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「現在有用なノウハウもすぐに陳腐化する」。本質的な問いにたどり着くために必要な姿勢とは

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よい答えにたどり着くには、よい問いが必要とされる。では、よい問いにたどり着く方法はあるか。『問いの立て方』(ちくま新書)の著者で、京都大学学際融合教育研究推進センターの宮野公樹准教授は、「現在有用とされているノウハウでもすぐに陳腐化する。そもそもなぜ、その問いがあるのかについて、考える必要がある」と指摘する。エンジニアや技術者にも共通する問いの立て方について、金属結晶学やナノテクノロジーなどを研究分野としていた宮野氏に聞いた。

〈Profile〉
宮野公樹(みやの・なおき)京都大学学際融合教育研究推進センター准教授
1973年生まれ。兼任で、国際高等研究所客員研究員、一般社団法人STEAM Association代表理事。専門は、学問論、大学論(元々は金属結晶学、ナノテクノロジー)。立命館大学卒業後、McMaster大学、立命館大学、九州大学を経て2011年より現職。博士(工学)。京大総長学事補佐、文部科学省学術調査官の業務経験もある。研究・イノベーション学会理事。前著『学問からの手紙』(小学館)は2019年度京大生協売上第一位。近著『問いの立て方』(ちくま新書)。

「いい問い」は成功者の体験談やハウツーからは学べない

――『問いの立て方』を書いた経緯を教えていただけますか。

宮野:もともと「問いとは何か」という根本を問う本を作りたかったという思いはありました。担当編集者からそのような提案をいただき、執筆を始めたのですが、問いの立て方を深く考えていったら、哲学的な内容となりました。当初考えていたのとは、大分異なる内容です。

最初から本の内容の設計図があり、それに沿うように書いていく作業は「研究」っぽいですが、僕はそのようにはできません。予定調和ではないというか、アート作品を作るように自分と向き合い、言葉を紡いで本にする。こっちの方が「学問」の在り方に近いのかなと思ったりします。編集者も「こんな本ができるとは思わなかった」と話していました。

――世間では、問いについて書かれた本はたくさん出版されています。

宮野:そうですね。Howを真剣に考えたらWhyやWhatにつながると思いますが、現在はHowに寄りすぎているように思います。単なるハウツーだけだと、激しい社会の変化への対応は難しいです。

――就職活動で結果を出すため、ノウハウや答えが必要と考えている学生もいるかと思いますが、いかがですか。

宮野:ノウハウが必要ないわけではありません。しかし、なぜその業種や職種、企業を選択し、どんなことを実現していきたいか、という根本的な問いを持たずに就職活動をしても、いずれ壁に阻まれると思います。重要なのは、ランキング上位の企業に入ることではありません。学生にとってあこがれの企業は時代とともに変化するからです。

社会全体でも頻繁に、ゲームチェンジする場面が見られます。現在有用とされているノウハウでも、すぐに陳腐化します。激しい変化に対応するためには、根本を押さえておく必要があります。

――「問い」といっても、さまざまな形がありますよね。

宮野:そうですね。質問、問題といった小さなものから、人生の課題、目標、テーマといった大きなものまで、さまざまな形があります。しかし、問いという点では共通しています。だとすれば、共通する「いい問い」も存在します。その問いにたどり着くため、問いそのものを問う必要があると考えています。

何が「いい問い」になるかは、企業の戦略策定や新規事業の立ち上げ、学術的研究のテーマ設定、授業や講義、ワークショップなど場面や状況によって異なります。しかし、それは、得てして場面や状況に応じたノウハウになりがちで、本書では、それら場面によらない「いい問い」とは何かについて考えたものです。

あるテーマについて議論すると、意見が対立して合意できず、平行線をたどることがあります。しかし、両者の意見が前提とする「そもそも」の領域について議論すると、両者に共有している考え方があるのが分かり、噛み合った話ができるようになります。

ある問いに対して、直接的に応答したり意見を考えたりするのではなく、その問いがなぜ生じたか、という理由を、「問いを問う」という形で考えることが重要です。

――とはいえ、ノウハウや答えを求めたくなります。

宮野:答えがあるかないかは、重要ではありません。人生には、正解がない問いが多いでしょう? 人生そのものが、正しい答えなど見つけられない問いです。生きているということは考えることそのものです。

そもそも、なぜその問いがあるのか、という問いが、いい問いを生み出す要因になります。場面や条件に依存せず、どのような問いにも共通する本質的な問いです。

いい問いは、成功者の体験談やハウツーから学べるものではありません。自分の内面を突き詰めることで自身の中に見つけるものです。そのためには、違和感を意識することが欠かせません。

