『経営プロフェッショナルの時代 ~「個の確立」なしに存在価値は生まれない』 BCG日本代表「杉田浩章」氏が語る、これからの時代を生き抜く力<前編>
2020/12/09
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1994年BCGに入社、2016年からは日本共同代表を務める杉田浩章氏。いま日本や世界で起きていることを元に、これからキャリアを築くにあたって重要になる考え方などをお話いただきます。
※本コラムは外資就活ドットコムにて開催したイベント「Job Discovery ONLINE」での基調講演の様子をまとめた記事の前編となっています。
後編:『経営プロフェッショナルの時代 ~「個の確立」なしに存在価値は生まれない』 BCG日本代表「杉田浩章」氏が語る、これからの時代を生き抜く力<後編>
- はじめに
- BCGに入社した経緯
- BCGに入って感じ、今でも大切にしていること
- BCGの歴史と現在のアジェンダ
- 今の時代に求められる力
- 日本の若い人材に起きていること
- 重視しているのは成長への飢餓感
- おわりに
はじめに
みなさん、こんにちは。
今日はこれからみなさんがキャリアを築いていかれるにあたってどのようなポイントが重要になってくるか、私なりの考えをお伝えしたいと思います。
今日のタイトルには、「個の確立」なしに存在価値は生まれない、とありますが、今は、個人として尖っていかなければ、自分の存在価値や社会への存在意義を発揮できなくなってくる時代です。そのような時代に、自分がどのような価値を発揮でき、チームでどのような役割が果たせるか、そこがはっきりするようなキャリアを積んでいくことについて、お話できればと思っています。
BCGに入社した経緯
どこまで参考になるか分かりませんが、私自身のキャリアについてお話します。
私は愛知県出身で、大学は東京工業大学に進みました。卒業後はJTBに入社しています。不思議なキャリアのスタートだなと思われるかもしれませんが、大学では社会工学科というところにいて、私が所属していた研究室では、人はなぜ旅にでるのか、観光地には一体どのような誘客要因があるのかといったことについて統計手法を用いながら解明していくことを研究内容としていました。そのご縁で、最終的にJTBを選択しました。
JTBに入社してから最初の3年半は海外旅行の企画営業を行っていて、その後、次世代の情報化戦略プロジェクトに携わっていました。その際に慶應義塾大学のビジネススクールに派遣という形で行かせていただきました。そのスクールでBCGのパートナーが講演をしていて、その後ディスカッションするような場もあって、それがBCGとの出会いでした。卒業後1年間はJTBに戻って働き、そののちにBCGに入社しました。
BCGに入って感じ、今でも大切にしていること
BCGに入って、一番はじめに洗礼を受けたのが最初のプロジェクトでした。
ある会社の業務改革プロジェクトだったのですが、お客さまからなかなか材料がでてこなくて、それを社内の打ち合わせでパートナーに伝えたら、顔を真っ赤にして「コンサルタントっていうのは、情報は自分で集めて、それを元に組み立てていくものである」「そんな気持ちでやっているのなら、コンサルタントはやめなさい」って言われてしまいました。
そこで初めて、プロフェッショナルとしての覚悟、ここでは自分が自立的にどういう突破力を持って問題解決にあたれるか、これがないとBCGの中には居場所が持てないのだと、痛感しました。
パートナーになってからも、企業の成長や大きな変革をお手伝いする機会に恵まれてきましたが、そこでも、企業の経営者にとって自身が役に立つ個としての存在でなければ、長期的なお付き合いはできないわけです。2006年には日本での統括責任者に、そして2016年からは日本代表をやらせていただくようになりましたが、今でも私の時間の使い方は、9割がお客さまに対しての仕事です。私自身はクライアントワークが大好きで、お客さまと一緒に将来を作っていくことに強い情熱がありますし、現役のコンサルタントとしてお客さまに価値を提供することに力を注いでいます。
BCGの歴史と現在のアジェンダ
簡単にボストン コンサルティング グループの歴史をお伝えします。
BCGは1963年に、その名の通りボストンで生まれています。1966年に2番目のオフィスとして東京オフィスが誕生します。現在ではボストンやロンドン、パリ、ドイツ、ニューヨーク、様々な事務所がありますが、2番目に東京のオフィスを作っている。これはこの時期に日本が高度成長期を迎えて、面白いことがたくさん起きており、日本にはこれからの世界を動かす何かがあるに違いないと、そういったことを考え決断したと聞いています。長年に亘りクライアント企業と共に大きな変革を遂げてきた東京オフィスは世界中から尊敬されるオフィスとなっています。名古屋に続いて、今年は大阪や京都にも事務所を開いたことで、日本国内には4つの拠点ができました。
今、BCGがお手伝いしている経営アジェンダは様々あり、切り口はいろいろとありながらも、会社全体の仕組みをどうデジタルに置き換えていくかというテーマが多くなってきています。これは日本の企業だけでなく世界中の企業が重要だと思っていることに他なりません。私がいまお手伝いをしているのもデジタルトランスフォーメーションによって抜本的に会社を変えていく、そういったテーマが多いです。
他には、時代に合わせた事業ポートフォリオのシフトといったテーマです。これは一気に変えられるものではないので、どういうステップを踏みながら会社全体の変革を成し遂げていくか、こういったお手伝いをすることも多いです。
こういったテーマの背景には、そのくらいの大きな変革をし、過去の成功体験を捨てなければ、企業として存続できない時代になっているということにあります。経営そのものにとってこれは非常に重要なアジェンダであり、われわれはプロフェッショナルとして、そういった企業を支援していくことこそ大変重要な役割だと思っています。
