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sponsored by 経営共創基盤(IGPI)
「キャリアは“運”が9割」努力は報われる?
「キャリアを計画的に組み立てろ」と大人によく言われるだろうが、そんなものは嘘。一部の成功した人が後付けで言っているだけの、いわゆる「成功者バイアス」に過ぎないー。
経営共創基盤(以下、IGPI)取締役マネージングディレクター・パートナーの塩野誠さんは、キャリアの考え方についてこのように語ります。さらに、学生時代までは成功の要因として「地頭」と「努力」でその大部分を語ることができていたところ、社会人になると「運」が9割をも占めるようになるとも。
それでは、「運」が支配するこの世の中で、これから社会に出る皆さんが自らのキャリアをコントロールする術はないのでしょうか? 努力は報われないのか、そして仮に報われる可能性があるとしてもどのようなことに取り組めばいいのでしょうか?
あなたは世間や親による評価ばかりを気にして生きていませんか? 偏差値の高い大学で学ぶ皆さんほど、「他人が決めたエリート像」に依拠しがちです。「自分で自分の人生を決める、そんな新しいエリートになってほしい」と語る塩野さんに、未来の経営リーダーを目指す皆さんへのメッセージをもらいました。
少しの努力で「良い学生」になれる
――塩野さんがキャリアについて真剣に考え始めたのはいつですか?
塩野:誤解を恐れずにいえば、真剣に考えたことなんてないですよ、キャリアを決める要因なんて「運」がほとんどです。
よく、「こんなキャリアを歩むといいですよ」という大人がいますよね? でもそれってその人が偶然成功したからいえることであって、多くの人にとっては参考になりません。皆、本当は行き当たりばったりです。出世の一番の敵は「病気」だったりします。結局、健康な人が上に行けます。
――では、社会人が成功するための要素はどのように分解できるのでしょうか?
塩野:学生なら「地頭×努力×運」とまとめられるでしょう。社会人はこのうち「運」が9割くらいを占めているイメージです。
学生時代までは地頭が5割、努力が3~4割で、運が左右する割合は小さかった。社会人になると、優秀だったのに会社が倒産してしまうこともあれば、有名大学卒じゃなくてもベンチャー創業メンバーになって大成功をつかむこともある。どちらも運です。
――運の割合が大きいということですが、地頭や努力の部分で何かコントロールできる余地はあるのでしょうか?
塩野:グローバルな視点で比べれば、日本の学生の多くは全然努力しないので、少しの努力で一気に成功に近づくことができます。
例えば大学3年生とか4年生とかになっても皆、新聞を読んでいません。学生向けセミナーで講師をするときには必ず参加者に質問をするんですが、読んでいる人は100人中大体1人かゼロ人です。
就活中、電子版でもいいのですが、新聞を通しで読む人がいなくなっているということです。ニュースサイトとかで個別の記事単位で興味のある部分しか読まず、視野が狭い。世の中を概観的に大きく捉えられていないのです。ですから、新聞を通しで読むだけで内定が2社増えます(笑)。
このように少し努力するだけで、「良い学生ですね」といわれるようになる。今の経営環境では企業側は人手不足で採用に躍起になっていることもあり、グッと内定をもらいやすくなります。新聞で経済ニュースを読み、企業研究をするという努力はあなたを裏切りません。
――ただ、その内定先で幸せに働けるかどうかは別問題ですよね?
塩野:そうですね、幸せに働けるかどうかは「自分で決めたかどうか」によります。もしも「親や彼氏、彼女に良いと言われたから」とか「友達からの評判がいいから」という理由で会社を決めると、就職後に自分の期待値とのギャップに後悔することが多いです。
これまでも大学受験といった場面で意思決定をしてきたと思いますが、そこにはけっこう「親パワー」も働いていたでしょう。有名大学の学生ほど、例えば就職偏差値など世間の評判を気にしがちな傾向もあります。就職は人生においてほぼ初めての大きな自分での意思決定ですが、これを自分で決めないと社会の現実の前に幸せになれません。
伸びるセクター(業界)を見つけろ
――幸せなキャリアのために他にできることはあるでしょうか?
