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理系の研究室で培った数理的能力で、金融機関クライアントの課題を解決する「金融リスクコンサルタント」の世界とは? PwCあらたGRCアドバイザリー部門・伊賀志朗さんに聞く

〈Profile〉
伊賀志朗(いが・しろう)
PwCあらた有限責任監査法人 ガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部(FS-GRC)。
京都大学大学院情報学研究科卒業。
2010年4月、新卒として入社。
金融機関に対するリスク管理アドバイザリー業務に従事。

理系の大学生や大学院生の就職先としてすぐ頭に浮かぶのは、メーカーの研究員やIT企業などのエンジニアでしょう。しかしながら、数理的な思考能力を活かせる仕事は他にもあります。例えば、金融工学を駆使して金融商品の評価やマーケットの動向を予測する「クオンツ」や、統計的な手法を用いて保険の適正な掛け金や支払額を評価する「アクチュアリー」が知られていますが、最近注目を集めているのが「金融リスクコンサルタント」という専門職です。理系出身者が多く集まるというその職場では、どのような仕事が行われているのでしょうか。PwCあらた有限責任監査法人のアドバイザリー部門であるガバナンス・リスク・コンプライアンス・アドバイザリー部(以下、「GRC」という)に所属する金融リスクコンサルタントの伊賀志朗さんに、仕事の内容ややりがいについて語ってもらいました。

数理的な知識を生かしてリスクを定量化

――伊賀さんが所属しているGRCという部門では、金融リスクに関するコンサルタント業務を行っていると聞いています。具体的にはどんなことをするのでしょうか?

伊賀:金融機関のリスクを定量的・定性的に評価し、経営判断に生かすための仕組みづくりや高度化のアドバイスを行っています。具体的には、リスク評価のための数理モデル構築や計測システム導入の支援、さらにそれらを活用した経営管理プロセスの高度化等です。この場合のリスクとは、単に企業に損失を与えるものという意味ではありません。よく「ハイリスク・ハイリターン」と言いますよね。企業はリスクを取らなければ高いリターンは見込めません。リターンの源泉であるリスクをどうコントロールするのか。リスク管理の優劣が金融機関の実力・収益性を決定すると言っても過言ではありません。GRCは金融機関にとって非常に重要なリスク管理に関するあらゆるアドバイザリー業務を提供しているのです。

――金融機関を取り巻くリスクにはさまざまものがあると思います。複雑なリスクの定量化はどのように行うのでしょう?

伊賀:仰るとおり、リスクには様々な種類があります。例えば、デリバティブに代表されるような金融商品を考えましょう。金融機関は複雑な金融商品を多数扱っていますが、その価値は数学的な背景で計算されているものが多いんです。逆に言うと、将来どれだけの損失がどれくらいの確率で発生するのかも計算可能です。そこで、数学的な知識を生かしてリスクを定量化するモデルを構築し、リスクを定量化していくわけです。

――具体的には、どういうリスクがあるんですか?

伊賀:リスクには定量的に評価できるリスクと、定性的に評価するリスクがあります。私たちのチームは数理的な素養を持つ人材を活かして、定量的に評価されるリスクにフォーカスし、企業が適切なリスクとリターンをとれるようアドバイスをしています。

定量的に評価できるリスクの例としては、「市場リスク」、「信用リスク」、「オペレーショナルリスク」、「保険引受リスク」などが挙げられます。「市場リスク」は株価の下落等の市場価格の変動による損失を被るリスク、「信用リスク」は会社が倒産する等によって融資したお金が予定どおりに返済されないリスク、「オペレーションリスク」は内部・外部の不正や事務ミス等によって損失を被るリスク、最後に「保険引受リスク」は引き受けた保険の支払いが保険を引き受けたときの想定よりも大きくなり、保険会社が損失を被るリスクです。これらは、数学的なモデルを使って定量的に評価することができます。

――そうしたリスク管理は、数学的なモデルを用いるという点で、保険会社のアクチュアリーや投資銀行のクオンツの仕事と似ている気がします。

伊賀:アクチュアリーは確率論や統計学などの数理的手法を使って、保険の料率計算をしたりするわけですが、リスク定量化のモデルを構築するという点は共通していますね。ただ、我々は“保険引受”だけではなく、 “資産運用”についてもリスク管理の立場からアドバイスをしています。そのため、保険会社を構成する重要な要素である“保険引受”と“資産運用”の両方を統合的に管理するような大きなプロジェクトでの活躍が可能ではないかと思います。

