「ビジネスとは相手を動かすこと」。こう語るのは、自身のコンサルティング経験からビジネスの本質はそこにあると考えた、米系戦略コンサルティングファーム出身の松上純一郎さん。
松上さんはこれまで、提案内容自体の質は高いにもかかわらず、他人を動かすための効果的な伝え方ができない人を数多く見てきた。その経験から、ビジネスパーソン向けの資料作成講座を運営している。
今回は、その松上さんに図解資料の作り方を教えてもらった。ポイントは「型」を身につけること。計12の「型」を使いこなすことで、将来、多くの人を巻き込むプロジェクトを成功に導いてほしい。【丸山紀一朗】

外資就活ドットコムのユーザー向けに開催した「図解資料作成講座」にて話す松上さん
1. 「独り歩きする資料」を作ろう
1-1. 「プレゼン資料」ではない
2. 12の型を操ろう
2-1. 文字だけの箇条書き資料に「小見出し」を
2-2. 「基本」図解 6つの型
2-2-1. ◆練習問題
2-2-2. ◆解答
2-3. 「応用」図解 6つの型
2-3-1. ◆練習問題
2-3-2. ◆解答
3. 図解を使いこなすために
4. 関連書籍・セミナー紹介
目次
「独り歩きする資料」を作ろう
図解の「型」の話をする前に、なぜ私が資料の作成法を多くの人にお伝えしているかを話しましょう。
コンサルティングファームに就職する人は、働き始めてからクライアント向けの提案の場などで、直接的に役立つと思います。しかし、それ以外の方でも、ビジネスに関わる人なら誰でも、伝わりやすい資料の作成法は知っておくべきでしょう。
なぜなら、ビジネスとはすべて「周囲の他人に自分のことを伝え、相手に動いてもらうこと」だからです。例えば、上司に対して自分の意見を伝えて動いてもらう、クライアントに自分の提案を伝えて動いてもらう、といった具合です。
伝える内容、すなわち意見や提案そのものの質は、一般に社会人3年目までには上がってきます。しかし、それらを効果的に伝えるためのスキルは依然として足りていない。だから、実際には相手を動かせないのです。そういう人をたくさん見てきました。
だから私は資料の作成法を皆さんに教えています。ゴールは「独り歩きする資料」を作ること。
本来の意図とは異なるメッセージが広まってしまうという悪い意味での独り歩きではありません。資料を作った自分自身がいなくても他人に理解してもらうことができ、だからこそより多くの人を巻き込むことができる資料という意味です。
「プレゼン資料」ではない
また、ここが重要な点ですが、今回お伝えするのは「プレゼンテーション資料」の作り方ではない、ということです。プレゼン資料は資料自体には文字情報が少なく、イラストなどが多く使われます。主役はプレゼンターであり、資料の役割は視覚的な補助です。
対して、私がお伝えするのは「ドキュメント・コミュニケーション資料」の作り方。ビジネスの多くの場面ではこちらが使われるからです。あくまでドキュメントが主役となり、「独り歩き」してもらわなければいけない。すると必然的に文字量は多くなります。
しかし文字ばかりで埋め尽くすと分かりにくいため、「図解」を使うことでその分かりにくさを緩和し、読んでもらえる資料にする。これがドキュメント・コミュニケーション資料の本質です(下図参照:タップまたはクリックで拡大。以下、図はすべて同様)。
12の型を操ろう
さて、しかし現実にビジネスの世界に出回っているドキュメント・コミュニケーション資料は、文字だらけのものが多いです。なぜ図解を操れる人が少ないのでしょうか。
それにはいくつか理由があるのですが、今回はそのうちの一番大きな理由、すなわち「図解の“型”を知らない」という点にフォーカスしましょう。このあと、12の「型」をお伝えします。これだけ身につければ大概のことは何とかなります。
文字だけの箇条書き資料に「小見出し」を
「型」の話に入る前に、もう一つ「これだけ覚えれば何とかなる」というワザを教えます。それは、文字だけで箇条書きの資料に「小見出し」を付けること。理想は3文字くらいの小見出しですが、8文字くらいまでOKです。
これをやると、資料を見た人の目は最初に小見出しへ向かい、「まず内容をざっくりと理解」できます。小見出しが、資料の全体を理解するための「道しるべ」となるイメージです。これだけでも思いの外、効果があります。
「基本」図解 6つの型
そして、この「小見出し」が「型」の話につながっています。基本の図解には6つの型がありますが、実はその1つはすでに示しました。
