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仕事選びは「義務感」でやらないほうがいい〜『なぜ働くのか』の翻訳者・田内万里夫さんに聞く

田内万里夫さん

「なぜ働くのか」。そんなタイトルの本がこの春、出版されました。米国の心理学者バリー・シュワルツが「人が働く根本的な理由」について書いた本です。さまざまな研究者の調査やビジネス現場の事例を紹介しながら、多くの人々は「お金以外の価値」に働く意味を見出していると説明しています。シュワルツのメッセージをどう受け止めたらいいのか、この本を翻訳した田内万里夫さんにインタビューしました。さらに、書籍の「版権エージェント」として働きつつ、画家としても活動する田内さんに、自身が「なぜ働くのか」を聞きました。

9割の人が仕事に「不満」を持っている

――この『なぜ働くのか』という本の中で、著者のシュワルツはどのような主張をしているのでしょうか?

田内:この本はTEDブックス・シリーズの一つなんですが、2014年にTEDで語られたシュワルツのスピーチが元になっています。TEDトークのタイトルは「我々の仕事の考え方は間違っている」というものだったのですが、この本でもシュワルツは「現代人の働き方は理にかなっていないのではないか」と問題提起しています。

アメリカの世論調査会社ギャラップの2013年の報告によれば、142カ国の正規・非正規雇用者23万人のうち、自分の仕事に対して積極的に関わっている人は13%しかいないそうです。世界で働く90%近くの人は、自分の仕事に対して消極的であったり、むしろ嫌っていたりするんですね。

――仕事に不満を持っている人がそんなに多いというのは驚きです。

田内:なぜ、そうなってしまったのか。そもそもの原因は古典経済学者のアダム・スミスの人間観にあると、シュワルツは言っています。「人は本来怠惰であり、お金のために働くのだ」というアダム・スミスの考え方が元になって社会が作られてしまっているからだというわけです。

でも、シュワルツは、お金以外の価値こそが重要だと主張し、仕事に魅力を感じて主体的に関わるというのはどういうことなのかを繰り返し語っています。たしかに人間は金銭的な対価がないと働かないかもしれないが、それが働く意味の核心ではないのだ、と。

――本の中ではいくつかのエピソードが語られていますね。

田内:たとえば、世界的なタイルカーペット会社であるインターフェイス社の例が挙げられています。同社の創業者でCEOだったレイ・アンダーソンが、孫の誕生を機に自分のこれまでの仕事を振り返ったとき、自分の会社は大量に石油を使って環境を汚染しているのではないかと思い至ったんですね。孫の世代に環境の悪い地球を残していっていいのだろうか、と。

彼は、2020年までに使用するエネルギーを減らし、再生可能エネルギーへとシフトすることで、環境負荷をゼロにしようと決心しました。そのためにどれだけ収益が落ちてもいいと覚悟したんです。しかし、実際は損失は生じませんでした。というのは、社員の働く目的が変わったからです。カーペットを作るという仕事を通じて地球環境に貢献していくのだと、各社員の「仕事の目的」の変換がなされたんです。

――仕事に新たな意味を見い出したんですね。

田内:目的の変更に伴って、組織のあり方や作業工程も見直されました。見直しのためには新しいアイデアを出さなくてはいけないので、上下関係にこだわらないで新しいアイデアを出せるようなムード作りがなされました。そういう環境で、社員のモチベーションが上がっていきました。社員が「自分の仕事には意味があるのだ」と感じて、団結しました。その結果、環境負荷を減らしても損失は生じないということが起きたんですね。

なりゆきで決まった初めての「就職」

――この本の翻訳を通して、田内さんが「自分の仕事」を振り返ることはありましたか?

田内:私にとっても「なぜ働くのか」は、常に自問するテーマでした。これまで進学も就職もなりゆきで決めてきたので、事後的に考える形ではありましたが・・・。

――仕事は、海外の小説などの版権を獲得して日本の出版社に仲介する「版権エージェント」ですね?

田内:そうですね。社会に出て以来、出版関係の仕事をしてきました。でも大手出版社など一部を除けば、金儲けの手段としては、必ずしも素晴らしい仕事ではない。私の場合は「読んでほしいと思う本を世の中に投じて、それに対するリアクションを確かめてみたい」という動機で、仕事に向き合っています。そういう仕事に巡り合えたのは運がよかったと思います。

田内万里夫さん

――仕事に就く前の学生時代は、どんなふうに過ごしていましたか?

田内:大学は、アメリカのテンプル大学教養学部に入りました。入学した1990年代はバブル経済の余韻があって、外資の大学が日本に校舎を出していたんですね。1、2年は東京で一般教養を取って、3年から学部を決めてアメリカに行きました。専攻(メジャー)が英文学で、副専攻(マイナー)がアートという「メジャー/マイナー制度」を利用しました。

――就職活動はどのようにしたのでしょうか?