クオンツについては、数理的なモデルや手法を使う点は似ているでしょう。ただし、クオンツは自社のための分析や予測が主な業務ですが、GRCは多数のクライアントに対して、将来のリスクを予測した上でアドバイスにまで繋げて経営課題を解決する点が相違点であり、同時に醍醐味だと感じています。

大学院では物理学を使って「同期現象」を研究

――ところで、伊賀さんは京大の大学院を出てPwCに入社したとき、金融や経済の知識はあまりなかったそうですね。

伊賀:全くでしたね(笑)。金融に関する勉強をしたのは入社してからです。

――大学では何をやっていたんですか?

伊賀:大学は工学部の情報学科、大学院は情報学研究科の複雑系科学専攻です。情報学といっても、数学と物理の知識を使って物理的な研究をする研究室で、「同期現象」を取り扱う数理モデルを研究していました。

――同期現象というのは?

伊賀:例えば、2つの振り子時計が同じ壁にかかっているとき、最初バラバラに振り子を揺らしたとしても、壁の振動でお互いに影響しあって、どこかのタイミングで2つの時計の振り子が同じ動きをするようになるんですね。これが同期現象です。似たような例は自然界にもあって、インドネシアにいる蛍は、数千匹の群れが一斉に光を発します。最初は光の点滅がバラバラなのに、だんだん同期していって、全体がパッと明るくなったり、パッと暗くなったりする。そういう同期現象を物理的に取り扱うのが「蔵本モデル」と呼ばれるもので、私はその研究をしていました。

――面白そうな研究ですね。でも、伊賀さんは大学には残らず、就職したんですよね。それも一見、研究とは関係がなさそうな業界に進みました。なぜでしょうか?

伊賀:研究職は良くも悪くも特殊な職業だと思います。適性として、自分は社会に出て働く方が合っているだろうと考え、就活を始めました。
また、研究とGRCの仕事とは一見関係がなさそうに見えますが、実際はそうではありません。研究で培った論理的思考能力は金融機関を取り巻く環境が年々複雑化する中で、金融リスクコンサルタントとして活躍し続けるために必須と言えます。

――就活ではどういう企業を受けたんですか?

伊賀:コンサルのほか、テレビ局や広告代理店、鉄道会社など、幅広く受けました。当時は、これからの30年以上の社会人としての人生で「これをやりたい!」というのが、決めきれていなかったんですよ。そのとき思っていたのは、毎日同じ仕事をするより、変化があるほうがいいなということです。コンサルは、プロジェクト単位で仕事をして、その都度、新しいテーマに取り組むので、面白そうだなと思ったんですね。

――結果、PwCに決めたのはなぜでしょう?

伊賀:何社か内定をいただいたんですが、それぞれの社員さんに会わせてもらい、実際に話を聞いてみたところ、PwCが一番自分にあっていそうだな、と。どちらかといえば素朴な感じで、等身大で会話ができました。また、自らGRCに配属を希望しました。ここに来た理由としては、理系のバックグラウンドを生かせる「専門性の高い仕事」ということが大きかったです。今後生きていくうえでも、手に職をつけるというか、リスク管理のプロフェッショナルとして深い専門性を身につけたほうがいいだろうと考えました。

クライアントから「ありがとう」と言われるのがやりがい

――金融リスクコンサルタントとして、普段はどんな業務を担当しているんでしょうか?

伊賀:今は4つのプロジェクトに関わっていますが、一番多くの時間を割いているのは、ある保険会社のプロジェクトです。将来の経済環境がどうなるか、会社の事業でどれだけの収益をあげられるか、資産運用をどのようにしていくのか、といった点について、総合的にリスクを評価して、経営判断に生かせるようにする、いわゆるERM(全社的リスク管理)に関するプロジェクトです。将来のリスクとリターンについて、数理的なモデルにもとづいた計算システムで「見える化」し、経営者が迅速に適切な意思決定をできるような仕組み全体を構築することが我々の役割です。

――仕事のやりがいを感じるのはどういうときでしょう?

