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「感受性」と「直観力」の時代へ “MBAの次”に来るアートやデザイン重視の世界とは?

アートやデザインがビジネスなどに及ぼす影響が大きくなっています。これまでの論理的・理性的なスキルに加えて、直感的で感性的なスキルの習得も不可欠になっているようです。企業や大学は、アートやデザインによる柔軟な発想や思考法を新規事業や改革に役立てようとしています。

2回連載で構成し、1回目の今回は、組織開発や人材育成を専門としているコンサルティング企業、コーン・フェリー・ヘイグループでシニア クライアント パートナーを務め、「世界のエリートはなぜ、『美意識』を鍛えるのか 経営における『アート』と『サイエンス』」などの著書がある山口周氏に、アートやデザインのビジネスへの影響が大きくなっている背景や、こうした社会で、若者が今後活躍していくために必要になってくるスキルなどについて聞きました。2回目は、国内外におけるアートやデザイン、ビジネスなどを融合させた取り組みを紹介します。

〈Profile〉
山口周(やまぐち・しゅう)
慶應義塾大学大学院文学研究科修了後、電通、ボストン コンサルティング グループなどを経て、コーン・フェリー・ヘイグループ入社。著書に「世界で最もイノベーティブな組織の作り方」「外資系コンサルの知的生産術――プロだけが知る『99の心得』」など。

 
2回目のコラムはこちら→エリートたちはどこで「感受性」や「直観力」を磨くのか〜アートやデザインで混沌とする社会に立ち向かえ

混沌とした社会に必要な「美意識」、今なぜ求められるか

――なぜ、ビジネスの世界でアートやデザインが重視されるようになっているのでしょうか。

山口:経営に対するリテラシーが上がっていることが背景にあります。以前はMBAを持っている人は少数でした。そのため、経営について知識や技術、スキルを持っていること自体が人や組織の差別化要因になっていました。しかし、MBA取得者が増えた現在では、それ自体は「定石」となりました。

定石というのは、みなさんが知っていること。定石を知っていることは差別化要因にはなりません。そうなると、いかに定石から外れるかが重要なのですが、定石からの外れ方にも型がないので、自分なりのセンスみたいなことが問われるようになってきました。センスの良し悪しで組織のパフォーマンスにも差が出ていると思います。

とはいえ、定石は必要です。定石を知り、知的なバックグラウンドを持つことで、意図的に型を外したり、定石から外すことが意味を持ってきます。

――グローバル企業の幹部が美術系大学院でトレーニングを受けていると聞きます。これはどういう背景でしょうか。

山口:「美」に対する意識を醸成していくと、ビジネスへの影響が出てくると考えているからです。最もわかりやすいのが、携帯電話です。日本にアップルの携帯電話の販売が始まったのは2007年です。アップルの携帯電話が出てくる前は、日本国内で販売する携帯電話はどれも似ていました。市場調査の結果を踏まえて、どのような形が顧客に好まれるかを正確に分析していった結果、どの会社の携帯電話も似た製品となりました。

見た目や機能がほとんど同じになるので、差別化要因といえば、価格の安さなどで、枝葉末節にこだわらざるを得なかった。そこへ、ほとんど市場調査をしないことで有名なアップルが、まったく新しい製品を投入をしたため、短期間で市場シェアのおよそ半分を握ることになりました。

マーケティングが悪いわけではありません。STP(セグメンテーション・ターゲティング・ポジショニング)という、マーケティングでは基本的な戦略を使って、経営学のセオリー通りにやっていました。しかも、高水準のマーケティングをしていました。いい加減にしたわけではない、教科書に書いてあることを極めて真面目に正確に高いレベルで実施したため、どの会社も同じような携帯電話を市場に投入することにつながりました。

論理的に考えた結果ですが、これはジレンマです。高スピードで正確にスキルレベルが高い人がマーケティングをすればするほど、同じような回答になる。スキルが高い人ほど競争力を毀損するという、非常にパラドキシカルな状況になっています。

