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これから株式会社日本総合研究所(以下、日本総研)の記事を読むに当たり、読者の中には、先入観を抱いている人もいるかもしれない。伝統的な日本企業、公共案件中心で調査がメインの業務……例えばそういったイメージだ。
しかし日本総研のコンサルタント、山下翔平さんのエピソードを聞けば、先入観が崩れるはず。組織の壁を越えて官民のプロジェクトを自由に行き来し、上司にも忖度(そんたく)せず意見をぶつける山下さんは、「これが日本総研では普通のカルチャー」だと語る。あなたが知らない、日本総研のリアルな日常をのぞいてみてほしい。
※内容や肩書は2023年2月の記事公開当時のものです。
キャリアの入り口から「まちづくりに関わる」ためにコンサルティングファームへ
——山下さんは学生時代、どんな軸を持って就職活動を進めていましたか。
山下:「自分のまちを元気にする仕事に携わりたい」と考えていました。私が生まれ育ったまちは人口減少が進み、再開発、新規整備がほとんど行われていなかったためです。公務員だった父親の影響もあったのかもしれません。大学院時代は都市社会工学を専攻し、交通と都市政策に関する研究をしていました。
就活で当初視野に入れていたのは国家公務員。ただ、公務員はジョブローテーションがあり、自分がやりたいことに携われるかは未知数です。加えて、私はまちづくりのビジョンを描くだけではなく事業主体として関わりたいとも考えていたので、次第に興味が民間企業へと移っていきました。
——そうなると大手ゼネコン、インフラなどへ目が向きそうですが、なぜコンサル業界を選んだのでしょうか。
山下:もちろんゼネコンやインフラ関連、鉄道会社なども検討しました。しかし大手事業会社の実情を聞き、まちづくりの大きなプロジェクトに携われるようになるまで10年くらいかかる場合もあると知って……。そこまではさすがに待てないし、10年の間に社会環境も変化してしまうのではないかと思ったんですよね。
そんな時に、同じ京都大学出身で都市社会工学専攻の先輩が日本総研で働いていると聞いて、説明会やインターンに参加しました。そこで「コンサルでもまちづくりのプロジェクトに関われるんだ」と知り、外資系コンサルティングファームとも比較して、最終的に当社に決めました。
縦割りのイメージとは真逆。「ハッシュタグが多い人」に向いている環境
——日本総研を選んだ決め手を教えてください。
山下:企業を比較する際には3つのポイントを重視していました。「自分のやりたいことができるか」「やりたいことが給料や生活環境を高めることにつながるか」、そして「その企業の人たちと一緒に働きたいと思えるか」の3つです。
最初の2つは他のコンサルティングファームでも満たされると思いました。でも自分自身にとって3つ目を最もかなえられる環境は日本総研だと感じました。日本総研には仕事面でも、プライベート面でも良い意味で“おせっかい”な先輩が多く、仕事と生活は同一線上にあって、切り離されるものではないと考えていた自分にとっては居心地の良い環境だと感じたんです。
制度面にも魅力を感じました。日本総研には、自グループだけでなく他グループの案件にも参画できる「クロスアサイン」という制度があります。面倒な申請や手続きは特段なく、自分が「やりたい」「貢献できる」と思えば他グループの仕事に挑戦できるんですよ。
私の例でいえば、2022年はまちづくりの公共プロジェクトに携わりつつ、民間の新規事業や子育て関連のプロジェクトなど、いろいろと挑戦しました。それぞれの案件から得られる知見がつながることで、顧客や社内に提供できる価値にも厚みが出て、成長できていると感じています。
——少し意外な印象を抱きました。「伝統的で固い大手日系企業」「縦割り組織」のイメージを勝手に持っていました。
山下:私も入社前はそんなイメージを持っていたのですが、実際は真逆でしたね。