違和感が生じるのは、自分の中の「基準」と異なるからです。基準とは、自分の中にある「考え」です。

違和感を感覚的に生じるものとするのではなく、感情的なのか論理的なのかを分析することで自分を丁寧に振り返ることができます。

自分自身に疑問を持ち、常に修正していく姿勢が必要

――宮野さんが、問いについて考えるようになったきっかけは何ですか。

宮野:金属結晶学や医工学に関するナノテクノロジーを専門領域として、研究で成果を出すため努力をしていましたが、いわゆる哲学には興味はありませんでした。とにかく研究を広めるため、論文執筆や競争的資金の獲得、特許の取得などを進めていました。その時の行為の主語は「私」です。

京都大学総長の補佐をするようになってからは、主語が「大学」に変わりました。文部科学省に出向していた時は、主語が「国」です。

3つの異なる立場を経験したことで「アンラーニング」ができたと思います。アンラーニングは「学習棄却」ともいわれますが、ここで言いたいのは、これまでの固定概念を捨て、新しく学び直すことです。

激しい環境の変化に対応するためには、新しい勉強を進めるだけではなく、従来の知識を捨てていく必要があります。研究とは何か、大学とは何か、という、そもそもの問いに興味を持ち始めたのは、この頃です。 

アンラーニングを進めるためには、自分が置かれた世界は狭いことを自覚する必要があります。自分自身に疑問を持って、常に修正していく姿勢が求められます。

――アンラーニングに関して、さまざまな活動をされていますね。

宮野:2021年に、一般社団法人STEAM Associationを立ち上げました。STEAMとは、Science(科学)、Technology(技術)、Engineering(工学)、Art(芸術)、Mathematics(数学)の頭文字を組み合わせた造語です。STEAM教育というと、5つの領域を対象とした理数教育に、創造性教育を加えた教育理念で、知る(探究)とつくる(創造)のサイクルを生み出す、分野横断的な学びです。

しかし、実は社団法人の目的は、STEAMそのものを振興することではありません。むしろ、「STEAMなるものを掲げて何を目指したいのか」を考えること、つまり結局、先に述べたアンラーニングと同じことなのですよね。そのために、研究者による研究者のための自分づくりと仲間づくりを行っています。現在、大学の研究者は、過度な業績競争やマネジメント業務などで、研究の道を志した頃の初心を思い出せない状況にあります。もともと何がしたかったのかという「問い」を持ってもらい、分野や世代を超えて、本質的な話し合いができる場にできればと考えています。

さまざまな分野の研究者と関わることで、自分の領域の狭さや、自分は無知であることを知る「無知の知」を認識してもらおうと考えています。

――コミュニティに参加できるのは、大学の研究者だけですか。

宮野:いえ。そういった問題意識を持っているなら、企業に所属している方でも参加可能です。

――企業向けワークショップ「京大100分野ワークショップ」も開催しています。詳しく教えてください。

宮野:企業が掲示する課題やテーマに基づいて、文系理系を問わず100の専門分野の京都大学の教員・研究者が集まり、開催しています。多くの企業が、新規事業についてアイデアがなかったり、戦略面での長期的な不安を抱えたりしています。そういった課題に対して、社会的に見て、新しい価値の提供を、学問の観点から支援できればいいと考えています。

――「社会的に見て、新しい価値」とは何でしょうか。

宮野:現状では理解されていなかったり、納得されていなかったりする価値観です。だからこそ新しいと言えます。歴史や文化、人文学、社会科学といった、さまざまな学問分野が結集して「そもそも論」から議論し、それをみんなで考えるってことです。
その課題は、枝葉ではなく、幹となる課題なのかを議論し、テーマ(問い)を設定します。この問いを見つけるためにかなりの時間と労力を使います。

また、既存事業について、さまざまな学問領域の観点から、そもそものその事業の価値を徹底的に議論します。

――答えが出るまで、時間がかかりそうです。

宮野:重要なのは、素早く答えを出すことではありません。事業の価値や本質について、真剣に考え、自分なりの考えを持ち、実務に反映するのが重要です。

自分の問いと、所属する組織の問いの整合性に納得感を持てるか

――技術者やエンジニア、ビジネスマンと問いの立て方は違うのでしょうか。

宮野:大きな違いはありません。重要なのは、その自分の問いと会社の問いの整合性です。そこに納得感がないと、頑張れないと思います。

整合性がないときの方法は、いくつかあります。まず会社を辞める。次に、自分の問いを会社に近づける。さらに、会社の問いを自分に近づける。

私の父親世代は、会社の問いの方が重要でしたが、現在は、自分の問いの方が重要です。問いを持つことで業務内容やパフォーマンスは、変わります。失敗でも成功でも学びとなり、納得感が得られるのではないでしょうか。

――問いを持つようにするために、学生がやるべきことは何でしょうか。

宮野:本当にこれでいいか、と自分自身を見つめる目を持ち続けることです。そのためには、よい友人とよい本との出会いがあった方がいいと思います。

何のために生きているのかと考えることも重要です。人間も動物なので、食べるために生きている側面はあります。しかし、人間は言葉を持っているため、必ず意味を考えてしまいます。学生時代には、それができる時間があります。

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