
軸は、走りながら固めればいい ―「やりたいこと」がなかった私が、コンサルティングファームに挑戦した理由―
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2026/05/22
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「やりたいことがないまま就活を進めていいのか」と悩む学生もいるだろう。しかし、キャリアの軸は最初から完成している必要はない。実際に業界を見て、人に会い、働くイメージを重ねる中で徐々に輪郭が見えてくる。PwCコンサルティングで働く3人も、そうしたプロセスを経て自分なりの選択を形にしてきた。
入社後に見えてきたのは、コンサルタントとは単に正しさを競う仕事ではなく、クライアントに向き合い、より良い意思決定と前進を支える仕事だということ。迷いながら選び、その先で仕事の本質に出合った3人の歩みを追う。
※内容や肩書は2026年5月の記事公開当時のものです。
就活は、“軸の発見”のプロセスでもあった
――就職活動を始めた当初は、どのような業界・職種を見ていましたか。また、その時点で「やりたいこと」はどの程度明確だったのでしょうか。
李:大学でコーポレートファイナンスを専攻していたこともあり、経営に近い領域に関心を持ち、コンサルティングやFAS(ファイナンシャルアドバイザリーサービス)などを中心に検討していました。人の行動にも興味があったので、マーケティング職も選択肢の一つでしたね。
ただ、「将来これをやりたい」と言い切れるものがあったわけではないんです。企業価値はどう決まるのか、未来という不確実なものをどう評価するのか、そうした問いを考えるのは面白かった一方で、それを仕事にするならどんな形がいいのかをずっと探っている感覚でした。
坂口:私も、就活の最初から明確な職種像があったわけではありません。コンサルティングだけでなく、人材やエンタメ、航空など、かなり幅広く見ていました。その中で大切にしていたのは、業界や職種そのものよりも「どんな人たちと働くか」という点です。
加えて、当時はまだ「この専門性を極めたい」と言い切れるほど自分の軸が定まっていなかったこともあり、将来の選択肢が広がる環境かどうかも重視していました。今振り返ると、やりたいことが明確でなかったからこそ、早い段階で可能性を狭めたくないという思いも強かったですね。
木内:私は比較的早い段階から進路を意識していて、大学2年の冬ごろには研究、官公庁、ビジネスのどれに進むかを考え始めていました。この三つは準備の仕方が大きく違うので、早めに方向性を定めた方が良いと感じていたからです。
その中で就活の軸として大きかったのは「知的好奇心を満たせる」ことと、「若いうちからハイレベルな仕事に挑戦できる」ことでした。特定の業界やテーマに強い執着があったというよりは、視座の高いテーマに若手のうちから関われる環境かどうかを重視していた感覚です。

――そうした状況から、コンサルティング業界に絞っていったプロセスを教えてください。
李:意識するきっかけの一つになったのは、長期インターンでさまざまな人たちと関わったことです。コンサルティングファーム出身の人は視野が広く、物事を常に上のレイヤーから捉えているのが印象的でした。
私自身は元々積み上げ型で思考するタイプなのですが、企業や事業を多面的に捉えながらトップダウンで考えられる人になりたいと思い、徐々にコンサルティング業界を志望するようになりました。
坂口:私にとっては、「興味はあるけれど、実態がつかめない仕事」というのが最初の印象でしたね。学生の立場からすると、実際にどんな仕事をしているのかを具体的に想像しにくく、初めからコンサルティング業界に絞ってしまっていいのか確信が持てませんでした。
だからこそ、あえて他の業界も並行して見ていたのですが、その過程で気付いたのがコンサルティングという仕事の“幅”です。関われるテーマや業界が極めて広く、選択肢が一つに決め切れていない自分にとって、いろいろな可能性を持ちながら成長できる環境という点は、大きな魅力へと変わっていきました。