箇条書きに単に小見出しを付けたものが、1つ目の型「列挙型」です。小見出し相互に関係性がありません。例えば「社内の課題」を挙げるときなどに向いています。ただ列挙するだけですが、シンプルで万能です。
2つ目の型は「背景型」です。これは原因と結果を表現します。一つの結果に対して複数の原因が考えられるとき、例えば「売上の低下」という結果の原因としていくつか考えられる背景を挙げる場合などに向いています。
3つ目の型は「拡散型」。一つの原因が複数の結果に拡散していくものです。例えば「インターネットの普及」により、ネットショッピングやネットバンキングなどの活性化につながったことを示す場合に使います。
「拡散型の逆」が4つ目の型「合流型」です。複数の原因が一つの結果に合流するものです。ここで、2つ目の「背景型」と同じだと思うかもしれませんが、「合流型」のポイントは過去から現在あるいは未来へと時間が経過していることです。
5つ目の型は「フロー型」です。各小見出しの間に時間の流れがある場合に向いています。例えば何かの「作業フロー」を説明するとき、それが1、2、3の順に行われるならこのフロー型を用います。
この各小見出しに時間の流れがあり、かつそれが循環している場合は6つ目の型「回転型」です。何かの「改善サイクル」を説明するときなどに向いています。
これらの基本図解は、資料の冒頭に使うことが多いです。なぜなら、議論の大枠を示すのに使いやすいからです。
◆練習問題
ここで一度、練習問題を挟みます。次の2つを、それぞれ相応しい型に当てはめて書いてみてください。計3分くらいでやってみましょう。
◆解答
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「応用」図解 6つの型
応用図解について説明します。応用図解を使う場面は「自分の主張を相手に伝えるとき」です。
伝わりやすい主張の仕方は、「何と比べて、どの論点で、どれくらい良い/悪い」を示すことです。例えば、「AはBと比べてコストの点で差があり、100万円安いからAのほうが良いです」といった主張です。これを効果的に伝えるのが、応用図解です。
また、応用図解には縦軸と横軸など2つ以上の軸が存在します。対して基本図解には、時間の経過など1つ以下の軸しかありませんでした。
例えば1つ目の型「上昇型」ですと、横軸が「時間」で縦軸が「改善・向上」です。時間の経過とともに何かが良くなっている・向上しているときに用います。
2つ目の型は「対比型」です。対比型は特に対照的な異なる2つのものを、複数の論点で比較するときに使います。
このとき、「論点」が2つの場合は、3つ目の型「4象限型」も用いることができます。4象限型は論点、すなわち軸が必ず2つである必要があります。また、描く円の大きさで、量や数を同時に表すこともできます。
4つ目の型は「マトリックス型」。これは比較対象が3つ以上あるときに便利です。例えば3つの異なるものを、2つの論点で比較する場合、コンテンツ数は3×2で6つです。これが6つから9つくらいまでならマトリックス型がいいでしょう。
このコンテンツ数が10以上の場合は、5つ目の型「表型」を用いたほうが見やすいです。
6つ目の型は「ガントチャート型」です。これは計画表や工程表を示すのに用いることがほとんどです。1列目に工程の大分類、2列目に中分類を記入することが多いです。
◆練習問題
それでは最後に、練習問題に取り組んでみましょう。次の2つを、それぞれ相応しい型に当てはめて書いてみてください。計3分くらいでやってみましょう。
◆解答
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図解を使いこなすために
さて、今回は図解の12の型を説明しました。この図解を使いこなせるようになるためには、練習問題で取り組んだような「文章を図解に変換する」という訓練を重ねる必要があります。練習の量をこなせば、図解を身につけられるでしょう。
私はPowerPointなどのツールの使い方についても教えていますが、それはあくまで後から身につければいい補助的なスキルです。本質は「型を知って使いこなす」ことですので、このコラムの内容をまずはマスターしてください。
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