塩野:これから盛り上がる分野を見つけることでしょう。率直に言って、盛り上がるセクターに行けば「おこぼれ」にあずかれます。そのセクター自体が伸びていれば、そこにいるだけで自分も伸びる。逆にそのセクターが縮小していれば自分の勤務先も衰退します。
例えば1950年代や1960年代だったら、「これからは鉄鋼・造船だ」とか「やっぱり家電だろ」という話があったはずです。ただ、伸びるセクターというのは時代によって移り変わる。そしてその移行スピードもどんどん速まっている。
私が起業した2000年初頭、盛り上がっているのはインターネットの分野でした。今からインターネットセクターに行っても別においしいことはないじゃないですか。でも、盛り上がり始めたセクターに早めに身を置くと、私みたいなバカでも第一人者っぽく振る舞うことができますし、その産業自体の歴史を語れるようになる。そうやって“余韻”で生きていけるんですね。
ちなみに、あなたがすでにお金持ちだったらその盛り上がる分野に投資すればいい。何も自ら行かなくてもいいのです。でもお金がない若者は原資がないので、自分をそのセクターにポジショニングする。つまり自らがプレーヤーとして飛び込むしかないわけです。
――アンテナの張り方が大事ということですね。塩野さんから見て現在の最先端は何ですか?
塩野:はい、アンテナを張るのはすごく大事だと思います。しかも地頭が良い人でも多くの人がやっているわけではないので、これも頭一つ二つ抜けるためには重要なことです。
今最先端を走っている人は、例えば「バーチャルユーチューバー(VTuber)が意外とイケるんじゃない?」と話しています。YouTubeなど動画配信サイトで架空のキャラクターを登場させた映像を配信することです。編集や動画配信のコストが低いので一般の人の参入ハードルが下がっています。他にもスピルバーグの映画「レディ・プレイヤー1」みたいなVRゲームなんかも面白いですよね。
――そういった最先端を見つけるにはどうしたらいいでしょうか?
塩野:「好奇心を持ちましょう」って答えになっちゃうんですけど、無理に好奇心を持つのは難しいですよね。簡単なところでいえば、何か分からない言葉に出会ったとき、「いつでも検索できるから後で調べよう」ではなく、今すぐ調べて意味を理解しておくこと。たぶんこれだけで年収が上がると思います、他の人は調べないので(笑)。
AIで変わる「優秀」の定義
――「エリート」「優秀な人」「できる人」の定義はどう変わってきているのでしょうか?
塩野:外資就活ドットコムのユーザーのように高度に知的で、イケてる人間になりたいという人にとっては良い時代になっていると思います。ユーチューバー(YouTuber)もそうですが、個人でできることが増えていて、本人の意志さえあれば名前を売ることが極めて簡単にできるようになっている。
また、かつては重要視されていたハードスキルが「コモディティ化」しています。例えば「M&Aの契約ってどうやるのか」ということを知りたければ誰でも無料で調べられます。さらにお金を支払えば調べられないものはほぼない。会いたい人がいればTwitterでダイレクトメッセージを送ればすぐ会えます。ですから結局は、自分にどれだけ意志があるかがすべてなのです。
――人工知能(AI)の隆盛も影響があるでしょうか?
塩野:AIブームですよね。私が企業に「これからはAIがブレークスルーします」と言って、プロジェクトを提案しても、相手にされなかった2012年が嘘のようです。 今はAI関連プロジェクトだらけです。
AIには得意・不得意があり、日常の頻度が高いルーティン業務はAIがやってくれるようになります。そこで人間だけがやれることとして残るのは、クリエイティブな仕事や共感することになります。
お客さんと向き合い、言葉を交わす中で、課題を解決するためのスキームを生み出すクリエイティビティ。そしてお客さんと食事に行って、また一緒に行きたいと思われるような共感力。こうしたAIにはできない人間的魅力、すなわちソフトスキルの高い人材が「優秀」とされる時代へと変わっています。
それってけっこう残酷で辛い変化だと思います。なぜなら、ハードスキルは基準が客観的で「できるか否か」が分かりやすく、学習しやすい一方、ソフトスキルはいわゆる人間的魅力のようなものなので定型的なレベルアップが難しい。それでも後者で評価されてしまうわけですから。でも経営者を相手にするコンサルタントやM&Aのアドバイザーであれば人間的魅力は当然、必要ですよね。
――ただ、外資系投資銀行(IBD)や外資系コンサルティングファームでは入社当初はハードスキルを求められる気がします。
塩野:そうなのです。外資就活ドットコムのユーザーはそのあたりの業界を志望する人が多いので伝えたいのですが、IBDもコンサルも20代はExcelを使った財務モデリングや数的能力、細かいデータ収集や解析、スライド作成でミスをしないといったハードスキルが重要視されます。
しかし30歳くらいになると突然、外に出て営業やクライアントと対峙しなければいけない。するといきなりソフトスキルを求められるようになって苦しむ人が多い。その間の溝が大きく、相当なジャンプ力が必要なのです。しかし「コミュニケーション能力は抜群に高いが数字のミスが多い」といった若手は20代ですぐにクビになってしまいます。
ただ、今はハードの部分でマシンに任せられることが増えているのは事実。いくらハードスキルがあってもコミュニケーション能力や人間的魅力がない人がシニアレベルになると辛くなってくるでしょう。
「いつものメンバー」になれるキャリア作りを
――20代のうちにやっておくべきことは何でしょうか?
