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「新卒で役員」。そのプレスリリースの内容に驚いた人も多いのではないだろうか。XTech株式会社(東京都中央区)の子会社の役員として、慶應義塾大学の廣川航さんが参画。新卒は、一般の社員として企業に入るのが一般的だが、役員として入社するケースは、極めて少ない。その能力開発や、描いている今後のキャリア像について、廣川さんに聞いた。
――廣川さんの能力開発の基礎となっていることは何でしょうか。
能力開発ということでもないかもしれませんが、あげるとすれば、中学2年から始めた株式投資です。母や祖母が長期的な資産形成を目的に株式投資をしていて、馴染みがありました。
テレビでは村上世彰氏が立ち上げたファンドが積極的な株主提案をしたり、ライブドアが近鉄バッファローズ買収を表明したりと、興味深い事案が多くあったことも、株式に興味を持った要因です。このころから、「会社は誰のものか」などを考えていました。
いろいろな業界を数字で把握していることが評価
――株式投資をしていたことによる学びや習得したスキルについて教えてください。
大きく2つあります。1つ目は、様々な業界があり、様々な競合関係や隠れた名企業の存在を知ることができたことです。2つ目は、企業や業界の規模感や利益などを数字で把握できたことも財産です。XTechの西條晋一社長が評価してくれたことの一つが、この点なのかもしれません。
テクノロジーは手段であり、プラットフォームだと思います。なので、今後は既存産業×Techというのは増えてくると思います。既に、金融とテクノロジーを合わせた「FinTech」やヘルスケアとテクノロジーを合わせた「HealthTech」などが流行ってきていますが、今後他の領域にも広がってくると思います。
ですが、このように既存産業×Techを進めるに当たり、既存産業の理解は大切だと思います。そこで、これまでの株式投資をした知識・経験は、その業界にどんな企業があって、市場シェアがあって、利益率がどのくらいかなどを思い浮かべることができるので、少し強みな気がします。それが事業としてとか投資できるかとは別として。
――投資スタンスは決めていますか。
初めて投資した時は、現金や資産を持っている割に株価が安い「割安株」に投資する側面が強く、投資していたのも現預金を多く保有する建設会社などでした。もしかしたら、サブプライムショックの直後だったので、現金が沢山ある会社がいいなと思っていたのかもしれません。ですが、投資ファンドによる企業買収を描いたドラマ「ハゲタカ」を見て、企業が使い道の決まってない現預金をたんまり保有していることへの疑問も湧いてきました。
高校3年の時に参加したビジネスコンテストで、ベンチャーキャピタリストとお会いする機会を得た以降は、成長性の重要さを強く認識するようになりました。それまで、IT分野やベンチャー企業について、「なんとなく薄っぺらいな」と考えていました。しかし、ベンチャーキャピタリストといろいろお話をさせていただいているうちに、徐々に認識も「割安株」から「成長株」に変わっていきました。
「お金が余っているならベンチャー投資」。CVCに興味
――能力開発という点では、多くのインターンシップに参加されています。
初めてのインターンをした会社は、「企業のデータベースを作りたいから手伝ってほしい」という要望でスタートしました。なので、インターンというより、お手伝いという認識でした。
2番目のインターン先は、トーマツの子会社のトーマツベンチャーサポートでした。トーマツベンチャーサポートの(事業会社が、自社事業とシナジーを生みそうなベンチャー企業に投資をすることや、それを担当する組織である)CVCにとても興味があったからです。
大企業は、余らせている資金をベンチャー企業へ振り向ければいいのになあ、と以前から感じていました。日本のスタートアップは、事業会社が絡まないと、大規模な資金調達が難しいのが現状です。ベンチャーが大きな成長を遂げるには、莫大な資金が欠かせませんが、資金調達が難しければ、事業への投資も停滞し、成長にブレーキがかかる可能性があります。そのため、CVCを様々な会社で作っていきたいなと思って始めました。
いざトーマツベンチャーサポートに入ると、CVCというよりはFinTechに関するリサーチを行なっていました。すると、FinTech業界にいる外資系金融機関やコンサルティングファーム出身の方やMBAをとられているいわゆるエリートと言われる方々にお会いするようになりました。ハゲタカを見て、憧れていた私からすると、「なぜ辞めたんだろう…給料も高いのに…」と感じたことが何度もありました。
ただ、そういった方達とお会いしていると、なぜ彼らがベンチャー企業に来るようになったのかということが、なんとなくわかるようになってきました。自分は外資系金融機関やコンサルティングファーム出身ではないのですが、見ている限り、外資系金融機関やコンサルティングファームでの経験は、ベンチャー企業領域でも生かせると思います。
「役員」というのはあくまでも肩書き
――XTech子会社には、役員として入社しました。
特に「役員」ということを意識することはないです。0→1の段階なので、「役員」だから偉いとか意思決定に特化するわけではありません。現状、実務面に弱いので、アナリストやアソシエイトという肩書がしっくりきますが、役員というポジションは、「これまでのリサーチで終わっていたフェーズを早く脱し、事業を作ってポジションをとってやっていってほしい。」というメッセージなのかなと思います。
西條さんや手嶋さん(XTech Ventures共同創業者 手嶋 浩己氏)に入社するときに話したのは、将来的に自分が、「事業家兼投資家」になりたいということ。事業家だからいい投資ができるし、投資家だから良い事業を作れるのではないかという仮説を私は思っています。実際、西條さんと手嶋さんはそうやって良い事業を作ってきましたし、良い投資をしてきたのだと思います。
――どういうことを意識してやっていきたいですか。
大きく2つあります。
1つ目は、思考に限界を作らないこと。XTechに入ってから西條さんが話していて印象的だったのが、「100億円を与えられた時にどう動かすか、考えておいたほうがいいよ」ということです。0→1ということで、始めると目の前のことで手いっぱいになってしまい、視野が狭くなってしまいます。すると、小さいところで止まってしまう気がします。なので、思考に限界を作らず、「大きなお金が使えるようになるのにはどうすればいいか?そして大きなお金を使えるようになった時にどのように動くか?」ということを意識していきたいと思います。
2つ目は、ポジションを取ること。これはあるキャピタリストに言われたことです。ポジションを取るとは、「自分のオピニオンを持ってビッドする」と理解しています。これまでの自分は、リサーチでとどまっており、自分の意見を持つことや資金を投じることはありませんでした。ただ、起業か投資かに関わらず、自分のオピニオンを持たなければいけなくなるのではないかと思います。自分の意見を持ち、投資をすることは、リスクと責任が生まれますが、リターンを生みやすくなるのかなと思います。
プロフェッショナルになることが大切
――学生の就職先としてベンチャー企業の注目度が上がっています。
大企業とか、ベンチャー企業とか、そういう括りは、あまり意味がないかと思います。重要なのは、いつかプロフェッショナルになり、しっかりポジションをとって、「自分の名前」で食っていけるようになれるかどうかだと僕は思っています。そのプロフェッショナルになるにあたって、大企業とかベンチャー企業とかってあまり関係ない気が私はしています。
なので、もし大企業とベンチャー企業で迷っている人がいるならば、将来的にどうなりたいのか考えてから選ぶといいのかもしれません。
ただ、人生は短いようで長い気が私はしており、回り道はしても全然いいのではないかと思います。もしかしたら、今はその回り道だと思っていても、いつか役に立つことがあるかもしれません。
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