今の時代に求められる力
一方で、その変革もとても難しい課題です。大きな変革というのは、そんなにすぐ、たとえば4-5年という期間でできる話ではありません。
そうなると、今までの事業を再生しながらも、先の時代を見据えながら異なる時間軸でのアジェンダをどのようにマネジしていくかが重要な課題となります。どちらかにのみ意識を奪われてしまうと、自滅の道にはまってしまいかねません。
現業と変革をどのような形でバランスを取って進めていくか。この2つの側面を考えながら、どちらも最適なかたちで回していきながら変革を促す。これが経営そのもので、「今の戦いに勝つ」「明日の戦いに備える」両利きの経営をマネジメントする組織能力が、今の時代は重要だと思います。高度成長期とか、右肩上がりの時代とは全く異なるくらい、極めて難しくなっていて、長い時間軸を考えねばならない難しさ、自ら企業を変えていく胆力が必要になると、そう思っています。
日本の若い人材に起きていること
日本での就職活動意識調査を見ると、最近は安定している会社を望む人が増えていることが分かります。日本の企業が長期的な変革をしなければならないのに、その中に残るのは安定を望む人材になってしまう。いったんは挑戦的な人材が入ってきても、その企業の長期的な姿がクリアになっていないからか、あるいはリーダーシップになんとなく落胆してしまうのか、あるいは自らがこれはこれで楽でいいなと思ってしまうのか分かりませんが、結局は安定を望む人材しか残らなくなってしまっているんです。
企業側としても、社内公募制度などのいろいろな試みをやっているのですが、本当にリスクをとった人に対してインセンティブがあるかというと、そうではないのが現状ですし、新たな事業を作るところに踏み込んでいける人材が育てられる仕組みになっているかといえば、そうでもない。
そういった中で、個人の役割や能力をどう磨いていくのか。これが、みなさんがキャリアを考えていく上で重要になってくるポイントだと思います。
たしかに、大きないい企業に入れば、ある程度安定的なところまではいけます。でも、そうじゃなくて、自らが何らかのかたちで新たなものを生み出すんだ、そういう強い個になっていくんだ、とそういう気持ちで違った道を選択できるか。ここが、キャリア選択の特に初期に、非常に重要になってくると思います。
逆の言い方をすると、20代、30代と安定的に過ごして、そこから自身でチャレンジングな役割になろうとしても、これ大体なれません。若い頃にチャレンジできない人間が、年取ってからチャレンジできるわけがないのです。なので、みなさんがいま、どういった選択をするか、これが非常に重要なことだというふうに思います。
私は、個人としてこの時代環境の中で、自分がチャレンジすること、そして自ら何かを切り開いていくことに本気で取り組む覚悟があるのか、ここが問われているのではないかと思います。
重視しているのは成長への飢餓感
そのような中、BCGは成長への飢餓感を重要視しています。この成長は、ファームの成長と個人の成長を指します。
よく、そんなに規模が大きくならなくてもいいのでは、質を大事にしたらいいじゃないか、という議論を見かけます。質を守ることが重要な場合ももちろんあるのですが、われわれのような激しい競争の中で戦っている企業や、あるいは個人においては、成長し続けなければ、クオリティは絶対に高まらない。これが、われわれが信じていることです。
結局は、新しい環境の中で戦争に勝った者が残り、そしてさらにまた次の競争が始まっていく。そうしてどんどん新しいチャレンジが求められ、新たな価値を創造する人材が重要になってくる世界です。そんな世界で、もし自分自身が変わらず、今まで生み出してきた価値を守りにいく姿勢だけになってしまえば、相対的に必ず埋没していきます。自分の価値は消滅するのです。なので、成長への強い飢餓感がないと、個人としても、企業としても駄目だと思うのです。
そのために、個の確立、そして確立した個人がチームとしてどう連携しながら大きな仕事を一緒にやっていくのかを考える。そういったチームでは、尖った人たちの集まりなので、自分とは持っている強みの領域が違いますし、あるいは思想も違うかもしれません。そんな中で、それぞれの信念を持ちあいながら、一つの課題にチャレンジして解決していく。こういった柔軟性や多様性の受け入れ、これが大事な資質になりますし、こういう多様な人が集まり大きなチームが作れる組織は、大きなチャンスがあると思います。
BCGのPurposeは”Unlocking the Potential of those who advance the world”です。
これは、世の中で新しいチャレンジをする人たちが持っているポテンシャルを最大限に発揮してもらいたい、あるいは、BCG自身がそういった人たちが持っているポテンシャルをアンロックする場である、ということを意味します。BCGはコンサルティングファームではありますが、自らが成し遂げたいことを成し遂げられるような環境であると思っています。
おわりに
いろいろとお話してきましたが、結局、個の確立、自分自身が何に貢献できるのか、ここが示せない人間は、居場所がなくなっていきますし、埋没していきます。これを悲しいと捉えるか、やってやるぞ、面白い時代がきたぞ、と捉えるかはみなさん次第ですが、そういう時代になっているというのは私の見立てですし、みなさんには、ぜひ後者側で自分自身を磨いていってほしいなと思っています。
ぜひ、今の時代環境を見据えながら、個人としての自分の立ち位置や、誰にもない能力を身に着けながら、チームで大きなチャレンジをしていくような人材になってください。
私からの説明は以上でございます。ありがとうございました!
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