
コンサル会社が描く「働きがい」と「働きやすさ」の両立──東大・一橋出身の3人が語る、持続可能な成長環境
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2025/11/19
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社会に出た後、結婚・出産・育児・介護など、誰にでも訪れるライフイベント。そんな変化の中でもキャリアを諦めず、自分らしく働き続けるにはどうすればいいのか。人と組織のモチベーションを科学し、企業変革を支援するリンクアンドモチベーション(LM)は、自らの人事制度も進化させてきた。制度を作る人と実際に使う人──それぞれの言葉から、“働きやすさと働きがいの両立”のヒントを探る。
※内容や肩書は2025年11月の記事公開当時のものです。
異例の出産祝金に込められた「経営からのメッセージ」
──LMの人事制度の基本的な考え方を教えてください。
川上:私たちは、人事制度を「経営から社員へのメッセージ」として捉えています。つまり、会社が何を大切にしているのかを明確に示すものです。LMが目指しているのは「One for All, All for One」の状態です。個が会社に貢献し、会社も個を本気で応援する。人事制度は、そんな組織を実現するための“手段”だと考えています。
──「個を本気で応援する」というのは、個々の社員の実情に合わせて柔軟に対応するということでしょうか。
川上:はい。どんな働き方を望むのかは、社員ごとに違います。例えば、1歳の子どもがいるという点は同じでも、それぞれの家庭が抱えている事情はさまざまです。また、仕事にどれだけの時間を割きたいかというのも、個々で違います。いろいろなバリエーションがある中で、社員が働き方を自由に選択できるようにする、という点にポイントがあります。

──LMにはさまざまな人事制度が用意されていますが、特徴的なものはありますか。
川上:二つあって、一つ目は、結婚や出産などのライフイベントへのサポートが充実していることです。例えば、結婚の祝金として、会社から50万円が支給されます。出産の祝金は、1人目が50万円で、2人目は100万円、3人目は150万円と、増えていく仕組みになっています。
──子どもが生まれるたびに、祝金の金額が増えていくのはユニークな制度ですね。
川上:「会社は社員の出産や育児を応援している」というメッセージです。さらにいうと、少子化という日本の社会課題に対して貢献したいという思いも込められています。
──特徴的な制度の二つ目は何でしょうか。
川上:時短勤務の選択制度ですね。当社では「ワークスタイルオプション」と呼んでいる制度で、他の企業よりも長期間利用することができます。一般的に、社員が時短勤務を選択できるのは「子どもが小学校に入学するまで」としている企業が多いと思います。しかしLMでは、中学校を卒業する年齢まで、利用できるのが特徴です。
元々は小学校3年までだったのですが、その後も時短勤務で働きたいという要望がありました。そこで、義務教育が終了する中学3年までは選択の自由があってもいいのではないかということで、2024年から期間を延長しました。
「火・水・木だけ出勤」もOK──柔軟な勤務形態
──このワークスタイルオプションを利用しているのが、安藤さんですね。
安藤:私は2022年に出産を経験しました。入社して10年目、仕事が好きなタイプだったので、子どもを産んだらどうなるのか不安でした。でも、ワークスタイルオプションのおかげで、1年間の産休・育休を終えた後、「週3日×時短勤務」という無理のない働き方で復職することができました。

川上:LMのワークスタイルオプションは、1週間の勤務日数だけでなく、1日の勤務時間も、個人の状況に合わせて設定できます。つまり、「週4日×6時間」という働き方もできれば、「週3日×8時間」という働き方もできるわけです。
安藤:周囲の子育て中の女性からは「さまざまな勤務時間に加えて、日数の組み合わせを選べるのは珍しい」と言われています。
──会社に出勤するかどうかという点については、どうだったのでしょうか。
安藤:週3日のうち、1日だけ出社して、あとは在宅勤務でした。いわゆるハイブリッドワークです。当社では「Compatible Work」と呼んでいて、部署ごとにオフィスワークの日とテレワークの日が決められています。会社に出勤するとなると、保育園の送り迎えの時間などをいろいろ調整しなければいけないのですが、在宅勤務だと段取りがかなり楽になりますね。
──週3日ということは、勤務日は月・水・金でしょうか。
安藤:いえ、私は火・水・木と3日連続で働いて、金曜から月曜まで休む方式を選びました。その方がリズムを作りやすいと考えたからです。週3日の勤務曜日をどのように組み合わせるかを自由に選択できるのは、ありがたかったです。
──現在はどのような働き方ですか。
安藤:1年後に「週4日×みなし残業あり」という勤務形態に変更し、今も継続しています。それまでの「週3日×時短」だと、子どもとの時間を多く持てるのは良いのですが、働く時間が短い分だけ、できる仕事も限られてしまいます。まだ完全なフルタイムではないですが、仕事と育児のバランスがちょうどいいと感じています。
「育休を取るのが当たり前」そんな空気をつくる上司の一言
──山根さんは、どんな人事制度を利用しているのでしょうか。
山根:私は2020年に入社したのですが、3年目に結婚し、4年目に1人目の子どもが生まれました。そして6年目の今年、2人目が生まれたので、2児の父親ということになります。
周囲の人よりも早めに子育てが始まりましたが、先ほど川上が説明した「結婚祝金」と「出産祝金」のサポートがあったので、とても助かりました。現在は、上の子どもが保育園に通っていますが、そこでも会社のサポートがあります。

