外資・日系トップ企業を目指す学生のための就職活動サイト「外資就活ドットコム」

「日本人というバックグラウンドを大切に」他人との差別化を意識せよ 「日本買い 外資系M&Aの真実」著者に聞く(下)

「日本買い 外資系M&Aの真実」(日本経済新聞出版社)の著者、加藤有治氏はモルガン・スタンレー証券やGEヘルスケアなどを経て、プライベート・エクイティ(PE)ファンドのペルミラ・アドバイザーズ日本法人社長を務めたM&A業界のプロです。しかし、ファーストキャリアは金融業界ではなく、郵政省(現総務省)からスタートさせています。外資就活ドットコムを運営するハウテレビジョンの代表・音成洋介との対談の後編では、加藤氏の経歴を辿りながら、PEファンドの面白さや外資系で求められる能力などについてお話をうかがいました。

インタビュー前編: 外資系ファンドは「怖い」のか?対峙する日系企業に求められる姿勢とは 「日本買い 外資系M&Aの真実」著者に聞く(上)

キャリア形成は「他人との差別化」を念頭に

音成:加藤さんは面白いご経歴ですよね。京都大学の理学部を卒業したかと思えば、経済学部にも行って、1990年に当時の郵政省に入省しています。

加藤:京大理学部時代は物理学科で主に宇宙物理を学びました。ノーベル賞をとりたかったんです。その夢は入学して1年で砕かれましたけどね。すごいやつらがたくさんいて。自分がここでやっていても冴えないオーバードクターになるだけだと、早々に切り替えました。経済学部へいったのは、役人になりたかったというよりも社会と接点のある仕事をしたかったからです。

音成:当時はバブル最盛期です。銀行に行きたいとは思いませんでしたか?

加藤:キャリアを考えるときは常に「どうやって他人と差別化するか」ということが念頭にありました。経済の勉強をしていると、価値というものは「希少性」にあると気づきます。自分が希少になるにはどうしたらいいかという視点で見ると、銀行に行っても全然希少ではない。数が少なくて世の中で評価されるものといえば、例えば霞が関の官僚だなと。採用人数が少ないですから。大きな仕事をして、世の中に役に立ちたいというのも少しありました。その後、OECD(経済協力開発機構)への出向で海外派遣となり、フルブライト奨学金でイェール大学経営大学院を修了しました。アメリカでいろいろな考え方に触れ、考えた末、外資金融業界に足を踏み入れました。

音成:MBAをとった時に金融を志されたのですか?

加藤:はい、その時にPEは視野に入っていました。MBAは1998年に修了しましたが、その時代、東海岸のアメリカ人のできる人の多くは皆PEを目指してました。残念ながら、その当時、日本にはまだPEがほぼなかったので、内定をくれたモルガン・スタンレー証券に入り、カバレッジバンカーをやっていました。

2000年ごろから、国内でもPEが活躍し始めましたが、国内系PEは、変わった経歴の私に興味を持ってくれませんでした。逆に、GEのようなグローバル企業は、私のような経歴を非常に評価してくれました。GEヘルスケアに入って事業開発アジア地域責任者になり、中国人も含む7~8人のチームを持ち、2000年代前半に中国で大きく成長した医療機器会社を買収していました。ここの仕事が一番面白かったです。

2006年にPEファンドのペルミラに就職しましたが、採用された理由は3つあったと思います。1つ目は日本のエスタブリッシュメントである霞が関(郵政省)で仕事していたから日本の仕事の仕方やカルチャーが分かること。2つ目は投資銀行(モルガン・スタンレーとメルリリンチ)でM&Aのトランザクションをグローバルスタンダードで行っていたこと。3つ目はメーカー(GEヘルスケア)での経験があったことです。

音成:一般的にPEファンドに就職するために必要とされる能力は何でしょうか。

加藤:新卒で最初からPEファンドにいく方法は、基本的にはないです。PEに必要なのは「案件発掘」「案件実行」「企業価値創造」の3つの能力です。案件発掘は、法人営業や投資銀行のカバレッジ、大手メーカーの営業などの経験が役に立ちます。案件実行は、投資銀行のM&A、会計や監査、法律事務所のM&A実行の経験です。価値創造は、戦略コンサルや事業会社での経験。つまり、ほとんどの仕事はPEにつながっています。