コンサルティングファームは多くの事業会社とは違い、人のノウハウそのもので成り立っています。だからこそ個人の興味を阻害しないような風土や制度を日本総研は大切にしていて、上司たちが「取りあえずいろいろやらせてみよう」と、個人の得意な領域を生かしながら仕事をどんどん任せていく文化があるんです。
私の場合は入社時点から「交通系の案件をやりたい」と言い続けていて、そのうちに全然知らない上司から「交通系に興味があるんだよね?」と声をかけられたり、出身地の自治体の案件にアサインしてもらったり、さらには趣味の野球関連の仕事にも携わらせてもらったりと、希望が次々にかなっていきました。
その意味では、やりたいことが明確な人、自己紹介にハッシュタグがたくさん付くような人にはとても向いている環境だと思います。
入社3年目、「国土交通省での研究調査」で得た成功体験
——山下さんは官民を問わず多数のプロジェクト経験があると伺いました。具体的なエピソードはありますか。
山下:公共分野のプロジェクトから話しますね。私が若手時代の最大の成功体験になったと感じている国土交通省の調査研究事業です。
このプロジェクトでは、交通結節点といわれる駅前広場や自由通路の価値を測定・評価し、その投資効果を研究しました。魅力的な都市部の交通結節点には事業者や鉄道会社などの投資が集まりますが、地方部では整備がなかなか進まないケースが見られたためです。
2019年から4年間にわたって、大学院での研究のようにデータを取り、計量経済学の手法を用いて分析結果を導き出し、最終的には国交省の幹部や大学教授などの有識者が居並ぶ中で調査結果を発表しました。当時の私は入社3年目のタイミングで、大いに緊張しましたが、結果は好評でその後も継続して検討が進むことになりました。
また、国交省との別のプロジェクトでは、自動運転の導入に向けたインフラマネジメントの検討にも携わっています。地方部では予算不足や人材不足といった課題があり道路の修繕・維持管理が満足に行えず、例えば自動運転車の実装といった道路利用の高度化や、そもそも安全かつ快適に住民がインフラを利用すること自体が、難しくなりつつあります。
そこで、自治体や民間事業者の技術者不足の課題を解消するために、包括的民間委託や新技術導入を推し進めて、都市基盤である道路の整備・維持管理に向けた意思決定を支援しています。
——いずれも中長期の課題解決に向けた取り組みだと思いますが、大規模な公共プロジェクトを前に進めていくためには何が大切なのでしょうか。
山下:プロジェクトの関係者が多岐にわたるので、「誰がキーパーソンなのか」を適切に把握することを意識していますね。テーマとなっている事柄に対して、特に強く課題意識を持っているのは誰なのかを知り、その人の心に響くように動くということです。
民間と公共の大きな違いで言うと、民間は利益追求のためにシンプルに意思決定できる面があるのに対し、行政は住民や議会などさまざまなステークホルダーと調整しながら、より複雑な意思決定をしなければなりません。
誰もがメリットを感じられるようにしつつ、必要なプランを推進することが求められます。一言では言えないくらい大変な部分も多いのですが、どんなプロジェクトにも思いを持つキーパーソンがいるもの。その人を支え、プロジェクトを具現化していくやりがいは、公共分野の仕事ならではだと感じます。
重要な役割を担うのは若手のタスクリーダーたち
——民間プロジェクトの実例についても聞かせてください。
山下:先ほど話した、「自動運転のためのインフラマネジメント」の延長線上に当たるプロジェクトについて紹介します。
まちづくりの領域では多くの民間事業者が新規参入の機会をうかがっており、私はある大手電子機器メーカーからの依頼で、要素技術やデータ連携などの強みを生かした、インフラマネジメント領域における新規事業創出の検討支援を行っています。
目指すのは既存事業の強化ではありません。2040年〜2050年を見据え、「未来のあるべき姿」へ向けて非連続の成長を実現することが目的です。
やり取りをするのはクライアント側で全社戦略を担う専門部署の人たち。こうした重要な役割も入社3年目以降に任されており、自分が想定していた以上の成長実感を得ています。
