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はじめに
企業の合併や買収(M&A)は、企業が非連続の成長を実現するために欠かすことのできない重要な意思決定であり、新聞紙面を賑わすメガディールになることも多く、こういったM&Aに携わるアドバイザリー業務は、昨今学生にとって大変人気の職種となっています。
新卒から直接M&A業務に携われるルートとしては、真っ先に外資系及び日系証券の投資銀行部門が挙げられますが、M&AやM&Aを絡めたアドバイザリー業務に携われるルートは実はそれだけではありません。
4大会計ファームを中心にコンサルタントとは別に「ディールアドバイザリー職」を設ける動きが進んでおり、例えばプライスウォーターハウスクーパース(以下「PwC」)では、M&Aアドバイザリー業務を専門とするプロフェッショナルの積極採用を進めています。
ディールアドバイザリーとは、投資銀行が行うM&Aやグループ再編に関するフィナンシャルアドバイザリー業務(以下「FA業務」)、バリュエーション業務等を含めたディール・アドバイザリー・サービスに加え、戦略コンサルが行うようなM&A戦略の立案や合併後の統合作業(Post-Merger Integration。以下「PMI」)の双方を手掛けることができる職種であり、いち早くその面白さに気付いた学生が次々とエントリーしているのです。
具体的なディールアドバイザリー業務の内容は、①M&A、ディール戦略立案、②FA業務、③デューディリジェンス(事業、財務、税務に関する調査分析。以下「DD」)、④バリュエーション業務、⑤PMIと多岐に渡っています。また、PwCにおいては、①~⑤の提供も含む事業再生アドバイザリー、①②を主にインフラ分野で行う官民パートナーシップ(Public Private Partnership。以下「PPP」)サービス等も手掛けています。
本記事では、そんなディールアドバイザリーの実態について、M&A、事業再生、PPPの各事業部に分けてご紹介いたします。
プレからポストまで、M&Aディールを一気通貫で請け負う
ディールアドバイザリー業務の特徴は、プレディールからポストディールまで、M&Aの一連の業務を扱っている点です。
ディールアドバイザリー業務におけるM&Aの範囲(PwCの例)
このためマネジャークラスともなれば、財務分析・バリュエーション・モデリング・契約交渉・会社法・金融商品取引法等の法務知識・クライアントビジネスへの知見に至るまで、広範な知識・スキルが要求されます。
入社1~2年目の若手社員はこれらディールに必要な知見に急速にキャッチアップしなければならない上、当初からクライアントまたはM&Aの交渉の相手側との緊張感のある現場業務を経験することになり、目まぐるしい日々を過ごすことになります。
具体的な案件サイズとしては数十億円クラスから、大きいものだと兆円単位の大型M&A・企業再編まであり、近年では国境を跨いだクロスボーダー案件が増加し、ディールアドバイザーは自社の海外拠点や海外に所在する買収ターゲット企業と接する機会も多くなっています。
クロスボーダー案件では、日本企業と海外の企業の商習慣やカルチャーの違いによる摩擦がたびたび発生するため、先回りしてトラブルの発生を未然に防いだり、間を取り持つことに担当者は奔走します。
もちろん一気通貫の案件が全てというわけではなく、FA業務、DD業務やPMIのみといった案件もあります。これらの案件では、投資銀行やコンサル、M&Aブティック等と競合したり、逆に投資銀行からDD案件の依頼がくることもあります。
さて、こうしたディールアドバイザリー業務の魅力とは何でしょうか。現場担当者がよく口にすることをまとめると、主に次の3点です。
一つ目は常に自分を高められる環境であること。M&Aでは様々な業界に携わるため、様々なビジネスへの理解やディールに関する膨大な知見へのキャッチアップを始め、クライアントとの折衝や売手との契約書交渉など、気の休まるヒマはありません。
二つ目は、「時間をかければアウトプットが良くなる」仕事ではなく、限られた時間と情報の中で、シャープな視点・切り口をもとに高いパフォーマンスを出していく面白さがあること。
