost of Debt)
t:法人税率
です。Ce(Cost of Equity)はだいたい均すと7%とかそのあたりになるのですが、それを考えるとr(Cost of Debt)は金利なわけですから、1%とかでいいわけです。なので、債務を多く借りる(D/(D+E)を高める)ほうがWACCが下がるわけです。これはテクニカルに企業価値を高めることができます。
また別の言い方をすれば、Ce > r であることからわかるように、エクイティファイナンスよりもデットファイナンスの方が容易です。ファイナンスすることで手元キャッシュが増えてB/Sは拡大します。アセットターンの水準を同程度に維持できるのなら、容易なデットファイナンスをたくさんしてB/Sを拡大させて事業規模を大きくしたほうがいいですよね。
↑は学生さんから見たら小難しい話をしているように見えますが(私が学生だったとしてもそう感じるように思います)、これはベース知識です。これを知らない運用フロントはいません。こういったことを実務で色々と覚えていけるような職場に配属されるといいですね。
回答日:2023/04/04

