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大学院で社会学を学んだあとアクセンチュアで戦略コンサルタントになり、その後、ITの分野で起業した佐貫僚(さぬき・つかさ)さん。後編では、グローバルでビジネスをするコツや、今後のビジネスの展望について話をうかがいました。
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※前編⇒心のどこかに「プランB」を持っておけ〜戦コン出身の起業家・佐貫僚さんインタビュー(上)
仕事が忙しくても「趣味の時間」を持とう
――現在の会社ではコンサルティング事業のほかに、動画の制作もされているそうですね。具体的にはどんな業務内容なのでしょうか。
佐貫:YouTuberと一緒に、動画制作や広告制作の仕事をしています。具体的には人気YouTuberに商品の広告宣伝をしてもらったり、彼らを招いてイベントを開催したりしています。人気ゲーム・アプリの広告キャンペーンなどを手がけた実績があります。
動画って「面白ければ売れる」と思いがちなんですが、どういう動画がお金になるのか、感情をドライに、客観的に見られるのは、コンサルで働いた経験があるからだと思います。クリエイティブをビジネスロジックに変換して企業に売ることができるんですね。
――数独協会の理事にも就いていますね。数独といえば、数字を使ったパズルゲームとして人気ですが、どんなことをしているのでしょうか。
佐貫:理事として協会運営の戦略立案やイベント企画などのマーケティング・広報の仕事をしています。戦略コンサルの経験が非常に役立っています。
もともと数学が得意で、数独も小学生からやっていました。数独もサブカルチャーの1つですが、その収支戦略の立案を手掛けるのは、営利活動とは異なる面白さがあります。被災地の高齢者の生涯学習支援など、社会貢献に役立っている点でもやりがいを感じています。
――大学でも講義をしているとか・・・
佐貫:社会学の研究経験のある経営者として、何回か講師として講義をしています。昨年は東洋大、その前年は東大に行きました。タイの大学で講義したこともあります。東洋大では社会学概論の中の一コマを担当させてもらいました。YouTuberたちのコミュニティビジネスやコンテンツの世界的な広げ方について、フランスのジャパンエキスポに行った自分の実体験を交えて取り上げました。学生さんには、身近な題材で社会学・経営学を学び、楽しんでいただけたようです。
――好きなことを仕事にできているように感じます。
佐貫:そうですね。私は比較的、自分の好きなことを仕事にしているケースだと思います。人それぞれですが、好きなことを仕事にするのなら、自分の頭の中にある「こうあるべきだ」という型を外す練習をするといいですよ。最初は「ひょっとしたら、こうやればうまくいくかも?」くらいのアイデアを、雪だるま式で転がしていくんです。
もちろん、なかには好きなことがない人もいますし、好きなことがあってもビジネスに結び付けようとしない人もいます。でも大学生ならば、今のうちに好きなものを見つけられるといいですね。社会に出てしまうと、仕事や家庭で一生懸命になって、好きなものを見失いがちです。
学生のうちは自分の好きなことにどうしようもないくらいに打ち込んで「私は●●が好きだ」とアイデンティティの一部にできるくらいになっておくと、10年後の自分の助けになります。
――学生時代の過ごし方がその後に影響するんですね。
佐貫:私の場合、戦コンの仕事はものすごく忙しかったけれども、メンターやカウンセラーがついてくれて、いろいろなアドバイスをしてくれたので幸運でした。そのときにいただいた次のようなアドバイスは、今でも私の指針になっています。
「いまはプロジェクトに没頭していると思うけど、趣味の時間を持て」
「将来いろんな経営者と会話できるようになるし、人生も豊かになる」
読書やネットサーフィンで情報収集をする時間や、プライベートな趣味に費やす時間を確保することは、きわめて重要なことなんです。
「グローバル×ニッチ」でやっていく
――好きなことで起業しつつ、学問についても大学で講師をやり、趣味の数独でも理事をつとめている、ということですよね。どうやったら何も諦めずにすむのでしょうか?