木内:選考時期が早いこともコンサルティング業界を受けた理由の一つではありますが、情報収集を進める中で、若手のうちから大きな責任を持ち、かつグローバルレベルの視座を持った企業の事業部長、役員の方に向けて泥くさく働くことができるコンサルティングは、自身の知的好奇心が満たされるエキサイティングな環境なのではないかと感じてどんどん引かれていきました。
想像以上に“人に向き合う仕事”だった。それが、入社後に実感したコンサルティングの本質
――数あるファームの中で、PwCコンサルティングに決めた理由を聞かせてください。
坂口:最終的な決め手は、やはり「人」でした。面接や社員との接点を通じて強く感じたのは、形式的に質問をこなすのではなく、私の考え方や人柄を深く知ろうとしてくれたことです。大学で取り組んでいた研究についても興味深く聞いてくれて、「こういう人たちと働きたい」と感じたことを覚えています。
李:確かに非常に物腰が柔らかくて、学生に対しても丁寧に向き合ってくれました。一方で、ただ優しいだけではなく、プロフェッショナルとしての厳しさのバランスがあったことも印象的です。論理性が足りない部分はきちんと指摘してくれますし、私が答えに詰まった時には対話を通じてこちらの考えを引き出してくれる。優しさと真剣さが同居しているようなイメージです。
木内:グローバルファームや戦略コンサルタントと聞くと、とがった人やプライドの高い人をイメージするかもしれません。実際に私もそういうイメージを持って入社した社員の一人でした。しかし、PwCコンサルティングで出会った人たちには、業務に不必要な自己中心的主張や、摩擦を生むコミュニケーションがほとんどないんです。仕事への誇り自体は持ちながらも、相手のことも尊重できる“成熟した大人”という感覚で、私もその一員になりたいと強く感じましたね。
――皆さんの話を聞いていると、共通して「人」が大きな理由なのですね。その「人の良さ」は、実際に入社してからもギャップはなかったのでしょうか。
木内:はい、全くありません。全体として裏表のないマチュアな組織だと感じています。
李:むしろ入社してからの方がそれを実感したかもしれません。コンサルタントというと、個人で成果を出すイメージが強かったのですが、実際にはチームとして価値を出すことが求められます。だからこそ、相手の立場に立って考えることや、周囲との信頼関係を築く姿勢が重要です。そういう意味で、PwCコンサルティングは本当に働きやすい環境だと思います。
坂口:分かります。私も入社前はもっとドライな関係性の職場を想像していました。でも実際は、若手に裁量を与えながらも、決して放置しないという育成方針が根付いています。分からないことがあってもしっかり向き合ってくれますし、厳しさも成長を後押しするためのものだと感じます。就活時に感じた安心感は、働き始めてからも続いていますね。

――なるほど。では、そうした環境の中で「コンサルティングの仕事そのもの」に対する印象も変わりましたか。
木内:私はかなり変わりました。入社前は、コンサルティングは「いかに正しいことを提言できるか」が重要な仕事だと思っていたんです。ロジカルさが最優先で、それを突き詰めていくことが価値になる世界なのかなと。ただ、実際にはロジカルさはあくまで土台でしかありません。クライアントが目指すゴールに向けて、より良い意思決定と前進をどう後押しできるのか。そのために必要な支援を考え抜くことの方が、はるかに重要だと気付かされました。
坂口:クライアントの課題を整理して、どこに本当の論点があるのかを考え、一歩先まで見据えて伴走する。単に頭を使うだけで成り立つ仕事ではなく、相手にコミットする覚悟まで問われる仕事ですよね。
李:私も近い感覚です。思考力の高さはもちろん必要ですが、それ以上に求められるのが、相手の意図やその背景までくみ取って考える姿勢です。想像していた以上に、“人に向き合う仕事”なんだと感じています。
成長は一気にではなく、壁打ちと試行錯誤の積み重ね
――コンサルタントとして働き始めてから、壁にぶつかった経験はありますか。
李:はい、一度大きな壁にぶつかりました。上司から、「思考の鋭さや深さが足りない」とフィードバックを受けた時です。資料の体裁や作業の進め方はすぐに直せますが、思考そのものは一朝一夕には変わりません。そこはこの2年で最も苦労した点であり、同時に成長できた点でもあると思います。