ビジネスの世界で聞かれるようになってきた「VUCA」という言葉があります。もともとは米国陸軍が現在の世界情勢を表現するために使った言葉です。Volatility(不安定)、Uncertainty(不確実)、Complexity(複雑)、Ambiguity(曖昧)の頭文字を組み合わせた造語ですが、このような世界では、過度に論理的で理性的であれば、経営の意思決定を膠着させる可能性があります。

こうした混沌としている現在、意思決定をしていくには、センスやビジョンが問われ、これを形成するためには、美意識が必要になってきているのです。

――ロジックを駆使して、「定石」や「型」を作っていくのは重要ではないのですか。

山口:会社の成長ステージには、いくつかの段階があるので、型がないところに型を入れていく必要がある場合には、ロジックは非常に重宝をします。ですが、型が企業内にある程度浸透して、型から抜け出していかなければならない段階になったら、ロジックに偏重する方法論が解決できる課題は減ってきます。

コンサルティング企業が広告代理店やデザイン会社を買収している背景にはこうした状況があるのではないでしょうか。

アートが「主」、サイエンスは「従」であるべき

――直感的で感性的なアートと、論理的で理性的なサイエンス、どちらが重要ですか。

山口:両方必要で、どちらもないがしろにしてはなりませんが、アートが主である必要があると思います。自分が思いついた事業や製品を世に出すといったパッションがあって、どうすれば効率的に実用化できるか、市場に浸透できるか、を検討する技法としてマーケティングを位置づけるならいいと思います。

ですが、どういう製品を作り、販売するべきか、をマーケティングの枠組みで決めるようになってきています。これが差別化を難しくしている要因です。

やりたいことは、自分の感性や価値観から出てくるように思います。何をやるか、なぜやるかが主となるアートで、どうやるか、が従であるサイエンス。すべてがそろわないとビジネスは難しいでしょう。

――山口さんからご覧になって、アートとサイエンスのバランスがよい企業を教えてください。

山口:グーグルです。社員がAIの軍事利用に反対する署名を集めて経営陣に提出した結果、経営陣がAI憲章を作成、人を傷つけるためにAI利用はやめる、ペンタゴンとの共同研究もやめる、と決めました。一種の教養だと思いますが、科学技術に対するロマンとネガティブインパクトに関するリスクについて、慎重に判断しています。

AIは最先端技術であるため、経験を踏まえた判断が難しい。向かうべき方向性を決めるときに、一歩踏み出すよりも、長期的に、どういう製品やサービスを生み出していきたいかを決めてから、一歩踏み出す。グーグルは、こういう思考モデルで動いているように思います。

――自社製品やサービスを客観的に見ることは、難しいのではないですか。

山口:自社製品やサービスを一旦突き放して相対化する技術はとても重要です。自社製品やサービスだけではなく、目の前にあることや常識を相対化して、違和感や問題意識を持って、商品やサービスの未来像を描く。こうしたプロセスが、イノベーションを促すと思います。

――相対化をするために必要なことは何ですか。

山口:主観や物事を見るときの自分なりの「物差し」です。これを身につけるには、見聞を広げる必要があります。自分のなかにどれだけ広い時空間を持てるか。目の前の常識は他では通用しない、自分たちが最善な方法だと思っていることでも、他の文化圏の人が実施しているまったく異なる方法のほうがよい、などを認識することができます。

――美意識を重視し始めたとして、世界はどのようになっていくと思いますか。

山口:多様性が重んじられると思います。マーケティングによって結論付けた製品やサービスよりも、自分たちがよいと思う製品やサービスを提供することになるので、個性が反映されることになります。マーケットシェアを考えると、小さいかもしれませんが、どんな個性を持った人でも生きていけるという寛容さにつながると思います。

マーケットが細分化してくると、会社の規模も変わるでしょう。マーケットシェアを握る従業員が20万人の企業などは将来、歴史の教科書でしか見られないかもしれません。

小規模な会社が次々誕生して、働く人も複数の会社で仕事をする。会社が倒産したとしても、給与が減るだけで、新しい企業に勤めることができる。雇用の流動性にもつながるのではないでしょうか。