——山下さんのように早い段階から重要な役割を任されるのは特殊なケースなのでしょうか。
山下:いえ。このプロジェクトにはタスクごとに4人のリーダーが入っていますが、入社5年目の私以外に、それぞれ6年目、4年目、2年目と若い顔ぶれが集まっています。年齢にかかわらず、個人の能力ベースでプロジェクトにアサインし、大きな裁量を持たせてくれるのも日本総研の特徴なんです。
コンサルティングファームによっては、パートナー、マネージャーなど限られた立場の人しかクライアントと直接向き合わないケースも、もしかするとあるのかもしれません。
当社の場合は1年目からクライアントと対峙することになるので、早い段階でチャンスをつかめますし、どうやって価値を発揮するかを考え抜くことにもつながります。
国の意思決定にも、新規事業の上流にも関われるのは日本総研ならでは
——官民のプロジェクトを行き来することは、コンサルタントとしての成長にどのようにつながっていますか。
山下:官民それぞれのプロジェクトで得られる知見を環流することで、コンサルタントとしての幅は確実に広がっていると感じます。
例えば、民間プロジェクトの新規事業検討などでは、未来のあるべき姿からバックキャスト的に思考することが求められます。
この考え方を身に付けたことで、私は公共プロジェクトでもあるべき姿から逆算し、新たな提案を生み出すことができています。従来の公共事業の支援だけでは得られなかったスキルでしょう。
また、公共のインフラマネジメントに関わった経験を生かして、そこにつながる民間の新規事業に携わることができました。プロジェクト間の相乗効果を高めるという意味でも、官民を行き来することが重要なのだと思います。
——山下さんは入社前に「まちづくりのビジョンを描くだけではなく事業主体として関わりたい」という思いを抱いていましたが、コンサルタントの立場に物足りなさを感じることはありませんか。
山下:もし、公共プロジェクトのうち、公共事業に関する検討支援にしか携われない立場だったら、物足りなさを感じていたかもしれませんね。しかし日本総研では、国の中枢の意思決定や政策検討等の調査を支援できるだけでなく、その先にある民間事業の実行フェーズに入っていくことができます。まさに事業主体の一部として関わることができるんです。
日本総研の会議で「若手と上司が本音をぶつけ合う」理由
——話を聞いて、事前に抱いていた日本総研の企業イメージが大きく変わりました。山下さんは自社のカルチャーの魅力をどのように捉えていますか。
山下:社内の会議では、若手と上司が本音でぶつかっている風景をよく見かけます。どんなプロジェクトでも答えは一つではありません。
互いに正解だと思うことを主張し、議論すべきところは徹底的に議論する。そんなカルチャーが根付いている会社だと思います。逆に言えば、「課題が見えているのに言わない」「会議で何も発言しない」ことをよしとしない風潮も強いですね。
このカルチャーがあるのは、クライアントに正面から向き合うプロフェッショナルが多いからでしょう。上の立場の人たちがその背中を見せているので、若い社員も自然とそうなっていくんです。
一方、仕事だけでなくプライベートでも盛んに交流するウェットなところもある会社なので、ぶつかり合っても人間関係が悪くなることはありません。だから社内政治は必要ありません。
——山下さんも上司とぶつかったことがありますか。
山下:はい。先ほど紹介した国交省の調査研究業務の時も、どんな手法で研究を進めていくのかについては激しく議論しました。
それぞれがプロフェッショナルという自覚を持ってインプットを重ね、正しいと信じるやり方を主張する中で、私は計量経済学の手法で進めるべきだと押し通しました。それがこのプロジェクトの成功につながると確信していたからです。
日本総研は、一人一人のコンサルタントとしての信念やプライドを本気で大切にしている会社なんですよ。意見が衝突するのは当たり前。その中でもまれるからこそ、大きく成長できるのかもしれません。
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