ただ、PEファンドの採用側から見ると、この中でもトランザクション(M&Aの具体的案件実行)の仕事をやっていない人は採用のハードルが高いです。まず重視されるのはM&A案件実行の能力、次が法人営業力、その次がバリュークリエーションやバリューアップ(事業運営、事業経営)です。外資系ファンドなら、もちろん英語能力も必要です。

経営者との「飲みニケーション」も重要

音成:PEのマーケティングは、具体的にはどのように行うのですか?「会社を売りませんか」と聞くわけにもいかないでしょうし。

加藤:トップダウンとボトムアップの手法があります。トップダウンは、産業構造を考えて、この業界は必ず売り物がでるから、こことここを一緒に買ったらどうかなどといろいろ考えて、提案に行きます。ボトムアップは、「売り物が出たらしい」「オークション(入札案件)が始まるから札を出すぞ」という感じです。状況に応じてですが、両方をやらないといけません。

ただ単にボトムアップで札を出しているだけでは、絶対にいいディールになりません。業界の人とつながって、オークションの可能性をすごく早くから察知していたり、業界のことが分かっていて経営陣とも話せたりするなど、トップダウンもやることで基礎体力を身につけるわけです。そうすれば、いいオリジネーション(案件発掘)ができる。オークションでも勝てるようになるのです。

売り手としての判断材料は、価格とスピード、確度の3つです。たとえば「Bさんが200で買いたいけれど、準備がこれからなので買えるのは2カ月後」というのに対して、「Aさんは150だけど1週間後にコミットする」という場合、売り手は悩みますが、だいたいAさんに決まります。不動産のようにばんばん札を入れて高値で買うというわけではないんです。うちは向こうの事業内容を十分理解しているし、札も入れて早めに動いている、だからオークションをやっても勝てるということなのです。外食やテクノロジーなど、特定の業界に特化するPEファンドの登場は、そんな理由もあります。

経営者との飲み食いも頻繁にしていますよ。経営者と仲良くなれば、業界の課題や改善策、流れがわかるので、なにか起きたときに「ああこれのことか」となります。売却のときに“まな板の鯉”になっている相手も、業界や企業の課題に対してここに資金を投入してサポートしますよと提示すれば不安が解消されるので、大事なことです。

音成:人脈形成でいうと、郵政省での経験は役に立ちましたか?

加藤:役に立ちました。日本では「元役人です」というと、「一度は日本でまじめな人生を送ろうとしたはずだから変な人ではない」と思ってもらえます(笑)。だから事前に経歴を知らせておくと、多少は向こうの安心材料になるようです。あとは、日本のサラリーマンと仕事をするうえでの作法がしっかり身についていることでしょうか。勿論、かつては、通信業界との繋がり、知識が役に立ったこともありました。

日本人というバックグラウンドを大切に

音成:外資系で働くために重要なことを教えてください。

加藤:1つは、外資系といっても主戦場は日本なので、日本での仕事の仕方が分かっていることです。特に若手で外資系に行きたいと思っている人は意外と忘れがちなのですが、日本できっちり仕事ができて、そのうえで海外とのコミュニケーションもできるから価値があるのです。

2つめは、キャリア育成で重要なのは、ひとつの分野を深掘りしつつ浅く広くビジネス全般を学んでいく「T字型キャリア」であることです。オタクにならないようにしつつ人に負けない分野を作っておくことが大切です。

3つめは、主張力です。これはシニアになればなるほど大事で、主張できない人は外資系で出世できません。外国人達の会話は途切れず続くので、基本割り込むくらいでないとしゃべらせてもらえません。毎回は割り込めないけど2回に1回は割り込めるように。向こうとこっちが同時にしゃべり続けて、向こうがやめるまでしゃべり続けないと聞いてもらえないくらいなので、それくらいの主張力が特に日本人には必要です。

音成:外資系に合う人、合わない人って、外資系の勤務経験の中で見聞きしましたか?