──どんな制度でしょうか。
山根:「育児サポート手当」という制度で、会社が保育園やベビーシッターの費用の半額を負担してくれるのです。わが家では、月に5万円ほど保育園の費用がかかりますが、約2万5000円を補助してもらっています。おかげで、金銭面の不安を感じなくてよいですし、会社が応援してくれているという実感があります。
──育休の取得についてはどうですか
山根:1人目と2人目のどちらも、2カ月ほど育児休暇を取得しました。初めて育休を申請したときは「自分が休むことでチームの負担が増えてしまうのではないか」という引け目を感じていたのですが、上司の川上に相談すると「男性の育休取得率を上げてくれてありがとう」と第一声で言ってもらえたので、気持ちがとても楽になりました。
川上:人事部門の責任者として、育休の取得率を上げていきたいと本気で考えているので、そういう言葉が自然と出たのだと思います。もちろん、チームの中核となっている社員が長期間休むのは痛い面もありますが、組織の動かし方を工夫することで乗り越えていくのが、マネジャーの責任だと思っています。
山根:どんなに素晴らしい制度があっても、利用されなければ意味がありません。その意味で、社員が育休などの制度をどんどん利用できる会社の風土も重要だと感じています。当社には、そうした風土がしっかりと根付いています。
ライフイベントを“キャリアの中断”にしない制度設計
──ところで、山根さんは元々プライベートを充実させたいタイプだったのでしょうか。
山根:いえ、むしろ「仕事を精いっぱい頑張りたい」という気持ちの方が強かったですね。正直なところ、自分が3年目に結婚して、20代のうちに子どもが2人いる状態になるとは全く想像していませんでした。
結果的に、私の場合、1年目から3年目までは仕事に集中して、4年目に子どもが生まれてからはプライベートにも時間を割くようになりました。それぞれの人生のフェーズに合わせて、何に注力するのか、自分で決めることが重要だと思います。
川上:LMでは、社員が結婚や出産、育児、介護などのライフイベントに直面したとき、会社と良い関係性を築いていけるように、人事制度を設計しています。その時々に合った形で「関係性の握り直し」をしていこうという考え方で、社員の人生をサポートしています。
──LMのライフサポートはかなり充実している印象ですが、キャリア形成の面はどうでしょうか。プライベートを優先した働き方を選んだ場合、昇進などにどのように影響するのか気になります。
川上:実は、以前は週5日勤務でないと、管理職になれませんでした。しかし、近年の制度変更で、働き方に関係なく管理職になれるようになりました。
安藤:私は現在も週4日勤務ですが、制度の変更によって、管理職になることができました。フルタイムで働いていなくても管理職になれるチャンスがあるというのは、特に女性にとって、キャリアの可能性を広げることにつながると思います。
山根:制度の変更といえば、給与のベースアップが頻繁に実施されているのも、LMの特徴ではないかと思います。2020年に私が入社して以来、7回も全社員のベースアップがあり、初任給は3割くらい上がっています。社会の変化に対応して、制度が柔軟に変わっていくという点も、働くときの安心感につながっています。
──「働きがい」を高めることにもなりそうですね。
山根:「働きやすさ」と「働きがい」はセットの関係です。働きやすい制度があるというだけでは不十分で、それを土台にしつつ、仕事を通じて社会にどんな価値を届けていくのかという点が重要です。
安藤:制度や仲間の支えがあるからこそ、限られた時間でも成果を出そうと思える。その信頼関係の中で成長を実感できることが、今の働きがいにつながっています。制度のある環境に安心するだけでなく、自分の選択でキャリアを築く姿勢が大切だと思います。
川上:「働きがい」があるかどうかは、どの会社に入ったとしても大切なポイントです。LMは顧客の組織人事を支える事業を行っている会社だからこそ、自社においても本気で「人的資本経営」に向き合っています。制度や環境を整えながら、一人一人が「意味のある仕事」、つまり「働きがい」を感じられる会社でありたいと思っています。

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