他人が作り出した幸福モデルを後追いする時代は終わった

――消費活動や生産活動、キャリア形成は、美意識を高めることで変わりますか。

山口:すでに変化しています。高額な車に乗って、高い服を着て、都心の高額なマンションに住む、というような、これが人生のゴールだと思い、拘泥するタイプ。一方で、こういうのはカッコよくないと考えるタイプ。

前者は消費欲や金銭欲など、後者は「意味」をドライバーにします。後者が増えれば、消費は促進されないため景気を刺激しません。ですが、若い人を中心として、都心には住まず、仲間とNPOを立ち上げるというエリートも出てきています。

彼らは、給与などいくらでも上げられるのでしょうが、年収を増やすことに喜びを感じてないのでしょう。こんなことをやっていても楽しくない、幸せになれるとは思えないといった感受性や直感力が鈍っていると、他人が作り出した幸福モデルを後追いするだけになってしまいます。

感性の鋭い人は、この先に自分の幸せはない、と感じ取れます。自分が何をやっているときに一番幸せか、常に問い続けた人が幸せになる最低条件です。

世間では幸福とされている生活モデルが、自分にとってはそうと限りません。例えば、ブルジョアの生活が描かれた海外の文学作品を読んで何を思い、何を考えるか。本当に自分にとって幸福なのはどんなことか。こういった思考ができるかどうかは、リテラシーの問題だと思います。

――ですが、感性の鋭さだけでは、幸福になれるとは思えません。

山口:確かにいくつか条件はあります。特に重要なのは、個人のスキルや能力、ネットワークや評判、信用です。こうした「資本」が企業内で閉じているかどうか。大きな企業に長期間在籍すると、企業内に閉じられ、退職すると、リセットされ、自分の「バランスシート」が薄くなってしまいます。

一方、同時に複数の企業で仕事をしていたりすると、企業の外に信用などが形成されるので、勤める企業が変わっても、バランスシートが目減りすることはありません。むしろ、企業を移るたびに、バランスシートが厚みを増す。キャリア形成のモデルも変わってきているのです。

「恩を仇で返す」でいい! 教養のないベテランから“脱出”せよ

――学生はどういうことを心掛けたほうがよいですか。

山口:自分が大事にしていることは何かを考え続けることです。人によっては経済的な成功かもしれません。しかし、経済的な成功は自分にとって幸福度を決めるそれほど大きな要因ではなかったと多くの人は気づきます。ただ、気づくタイミングが重要です。

大事にしていることや憤っていること、世の中になければいいと思うこと、などと仕事がリンクしてくると、幸福な仕事人生が歩めると思います。

若い人を見ていると、感情の振幅の狭さを感じます。すごく楽しかったり、怒っていたり、美しいと感じたりという経験が少ないのではないでしょうか。これらがないと、自分にとって大事なものなど判断できません。読書や映画鑑賞、旅行など積極的に出かけていくことで視野を広げ、心が動く体験をたくさんする必要があります。

ジョン・D・クランボルツ氏が「プランドハップンスタンス」(計画的偶発性)でも言っているように、予期しない出来事を待つだけではなく、作り出せるように行動をして、偶然をステップアップにつなげる。予定調和など通用しない世界で場数を踏む必要があります。

――入社する企業で意識すべきことは何ですか。

山口:大企業はお金がかかる研修などを実施して、人を育てる機能は優れています。3年くらいでやめるつもりで入社するのはいいと思います。リテラシーが身に付いたら小さな組織に移る。「恩を仇で返す」でいいんじゃないですか。3年でやめるつもりならば、やりたくない仕事をする必要はないです。こういう人が増えてくれば、面白いと思います。

教養がない50~60歳代が居座っている企業がありますが、こうした企業には近づかないことが賢明です。入社してしまった場合、自分の価値判断からすると、この人たちが言っているのは正しいかを見極めて、受け入れられなければ、「抵抗と脱出」が必要でしょう。

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