三つ目に、ディールは生き物であること。企業評価や財務理論上のロジックだけではなく、売り手側と買い手側の心理やそれぞれの立場での理屈を考えた、現場での駆け引きを含めたコミュニケーションや、買収ターゲット企業を含めたダイナミックなM&A市場を読む目利き(野生の勘、と表現するプレイヤーもいます)が実は大切な要素となること。
こういったことから、「いつまでも成長でき、また飽きの来ない仕事」と長くM&Aのプロフェッショナルとして活躍する方も多くなっているようです。
大企業、ひいては日本経済の救世主!? 事業再生コンサルの面白さ
ディールアドバイザリーの仕事の中には、事業再生も含まれます。
事業再生の業務はとても幅の広いものなので、多くは「再生に必要な支援全般」という形でプロジェクトが始まります。
一般的には、まずDDでクライアント企業の事業・財務上の課題を客観的に分析、その結果を踏まえた再生戦略を打ち立て、具体的な事業再建計画を策定します。
その後、計画を従業員や取引先金融機関、大株主といったステークホルダーに説明し、支援合意を取り付け、業績推移や施策の進捗管理・実行まで支援する、というのが一般的なフローです。
再生戦略の内容には往々にM&A(事業売却)やグループ会社再編も含まれるため、こうした事業再生もディールアドバイザリー業務に含まれています。
事業再生を依頼する企業の現場は、長引く業績不振によって過大債務を抱え、資金ショート寸前というような状況も少なくありません。他にリコール、食品偽装等のコンプラ違反、不正会計等の不祥事発生時への対応も再生案件となります。
クライアントは売上100億円規模の地方・非上場のオーナー企業から、売上数兆円の大企業まで業種を問わずありますが、とりわけ売上数兆円の大企業が倒産でもすれば、金融市場・日本のGDP・国や自治体の歳入への影響、万単位の失業者の発生…と経済全体に多くの負の影響が出てきます。そうした意味では、まさに日本経済すら救う仕事ともいえるでしょう。
そんな大役を担っているだけに、担当者はクライアントのビジネスへの知見・財務会計・M&A関連知識・税務・法務や労務まであらゆる知識が必要ですが、最も重要なことの一つは、高い目線を持つ「ブレない」アドバイザーとして振る舞い続けること。
事業撤退やリストラを自ら判断しづらい経営者に代わって、シビアな分析資料を経営会議に提出し事業撤退を冷静に提起する一方、従業員や子会社への説明会では会社のあるべき姿を情熱もって語り、再生へ向け協力を仰ぎたい金融機関・投資家を熱心に説得します。
そうすることで事業再生へ向かって、経営者の背中を押していくのです。
また事業再生案件の多くはマスコミの格好のネタとなりますので、情報漏えいが起こらないよう全コミュニケーション状況を把握し、情報をコントロールする役割もこなします。
そんな事業再生アドバイザーの醍醐味は、新聞紙面を賑わすような大規模案件に関わり、倒産危機から再生を果した際の達成感ももちろんありますが、それだけでありません。
生きるか死ぬかの「会社の歴史的な転換点」に立ち会う中で、社内のムードが一変し、今までくすぶっていた一社員が一念発起し新たな業績改善策を打ち出して周囲を鼓舞するなど、会社の底力が呼び覚まされるような変化が目の前で起きたりします。
一つのミスで倒産が迫るような緊張感の中で、そうした変化に立ち会える充実感がたまらない。そんな感覚をもった担当者も少なくないようです。
長期に渡るプロジェクト期間中は常に「有事」でありエキサイティングですが、やっと完了したら次の案件でもまた火を吹いている…事業再生アドバイザーは、そんな騒がしい日常を今日もタフに生き抜いています。
途上国開発から衛星まで、兆円単位のプロジェクトも多数!? PPPの全貌解明
ディールアドバイザリーの仕事の中でも、昨今注目度が高いのが官民連携プロジェクトのサポートを行うPPP・PFI(公共性の高いインフラ事業等の整備、維持管理運営を、民間資金の活用を前提に長期間にわたり、一体的に民間に委ねる事業形態)に関連する業務です。
人気の一番の理由は、何と言っても国内外の公共インフラ整備に関する問題解決に寄与できること。特に新興国では急速な経済成長の反面、財政事情は厳しく、公共インフラの整備が追いついていません。そこでPPPが課題解決の現実的ソリューションとして広がりを見せているのです。
具体例を見てみましょう。
チェンナイ・バンガロール産業回廊 開発マスタープラン