加藤:合わないのは、コミュニティ型のほのぼのした人ですね。皆で一緒にやって、自分の成果も主張せず皆でシェアしましょうという「農耕民族タイプ」とでもいうのでしょうか。水が少し濁っていたほうが魚は棲みやすいなんていいますが、外資系は透明性の高い環境です。ごまかして人の成果を横取りするような人もたまにいますが、いずれ必ずばれます。

一方で、「私はたいして何もしてないです。すべて部長のおかげです」なんて謙遜していると、本当にそうなのかと思われてしまいます。チームプレイが非常に重視されますが、やったことについては「自分がやった」とある程度主張することも大切です。

また、やめる人と入ってくる人の流動性が高いので、さっぱりしています。だから僕はすごく好きでした。ファジーにみんなで仲良くしたいなら、日本企業のほうがいいですし、透明な環境に合わない人は外資は避けた方がいいかもしれません。

音成:改めてPEファンドの仕事の面白さを教えてください。

加藤:投資銀行的なトランザクションと事業会社的な事業運営の両方ができる、これは魅力だと思っています。株主として経営するのだから、3つの価値向上手段(インタビュー前編参照)の観点で、系統だった経営を総合的に実行する経験を持つことができます。これはPEファンドの醍醐味で、少なくとも日本の大手事業会社では、50代にならないとそんな経験はできません。

PEのキャリアは金融においては最終形なので、その次に何をするかは、みんなそれぞれです。「次はこれ」と決まったものがあるわけではありません。僕は独立系で企業投資の仕事をやろうと思っていますが、まだまだ時間がかかりそうです。いまは、外食産業への投資をしているのですが、外食企業は経営陣も若いですし、これくらいの年齢(50歳)になると若い人との仕事は楽しいです。

音成:最後に、グローバル社会で生きていくためのアドバイスをお願いします。

加藤:グローバル社会で日本「企業」が生き残るために必要なのは、株主も従業員も、日本企業としてのこだわりを捨てることだと思っています。でも日本「人」として生き残るということならば逆で、日本人としての軸をしっかり持つことが大切です。グローバルジャングルの中で日本人がインド人や中国人と同じベースで戦うと、絶対に負けます。私もこれは、ロンドンで経験したことです。日本という成熟した豊かな国をバックに持っているわけだから、日本人としての軸があったほうが絶対にいいのです。

企業はグローバルに、個人は日本人であることを忘れずに。日本人としての文化や仕事の仕方、軸を見失わずに仕事をすることが重要だと思います。

インタビュー前編: 外資系ファンドは「怖い」のか?対峙する日系企業に求められる姿勢とは 「日本買い 外資系M&Aの真実」著者に聞く(上)

加藤有治
1966年島根県松江市生まれ、岐阜県育ち。1988年京都大学理学部卒業、1990年経済学部卒業。1990年郵政省(現総務省)入省、OECD(経済協力開発機構、パリ)に出向。1998年米国イェール大学経営大学院修了。1998年以降、モルガン・スタンレー、メリルリンチ(ロンドン)を経て、GEヘルスケア事業開発アジア責任者、直近はペルミラ・アドバイザーズ日本法人社長として、15年間にわたり対日企業投資に携わった。2014年以降、独立系投資会社であるイースト・インベストメント・キャピタル株式会社(EIC)代表取締役として、引き続き企業投資活動に取り組んでいる

マッキンゼー ゴールドマン

三菱商事 P&G アクセンチュア

グローバルプロフェッショナルをめざすなら外資就活


このページを閲覧した人が見ているページ

募集情報

{{r.GsRecruitingItemType.name}} {{r.GsRecruitingItem.target_year | targetYearLabel}} {{label.short_name}}

{{r.GsRecruitingItem.name}}

{{r.GsRecruitingItem.description}}

{{s.entry_end_date}} ({{s.entry_end_day_of_week}}) {{s.entry_end_time}} {{s.apply_method_label}}

{{s.name}}

日程: {{s.event_date}}

場所: {{' ' + s.place}}


外資就活ドットコムに会員登録すると、様々な就職支援サービスをご利用いただけます。現在、会員の約7割が東大・京大・慶応・早稲田・東工大・一橋大などの上位校の学生です

ログインする 新規会員登録
このページを閲覧した人が見ているコラム
コミュニティの新着質問