木内:私は「大きな壁が一度」というより、中くらいの壁にぶつかり続けている感覚ですね。最初はリサーチや資料作成のように与えられた役割をこなすところから始まりますが、だんだん「どの論点を解くべきか」「どういうストーリーでクライアントに届けるか」といったイシューやストーリーオーナーシップが求められるようになります。任される範囲が広がるたびに、必要なスキルの水準も上がっていくので、その都度必死になって乗り越えています。
――具体的にどのようなことに取り組んだのですか。
木内:とにかく先輩に聞くことと、その思考を学習することです。スライド一つでも、「どこが良いのか」「なぜそうなっているのか」を聞いて、過去資料等を通して良いアウトプットを自分の中にストックしながら、少しずつ型を身に付けていきました。何かができるようになると、その分逆に自分に足りないことも見えてくるのですが、その繰り返しが成長につながっていると思います。
李:自分一人で考え込んでも限界があるので、とにかく早く仮説を出して、フィードバックをもらうことが大切ですよね。私もいわゆる“クイック&ダーティー”でたたき台を出し、レビューのサイクルをできるだけ早く回すことを意識していました。上司の思考スタイルや、どこが自分と違うのかを少しずつつかみながら、質を上げていった感覚です。
坂口:そういう意味では、周囲に相談しやすい環境は本当にありがたいですよね。上司や先輩にレビューを依頼すれば、良い点も改善点も率直にフィードバックしてもらえますし、トライ&エラーを重ねながら着実に前に進むことができます。中長期的な視点で相談できるキャリアコーチもいますから、「一人で何とかしなければいけない」という不安にのまれることはありません。

――ここまで働いてきて感じる、コンサルティングの面白さはどんなところですか。
坂口:さまざまな業界や立場の方と関われるところに大きなやりがいを感じています。実際、これまで通信、テクノロジー、印刷と異なる業界のプロジェクトを経験してきましたが、同じ会社にいながらここまで幅広いテーマに向き合えるのは面白いですね。今の案件ではクライアントと直接やりとりする場面も多く、若手のうちから実践的な経験が積めていると感じています。
木内:仕事を通じて得た視点によって、日常のニュースや街の風景の見え方まで変わってくる。さまざまな場所で起きている社会の変化を、自分事として捉えられるようになるのはこの仕事ならではの面白さだと思います。
李:私が一番やりがいを感じるのは、自分が出した示唆や新しい視点がクライアントに刺さった時です。クライアントは当然その業界のプロですし、私たちより詳しいことも多い。その中で、業界の常識だけにとらわれない視点や、少し違う角度からの示唆を出し、「それは確かに考えるべきですね」と受け止めてもらえた時は、本当にうれしいですね。自分の思考が価値につながったと感じられる瞬間です。
――最後に、「やりたいことがまだ分からない」と悩む就活生にメッセージをお願いします。
木内:少しでも気になる企業は、とにかくまず受けてみるといいと思います。実際に人に会ってみないと分からないことは多いですし、選考を通じて見えてくることもあります。最初から完璧に絞り切る必要はありません。積極的に行動しながら、自分なりの軸を見つけていってください。
坂口:付け加えるなら、選考を受けっ放しにするのではなく、その都度「なぜ面白いと思ったのか」「なぜ違和感を抱いたのか」を振り返ることも大切ですよね。自己分析を重ねていくことで、自分に合う方向性は少しずつ見えてくるはずです。
李:「やりたいことがない」というのは、決して悪いことだけではないと思います。私自身、今も模索している部分がありますし、だからこそ見えてくる選択肢もあります。やりたいことだけにこだわらず、「誰と働きたいか」「どんな環境なら前向きに成長し続けられるか」といった別の軸で考えてみるのも一つの方法です。その先で、少しずつ自分の輪郭が見えてくるのではないでしょうか。

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