塩野:まず気を付けたいのが、私が「就活ゴール」と呼んでいる現象です。内定を獲得してしまうと、それがゴールになってしまい、その後に努力をしなくなることです。周りの人間が就活ゴールで努力をストップした後、自分の教養のために学び続ける時間に充てれば、学生時代の偏差値なんて関係なしに30歳でフル装備のスペックになれるのです。
自分のことだけを考えて仕事や、勉強ができる時間って意外とものすごく短いです。ライフイベントとして結婚や育児、親の介護が入ってくるかもしれない。それどころか、部下が一人できただけでマインドシェアを相当奪われます。「あいつ遅刻かな」と自分のことに集中できなくなる。
そうなっても大丈夫なように、私は「“いつものメンバー”になれるキャリアを作りましょう」と勧めています。例えば誰かが新しいビジネスを立ち上げるとき、声をかけられる人になっていようということです。
――「いつものメンバー」になるためには何が必要なのでしょうか?
塩野:ゼネラルなスキルは当然身につけておく必要があります。具体的には例えば会計やファイナンスの会話ができて、かつ英語ができればたいていの企業の経営企画部には移ることができます。
あとはやはり実績が必要でしょう。「アレをやった人」という名刺となる実績があれば、声がかかりやすくなります。誰かが何か新しいことをやるとき、大きな課題の解決を迫られているときに呼ばれるメンバーになろうと。そう考えれば、自ずと今から自分のために学ぼうと思えるはずです。
「新卒でIGPIがあったら入りたかった」
――もう一度学生に戻って就活するとしたらどうしますか?
塩野:起業ですね。もしも勤めるなら、新卒でIGPIがあれば入社したかった、というのが率直な答えです。なぜならIGPIでは投資銀行やコンサル、総合商社、ベンチャーキャピタル、広告代理店、メーカー、国家公務員、データサイエンスなど、各業界にある様々な仕事をする機会があるからです。
具体的には下記のような仕事です。
2.企業と企業を結び付けるM&Aや提携(証券会社・投資銀行の仕事)
3.企業再生やインフラ投資・運営など(総合商社の仕事)
4.ベンチャー投資や役員派遣(ベンチャーキャピタルの仕事)
5.大学の研究の事業化(公的機関の仕事)
6.官公庁への派遣(国家公務員の仕事)
7.AIを利用したビッグデータ活用(データサイエンティストの仕事)
――なぜさまざまな業界の仕事が経験できる環境が良いのでしょうか?
塩野:冒頭からのお話のまとめになりますが、よくいわれるキャリアの「ロールモデル」みたいなものは存在しない時代になります。これだけ雇用や事業が多様化し、盛り上がるセクターの移り変わりが激しいと、人生を同じ一つの会社の中で過ごすというのはほぼなくなります。
するとその環境の中で「いつものメンバー」となる、つまり声がかかるような人材になるためには、やはり世の中のいろいろなことを知らないといけないですよね。就活の場面ではまさにさまざまな業界・企業をフラットに見ることができるわけですが、一つの会社に入社した途端に「村人」となって視野が狭くなってしまうことが多いのです。
その点、IGPIは一つの企業ではありながらも、「プラットフォーム」として、さまざまな仕事を経験でき、今後盛り上がりそうなセクターを探すアンテナも張りやすいと思います。
――他のコンサルティングファームとの違いは何でしょうか?
塩野:外資系戦略コンサルティングファームはM&Aのトランザクションをやりません。それに外資系戦略コンサルって基本的に契約書を読むことがないんですよ。すなわち、戦略だけ立てるという上澄みの部分だけやっている。ですからM&Aのど真ん中の業務、つまり交渉や値付け、契約書作成などは投資銀行や証券会社にお願いしているのです。
一方で会計系のコンサルティングファームは社内で完結しているのですが、戦略立案はこのチーム、企業価値算定はこのチームといった具合に、担当が細分化されている。これだとクライアントサイドからすれば分野ごとに担当者が変わるのでコミュニケーションコストがかかりますし、社内でいうとどの担当チームが偉いみたいな権力争いも生んでしまいます。
ですから私たちIGPIは、難しいことではあるのですが、社内の一つのチームで最初から最後までをやり抜く体制を取っています。M&Aであれば戦略立案からM&A成立後の企業統合までをワンチームで担当します。そうすることで個人としてさまざまな産業やテーマをグローバルに経験することができ、ゼネラルな能力が備わった「経営リーダー」が育つのです。
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