線形代数や微積の重要性を大学生では理解できず、実際に社会人になってからの実務で気づくパターンは多いと思います。このような事象は授業の際に実務と関連付けて説明することで防げると思われますか?
(一方で、大学は就職する学生のための予備校ではないので何ともいえないポジションですが。。。)
この質問への回答 1件
相談室回答者
学生時代から30年以上京都大学に在籍しています.2018年に共同創業者として大学発ベンチャー企業を立ち上げました.
自分の経験から,数学(線形代数や微積分など)がどのように役立っているかを具体的に伝えることで,学生に数学を勉強する動機を与えられると思います.このため,「授業の際に実務と関連付けて説明すること」は極めて有用だと考えています.
実際,工学部の一回生を対象とした講義で,自分の研究(データ解析の産業応用)を紹介しつつ,線形代数が極めて重要で,線形代数を理解しなければ,こういう研究はできないという話をしたところ,面白くないと感じていた線形代数を勉強してみようというモチベーションが湧いてきたというコメントが多数ありました.実際に勉強したかどうかはともかく,教員として学生の意欲をかきたてるのは最重要な使命のひとつだと思います.
私自身,大学一回生で履修した線形代数と微積分学は苦痛でした.固有値・固有ベクトルが・・・と言われても,δ-εが・・・と言われても,「それがどうしたの?何の役に立つの?」としか思えず,単位が取れる程度にしか勉強しませんでした.しかし,大学院でプロセスデータを用いて製品品質を予測したり異常を検出したりする方法を研究するようになり,多変量解析をはじめとして,あらゆる道具が線形代数を基礎にしていることを知り,猛烈な勢いで勉強し直しました.自分の不勉強さを棚に上げて,こんなに使いまくるものなら一回生の時にそう言っておいてくれれば・・・と思ったものです.
そのような経験を踏まえて,私自身は,数学の講義をするときには,それが線形代数,微積分,フーリエ解析など何であろうと,実際にどのように使われているかを伝えるようにしています.
回答日:2021/04/14