このプロジェクトは2011年12月の日印両政府の共同声明を背景としてJICAから依頼され、PwCはインドの主要都市チェンナイ―バンガロール間の産業回廊開発における戦略策定の一部を担っています。
具体的には、インドの南部地域を国際的に競争力のある投資対象に変革させるため、インドの中央政府や複数の地方政府と協働しながら重点産業開発地域(ノード)を3か所選定し開発計画を立案するものです。
こういった国家的規模のプロジェクトの多くは各国の政治的事情から完遂が難しくなる場合がありますが、プロジェクトの経済効果等を検証し実現性を高める上で、アドバイザリー業務の重要性が高まっています。
国内のPPP・PFI事業
また、国内でも、政府、地方公共団体の財政難が続く中、既存の公共インフラを利用して事業を営む権利(「事業運営権」)を民間に一定期間譲渡する「コンセッション事業」や、これまで実施事例が無かった分野でPPP・PFI事業が実施されるといった新たな動きが見られます。
例えば「コンセッション事業」については2兆円規模とも言われる新関西国際空港の運営事業、新たな分野におけるPPP・PFI事業としては、1,000億円以上の総事業費となる防衛省の通信用衛星の製造、打上、運用に関する事業など、規模の面でも画期的なPPP事業が目白押しです。
具体的な業務の中身を見てみましょう。
交通インフラ等、事業がキャッシュフローを生み出すPPPで重視されるのは、事業の経済性(収益性)や安定性(事業リスクの適切な官民分担)です。
こういった効果を最大化するために、事業を発注する立場である公共セクターに対しては適切な事業の枠組み作りの支援、入札事業に応募する民間セクターに対しては、高品質な提案策定の支援がアドバイザリー業務の中心です。
このため事業経済性分析力・プロジェクトファイナンスに関する知識・事業契約関連等ドキュメンテーション能力・事業スキーム構築能力・諸外国における制度/事業実施状況把握等の調査能力が求められてきます。
近年は中央省庁をはじめ、PPPをより活用するため、制度の拡充に関する検討といった業務、あるいはそうした動きにどのように対応していくか、ビジネス戦略をどのように立案、実行するかといった課題を抱える民間企業をクライアントとする、所謂「上流業務」が急速に増えており、コンサルタントとしての知見を求められるケースもあるようです。
全体のサービスラインについては下記の表をご参照ください。
PPPのサービスライン(PwCの例)
会計士、税理士含め100人をとりまとめる指揮者―投資銀行、コンサルとの違い
ここで改めて、投資銀行や戦略コンサルとディールアドバイザリーの違いを見てみましょう。
ディールアドバイザリーの仕事は、冒頭で述べたとおり、プレからポストまでM&A等のディールの一気通貫の支援が基本スタンスです。
このため、ディールアドバイザリーではプロジェクトマネージャーの下、マネージャー数名がコアメンバーとなり、国内外の多数のコンサルタント・会計士・税理士等を状況に応じてアサインしながらプロジェクトを進めます。規模によっては延べ100名を超えるチームとなります。
一方、投資銀行ではFAやバリュエーション・ディールアドバイザリー、コンサルティングファームでは戦略立案・事業DDやPMIと、一部の業務を切り出した短期タスクが中心となります。
何よりの違いは、単にM&Aを完了させる、また戦略提案や分析レポートを提出するのみに留まらず、ディールを通じてクライアントの損益構造や財務体質の改善、事業再編や、時には事業撤退までをサポートし、定量的な確固たる付加価値をクライアントに提供できる仕事であるという点でしょう。
おわりに
M&A、事業再生、PPPとそれぞれ業務に魅力のあるディールアドバイザリー。
クライアントの事業だけでなく、関係者の金融機関やステークホルダーの状況に至るまで、事業・会社の置かれた環境を全方位から俯瞰し、戦略立案から実務の実行までを支援し、クライアントの成長に貢献していくことができます。
分析や戦略立案のみ、あるいは実務や知識提供のみといった、限られたフィールドにとどまりたくない方にとって、非常に有用な職種と言えるのでないでしょうか。
【取材協力・プライスウォーターハウスクーパース】
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