
【第2回】DX化で変わる商社〜求められるスキルと変化する採用傾向〜|特集・デジタル時代のためのファーストキャリアナビ
2024/05/13
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昨今、ITはもはや「特別なスキル」ではなく 「あらゆる業界や職業において必要不可欠な存在」 となっています。
本特集では、就活生に人気の業界・企業における、ITの様々な普及事例を紹介して参ります。
第3回であるこの記事のキーワードは、人気企業ランキングでも常連、海外投資家からも注目を集める 「商社」 です。
ITはコンサルやメーカーだけじゃない!商社もデジタル戦略に力を入れている
IT分野に投資する伊藤忠、三菱
伊藤忠商事は、米ボストン・コンサルティング・グループ(BCG)と組んで4月に立ち上げる共同出資会社を通じて顧客企業に生成AI(人工知能)などを使った業務改善を提案する事業を始めました。また、IT企業の伊藤忠テクノソリューションズ(CTC)を2023年末に約3800億円を投じて完全子会社化しました。伊藤忠商事の出資企業にはITコンサルのシグマクシスなどもあり、デジタル関連企業を多く持ちます。
このように伊藤忠商事は、デジタル事業群戦略を推進しており、従来はアクセンチュアが手がけていた顧客企業のDX(デジタルトランスフォーメーション)化を支援するITコンサル事業に進出しました。
また、三菱商事では、産業全体の変革を促進する「産業DXプラットフォーム」の構築を目標として、2022年に「産業DX部門」が設立されました。大容量データ処理技術を持つITスタートアップ企業のモルゲンロットや世界最大規模の位置情報データベースを持つ「HERE Technologies」など、IT事業に積極的に出資しています。三菱商事はこれにより、データセンターの効率化やスマートシティー構想の支援を目指しています。IT技術と商社としての幅広い顧客基盤を生かし、新たな需要を取り込んでいく狙いです。
参考:
・伊藤忠商事、米BCGと新会社 生成AI使う業務DX提案【イブニングスクープ】
・三菱商事、データ処理ソフト新興に出資 海外展開も(外部サイトに遷移します)
広がる商社のデジタル事業 働くメリットは
好業績が続き、日本企業の中で注目を集める商社。 石炭など資源の相場上昇が落ち着く一方、IT(情報技術)や小売り関連の事業再編が利益を押し上げています。
伊藤忠商事をはじめとする大手商社は、グループ内に子会社としてIT企業を抱えていることが多くあります。伊藤忠商事なら伊藤忠テクノソリューションズ、丸紅は丸紅情報システムズ、住友商事ならSCSKなど、こうしたグループ企業の存在が商社のデジタル事業の拡大の背景にあります。
今後も大手商社はM&A(合併・買収)などを用いて、デジタル技術と多くのデータを活用しながら、 川上の戦略策定から川下の顧客対応までを一気通貫で提供できる体制 を整えていくでしょう。それに伴い、自社内のシステム基盤やデータ活用基盤を整えてDX化を推進する必要もあるため、社内のデジタル戦略部や情報・通信部門が自社グループ企業のDX支援に取り組み、そこで得た知見を顧客のDX支援サービスに活かす取り組みが盛んに行われています。
商社でIT分野に関わるメリットとして、 上流工程に携わることができる というものがあります「ITを活用したプロジェクト」と一言で言っても、戦略立案などのいわゆる「上流」の工程に関わるか、実際に手を動かしてシステムを構築する「下流」の工程に携わっていくかで、働き方は大きく異なっていきます。
商社では、大企業であることが多い親会社や、グループ企業と連携してシステムの構築や改修を行うため、上流工程から携わることができ、その業界の専門知識や業界知識への造詣を深めることが可能です。 一般のエンジニアからエキスパートと呼ばれるエンジニア、またはPMなどのキャリアパスを進みたい人には大きな経験が積める でしょう。
参考:伊藤忠のデジタル事業 目指すは「打倒アクセンチュア」(外部サイトに遷移します)
脱「体育会系」「男性社会」…DXで変わる商社の求める人材とは
商社はデジタル人材の獲得に注力している
総合商社がデジタル変革に着手し、人材獲得や育成に注力しています。住友商事は2026年までに1000人のDX推進人材を育成する計画を立て、三井物産はデジタル人材の別枠採用を行なっています。総合商社は幅広い事業領域でデータを得られますが、それを活用できる専門知識を持つ人材の確保が課題です。各社は社員の知識底上げに研修を重点的に行い、外部人材の獲得競争も激化しています。また、専門家の確保が急務であり、外部人材の採用に力を入れています。デジタル技術に深い知見を持つ人材はITやコンサルなどの業界に流れています。「人が財産」と言われる商社ですが、デジタル人材の層が厚いとは言えず、各社は採用や育成に奔走しています。大手商社でジョブ型採用が広がり、デジタル人材の需要が増大する中、デジタルに関わりたい人にとってはチャンスが広がっています。