佐貫:2つあって、1つは「やりたいことは絶対やる」と心に決めておくことですね。講師の仕事はやりたいので、基本的に引き受けています。キャリア形成するなら、複数の軸を持つことだと思っていて、経営者×社会学×グローバル。この3つの軸を持っている人は、なかなかいません。つまりニッチになれるので、大学からも声をかけてもらえるわけです。
もう1つは、好きなことを仕事にするとしても、経営面における収支計算をきちんと
しておくことです。何割が収益を上げるための仕事で、何割が純粋に好きでやりたい仕事なのか。しっかり把握して収支が合うようにするのが大切です。いくら「好き」でも、それに飲みこまれちゃだめ、ということですね。
何事もバランスが大事という点は、戦コン時代も気を付けていました。よほど炎上しているプロジェクトでない限り、土日の片方は必ずテニスをするとか、毎週自分の足りないスキルを棚卸しするとか、30歳を過ぎてからどう生きるかを考えていました。仕事のことばかり考えていると、そういうことがだんだん見えなくなってしまいます。
――IT関連会社の経営者としては、今後どんなビジネス展開を考えていますか。
佐貫:「グローバル×ニッチ」でやっていこうと思っています。グローバルでビジネスするなら、選択肢は2つあると考えています。まず外資系企業などで、グローバル資本主義の中の一員になるということ。もう1つは、ニッチなものを見つけて、自分自身で手がけていくことです。
数独もそのうちの一つで、ターゲットの総人口が少ないという意味では「ニッチ」です。世界100カ国以上で遊ばれているけれども、世界でメジャーかというとそうではありません。でも、各国の人口のうち数パーセントが遊んでいて、そんな国が世界中にあるので「グローバル」といえるのです。
個人や中小なら隙間を狙うと良いのではないかと思うんです。インターネットを使えば、世界中にその隙間を広げられますから。私は、大企業やメガベンチャーがやらないようなことをコツコツと手がけていきたいですね。
グローバル人材とは「セルフスターター」
――「グローバル」が近年のキーワードですね。グローバル人材ってなんだと思いますか?
佐貫:「セルフスターター」だと思います。自分から他人に働きかけて、自らビジネスを作り出せる人。英語についてはネイティブならもちろんいいけど、必須というわけではない。語学よりも、外国人の気持ちを理解できることが大切だと思います。
コンサルでは、グローバル人材になるためのマインドセットの仕方も学べたと思っています。セルフスターターじゃないと、コンサルは無理ですからね。
――「外国人の気持ちを理解する」とは、具体的にどういうことでしょうか。
佐貫:たとえば、クールジャパン戦略というと「オタクの外国人は日本のアニメが好き」といった十把一絡げのとらえ方をしがちです。でも実際に海外に出て話を聞いてみると、「フランス人は初音ミクに食いつくけど、スペイン人は反応に乏しい」みたいに、想像していたのと違っていたということはよくあります。当たり前のことですが、目の前の相手が何が好きで、何が嫌いなのか、実際に話をしながらくみ取っていかないといけない。そういうことです。
たとえば、私はYouTuberと共同で動画などを制作していますが、実際に関わっていると、彼らがどういうコミュニティを作って、生活のどんなところで悩んでいるか、リアルに分かります。人間関係のトラブルとか、お金がなくて悩んでいるとか。そういった事情をくんで初めて、お互いにメリットのあるビジネスの枠組みを提案することができます。
そこをすっ飛ばして「YouTuberを使ってうまくお金を儲けよう」という発想をする人もいますが、それではうまくいきません。
――「大学時代にやっておけばよかった」と思うことはありますか?
佐貫:スモールビジネスでもいいから、大学時代に起業してみればよかったと思っています。起業に必要なスキルって、実際にやってみて身につくこともあります。特に商売する感覚は、自分でやらないと身につかないんですよね。コンセプト先行の新規企画は企業勤めでもできますが、商売は泥臭いなと感じます。ちゃんとお金を稼ぐためには、やはり嗅覚が必要です。
――佐貫さん自身の今後の方向性を教えてください。
佐貫:このままグローバル×ニッチのビジネスを突き進むつもりです。私個人としては、左脳と右脳、ロジックと感情のうち特に後者を磨いていきたいですね。私はいま、コンサル的なロジックで動画広告を売っているけれども、動画って最終的には感情じゃないですか。「好きなことで仕事する」というのも感情です。だから、広告代理店の人たちの感情マーケティングにはとても興味があります。
コンサル会社と広告代理店の守備範囲が随分重なってきましたが、ちょうど時代の過渡期なんだと思います。コンサルがロジック一辺倒ということはないでしょうし、その逆もしかりです。そして、両者の間をYouTuberのようなネット発クリエイターが切り裂くように台頭してきているのが現在です。「エモいをビジネスにする」のは、これからの人類の課題ですからね。
※前編⇒心のどこかに「プランB」を持っておけ〜戦コン出身の起業家・佐貫僚さんインタビュー(上)
いかがでしたか。佐貫さんの経営するCrisp社での長期有給インターンに興味を持った方はこちらから応募できます。
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