伊賀:クライアントに「ありがとう」と言われたときです。特に覚えているのは、数年前に関わったあるプロジェクトです。私が資料作成からモデル構築まで、成果物の作成を全て担ったのですが、クライアントにすごく喜んでもらえたんです。プロジェクトの終了後にクライアントの役員の方に食事に招いていただき「伊賀さん、本当にありがとうございました」と頭を下げられたんですよ。当時、まだ20代だった私にです。今でもその時のモデルがその会社で運用されていると伺っており、自分が作った“モノ”がクライアントのビジネスに役立っている、ということも嬉しいですね。

――仕事の成果が評価されたのでしょうが、どこが良かったと思いますか?

伊賀:コミットメントの深さでしょうか。表面上だけじゃなく、その会社に深く入って最後まで付き合った。クライアントの方にもたくさんヒアリングして、満足してもらえる資料やモデルを作成しました。そこが評価されたのではないか、と思います。

――逆に大変なのは、どんなときでしょうか?

伊賀:やはり、プロジェクトの最終報告間近等の忙しいときですね。私の場合、最近子どもが生まれたんですが、共働きなので、週半分は早く帰宅して、子どもの世話をしています。17時に退社して、保育園に子どもを迎えに行き、子どもを寝かしつけた後に家で少し翌日の仕事の準備をする、といった生活を送ることもあります。

求められるのは「数学的素養を持ったジェネラリスト」

――仕事と子育てを両立させているんですね。一般的にコンサルタントというと、連日深夜まで働いているイメージがありますが・・・

伊賀:我々の部門については、そういうことはないですね。もちろんプロジェクトの性質や時期によって忙しいときもあるんですが、深夜まで会社に残って働き続けるということはありません。特に若手の人たちには、業務はできるだけ早めに切り上げて、自己研鑽のための勉強をきちんとやってほしいと思っています。仕事だけでは得られない知識もあるので、本を読んだり、社内の研修やセミナーに参加してもらったりしたほうがいいかな、と。

――伊賀さんの部署(GRCアドバイザリー部)は専門性が高いということですが、どんな人が多いのでしょうか?

伊賀:数理的なモデルを扱うので、理系の院卒が多いですね。数学の専門知識がある人が多いので、職場では「数学ジョーク」で笑ったりすることもありますよ(笑)。

――数理的な素養が求められる仕事が多いんでしょうか。

伊賀:そうですね。リスクの定量化モデルを考えるときは、数学や数式に対する勘所が重要になるので、数理的な思考能力が必要です。ただ、一方で、我々はクライアントの課題を解決するコンサルタントでもあります。理系的な専門性をベースとしつつ、クライアントの会社の中に入っていって、さまざまな利害関係を調整しながらプロジェクトを進めていかなければいけません。

その点では「数理的な素養を持ったジェネラリスト」であることが求められます。入社時点でそうでないとしても、仕事をしながらそういう存在になることを目指してほしいと思います。

――外資就活ドットコムの会員には「頭脳を使う仕事がしたい」という学生が多いんですが、仕事で頭はかなり使いますか?

伊賀:ムチャクチャ使いますよ(笑)。考えに考え抜いて仕事をしていますから。新しいことをどんどん吸収して、自分で考えていかないといけないので、知的に面白い仕事です。 ただし、「俺は頭がいいから教えてやるんだ」という考え方の人には向かないでしょう。クライアントのためにバリューを提供するのが根底にあるので、そこに注力できる人に来てほしいと思います。

――「金融リスクコンサルタント」という仕事は今後、社会の中でどのような存在になっていくでしょうか?

伊賀:銀行や保険会社などの金融機関は社会を支えるインフラですよね。それらに対して「リスク管理」という価値を提供してサポートするのが、金融リスクコンサルタントの社会的な意義だと思っています。大袈裟かもしれませんが、例えばリーマンショックのような金融危機が起こらないように、金融機関がリスクを適切に評価して、正しく判断できるようにしていく。そのことが、社会の人々の生活を守ることにもつながっているのだと考えています。

――金融リスクコンサルタントの重要性は増していきそうですね。

伊賀:はい。その重要性に比例して、我々のチームも拡大していくのだろうと思います。ただ、単純に人が増えるということではなく、専門性の高い人が集まって、それぞれが能力を発揮し、提供する価値も相乗効果で高まっていく、そのようなプロフェッショナル集団になっていくでしょう。伝統的なリスク管理の手法を踏まえつつも、それだけにとらわれず、常に新しいものを切り開いていく。そんな刺激的な世界が広がっていると思います。

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