田内:実をいうと、当時は将来の仕事についてあまり考えていませんでした(笑)。アメリカで思想や哲学を勉強する楽しさに目覚めてしまって。それまでは勉強に興味が持てなかったんですが、あるとき、大学の講義や本の内容がパッと自分の中に入ってくるようになったんです。意識が開いたという感じでしょうか。そこで、日本の大学院に進学してみようと思いました。

ところが大学卒業後、ヨーロッパを旅行しながら日本に帰ってきたら、すでに大学院の願書の提出日が過ぎていました(笑)。どうしようかと思いつつ、実家で過ごしていたら、ある朝、食卓の上に朝日新聞の求人の切り抜きと履歴書が置いてありました。海外の出版に関わる仕事があるらしいと知ったので、大学の卒論と履歴書をとりあえず送ってみたんです。

――本当になりゆきですね(笑)

田内:しばらくして「面接したい」という連絡がきたので、南青山の骨董通りにある会社に行きました。でも、あまり真面目に考えていなくて、アメリカから一緒に帰国したガールフレンドを連れて青山に行ったんですね。面接なんかすぐ終わるからそのまま遊び行こうと(笑)

そんな感じだったんですが、会社の面接では、ウィリアム・ミラーさんというスコットランド人の社長に気に入ってもらえました。ヘンリー・デイビッド・ソロー(19世紀の米国の作家)についての卒論に興味を持ってもらい、アメリカで少し覚えたインターネットのスキルも評価してもらえた。

面接のあと「もうちょっと話したいから飲みに行かないか」と誘われたので、「実は彼女を喫茶店で待たせてるんです」と答えると、「じゃあ、一緒にどうか」と(笑)。結局、三人で飲みながら話をして、彼女も感じがいい子だったので、そのまま採用されました。こういう就活もあるんですよ。

田内万里夫さん

「使命」のある仕事をするのが大事

――そうやって仕事を始めたということですが、田内さん自身は「なぜ働くのか」という点について、どう考えていますか?

田内:まず、「仕事=経済活動」と限定してしまうのは良くないと思うんですよ。「ライフワーク」という表現がありますね。私はいま、翻訳出版の版権エージェントをやりながら、絵も描いています。絵を描くのは趣味というより、ライフワーク的な取り組みだと考えているんです。

――田内さんは「マリオ曼陀羅」という名前で、独特の世界観を持った絵を描いていて、その作品は本として出版もされていますが、画家としての活動を始めたのはいつからでしょうか?

田内:絵を描き始めたのは2001年の10月、アメリカの同時多発テロが起きてすぐでした。ニューヨークには取引先の出版社が多いのですが、当時、社会の様相が明らかに変わっていました。

死と直面した社会というのでしょうか。皆が、人生において何のために時間を使わないといけないか、と考えていました。妥協せずにやりたいことを優先的にやらないと、いつ何が起こるかわからない。そういうムードの影響もあって絵を描き始めたんですが、やりだすと面白くなってしまいました。

――周囲の反応はどうでしたか?

田内:描いているうちに、面白がってくれる人が出てきました。そのときに考えたのは「5年やってみて目に見える成果があれば、もう5年、続けていいことにしよう」ということです。いろいろな巡り合わせが重なり、ギャラリーの経営者を紹介してもらったり、美術館のプロジェクトを任せていただいたりしたんですね。

そのあとも「5年のスパン」で考え続けました。いつも画材を携帯して、ミーティングの合間など暇さえあれば描いていましたが、いわゆる「仕事」と思って描くことはなかった。つまり、金銭を得るためにやったり、義務感としてやるということはなかったんです。

そうして昨年、絵を描き始めてから15年がたった。そのとき「もうこれは描き続けてもいいだろうな」と思ったんですね。

田内万里夫さん

――15年という期間をかけて、絵を描くことが「ライフワーク」と呼べるものになったということですね。就活生の中には「ライフワーク」を見つけたいと思っている人も多いと思います。何かアドバイスはありますか?

田内:「不安に感じることはないよ」と伝えたいです。義務感で仕事を選ぶ必要はない。就職も義務だと思わないほうがいいですよ。どのみち働かないといけないんですが、行った先のそれぞれでベストを尽くすことが大事だと思います。自分が獲得した環境において、何ができるかを考えてほしいですね。

シュワルツは『なぜ働くのか』の中で、義務や実績ではなく「使命」のある仕事が大事だと言っています。「使命」は英語の原文では「Calling」という言葉でした。自ら構築していくというよりも、ある声に呼ばれてそこに導かれていくというイメージです。

そのような「使命」は、どんな仕事にも見出すことができる。シュワルツはそう主張しているんだと思います。

田内万里夫(たうち・まりお)
1973年生まれ。テンプル大学教養学部英文学科卒業。1998年より翻訳出版の版権エージェントとして勤務する傍ら、2001年よりマリオ曼陀羅の名義で画家としての活
動を始め、国内外のギャラリー等で発表を行なう。『LOVE POP! キース・ヘリング展 アートはみんなのもの』(伊丹市立美術館、2012年)において、壁画プロジェクト「キースが願った平和の実現を願って」を担当。『心を揺さぶる曼陀羅ぬりえ』(猿江商會、2015年)ほか、イギリス、台湾で出版(イタリアでも出版予定)。版権エージェントとして働きはじめた日々を綴った小説『SUB-RIGHTS』をDOTPLACEにて連載中。

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