参考:商社、新卒に「一芸採用」 デジタル別枠やデザイン選考(外部サイトに遷移します)
「体力重視」から「論理力重視」に
「男性社会」「体育会系」などのイメージも強い商社ですが、現在は就職活動で多様な人材にアプローチするようになりました。採用方法の変更が相次ぐ背景には、事業領域の拡大があります。 商社が求める人物像は、コミュニケーション能力や熱意のある人材一辺倒から、変化が激しい時代に対応できる独創性や専門性のある人材にまで広がっているようです。
従来、総合商社は中間業者として商材を流通させて手数料をとる 「トレーディング」 が中心でした。社員はまず営業として取引先を頻繁に訪ね、受注獲得のために奔走するため、体力と胆力が重視されていました。しかし、現在はDXやグローバル化の影響で中間業者の需要が小さくなり、各商社は存在意義を示すために事業そのものに投資し、リスクを負い主体となって経営に関与する 「事業投資」 のビジネスモデルに変化しました。そのため、以前は特定の大学の体育会出身者が毎年入社するということもありましたが、現在は 論理力や管理能力の高い学生 が求められています。
商社の面接では必ずと言っていいほど 「なぜ、うちの商社を志望するのか?」と聞かれることが多い です。前述のように商社のビジネスは基本的にBtoBであり、普段の生活でその実態を身近に感じられるような企業ではありません。そのため商社ごとの違いや、各部門でやっていることが大変見えづらい側面があります。『商社に入りたい』だけでなく、自分がどんなキャリアを歩み、何をしたいかをしっかりと考え抜き、自分の言葉で志望理由を言えるようにしておかなければ、それまでの選考で高い評価を得ている人でも落ちてしまう可能性が高まるので気をつけましょう。
参考:総合商社の就活、変わる働き方 求むは「経営人材」就活探偵団(外部サイトに遷移します)
ファーストキャリアとしての商社
ITを軸に就活を進める就活生には、コンサルやITベンダー企業が人気を集めています。しかし、事業領域が広がり、採用方法が一括採用からジョブ型採用に変更されつつある現在においては、商社のIT関連の事業も魅力的な選択肢になりました。
ファーストキャリアとして商社を選ぶメリットとして、 得られるスキルや制度を起業や転職に活かすことができる というものがあります。前述した通り、商社はM&A を繰り返すことによって幅広い事業領域を持ち、 投資先企業の事業経営に携われるチャンスも多い です。そこでは 大半は投資先の会社の経営層、最低でも管理職につくことができる ため、入社数年目の若いうちから経営経験を積むことができます。また、社内ベンチャー制度によって、総合商社のリソース、資本とノウハウを利用して事業をゼロから立ち上げる機会もあります。IT分野は関わる領域が広く、応用が効くからこそ、無数の商材を持ち、幅広く業務を行う商社を選ぶことで自分の本当にやりたいことを叶えるチャンスに巡り合えるかもしれません。
それに対して、ファーストキャリアとして商社を選ぶデメリットとして、 大規模な組織のため決定や新事業にスピード感がない ことが挙げられます。リスク管理規定に基づけば、総合商社は一般的に、誰かがすでにやったことのある事業でないと動けない傾向にあります。競合よりもどれだけ早く先に事業を始めて、市場を先に占有するかが重要になっている今日では、大手商社の戦略に疑問やもの足りなさを抱く人もいるかもしれません。 何事も常に動きが早い という点では、ベンチャー企業に軍配が上がります。
一人一人が将来の理想のキャリアを思い描き、自分に合ったキャリアプランに沿った選択をすることが重要です。就活を通じて自分の将来を考え抜いて悔いの無いキャリアプランを実現するために、
・自己分析を徹底する
・様々な企業のイベントやインターンシップに参加し、それぞれの知識を俯瞰的に整理する
以上の二点のアクションをなるべく早い時期から徹底しましょう。
参考:
・総合商社は起業への近道? 起業志向の学生が商社に入るべき3つの理由
・「総合商社で40歳年収1500万以上より、死ぬ瞬間に後悔しない道を選んだ」ー私が商社を捨て、メガベンチャーを選んだ理由
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