
AI時代、税理士はどうなる? KPMG税理士法人はどう変わる? この先必要な「問う力」とは?
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2026/01/16
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世界的な税理士法人の一つであるKPMG税理士法人が、大胆な変貌を遂げようとしている。掲げるキャッチフレーズは、Tax Reimagined(税務機能の再構築)。強みとしてきた、企業のコンプライアンス(法令順守)をサポートする「守り」の税務機能を大事にしつつ、企業戦略を支える存在への転換を目指し、いわゆる「攻め」の要素を強化するという。
こうした変革の背景にあるのは、どのようなことか。また変革期のKPMG税理士法人において、職員にはどのような能力や意識が求められるのか。
KPMG税理士法人代表の宮原雄一さんいわく、特に重要になってきているのが「問う力」。その意味とは──。
※内容や肩書は2026年1月の記事公開当時のものです。
「税務=経営戦略」の時代へ。変革に対応するためのTax Reimagined
──KPMG税理士法人が打ち出しているTax Reimaginedとは、どのような戦略ですか。
宮原:直訳すると税務機能の再構築。KPMG税理士法人ではテクノロジーを駆使した総合的なアプローチで、企業のコスト削減、リスク軽減、品質向上、組織全体の戦略的価値向上の支援を目指しています。
具体的には、税務ポリシーを策定・更新する「税務トランスフォーメーション」、税務コンプライアンス業務を一元化・可視化する「グローバル・コンプライアンス・マネジメント・サービス(GCMS)」、定期的に海外子会社から情報を収集できる仕組みを構築する「税務テクノロジー」を通して、Tax Reimaginedを推進しています。
クライアントが適切な税務ガバナンスを構築し、グローバルな環境変化に対応できるよう、専門的かつ実践的なサポートを提供していく必要があるので、力を入れているところです。
──大胆な変化が必要な背景とは。
宮原:大きな背景としては、グローバル化、そしてそれに伴う国際競争の激化です。多くの日本企業にとって、これまで納税とは「社会的責任」の範疇(はんちゅう)を超えないものでした。つまり「法令を順守して納める」ことがゴールで、そこから何かを改善しようという発想が生じにくかった。
一方で欧米企業の基本的な考え方は、「税金=コスト」。経営戦略の一環で、税コストの最適化が重要なテーマに挙がりやすいのです。海外企業と競合する機会が増える中、こういった考え方の違いが、日本企業にとって不利に働くことが少なくない。だからこそ大きな変化、つまり「税務=経営戦略」という考え方へのマインドチェンジが求められています。
──なるほど。ではTax Reimaginedに基づく、クライアントに対するサポートの例を教えてください。
宮原:さまざまな支援をしているのですが、代表例の一つがKPMG独自のITプラットフォーム「Digital Gateway」の活用促進です。異なる国や地域にある拠点の税務情報を一元管理できるこのプラットフォームを活用することで、クライアントのグローバル展開を支えることができます。

宮原:従来、日本企業が複数の国や地域で事業展開する場合、各国・地域の拠点ごとに税務対応をするのが一般的でした。でもその場合、税務が経営課題として捉えられにくい。Digital Gatewayなら各拠点の税務情報を共通の品質・粒度で集められるので、本社主導の管理をしやすくなります。国際規制や関税に対応する機能を追加するなど、カスタマイズできる点もこのプラットフォームの特徴です。
──このような新しい取り組みを促していくため、クライアントへの向き合い方も変化していますか。
宮原:そうですね。これまではコンプライアンス対応など「守り」の部分が期待されることが多かったですが、今は経営戦略をアップデートする「攻め」の仕事も求められている。クライアントもわれわれも、変革期にあると捉えています。
AI時代の税務サポートで時間を多く割くべきなのは……
──新しいテクノロジーの導入にも力を入れているとのことですが、AIなどは税務をどう変えていますか。
宮原:税制について、誰でも簡単に情報を集められるようになっていますよね。例えばAIによる解説などを活用することで、企業においても一次的なリサーチは容易にできるようになりました。
結果として、「知っていること」の価値が少しずつ目減りしています。
われわれの仕事の話で言うと、かつては税制や税務について「知識を売る」ことでビジネスが成り立っていたのですが、今はそれだけでは不十分。ビジネスパートナーとして、クライアントの税に関する課題を一緒に解決していくことが、今まで以上に求められています。
──AIの活用という意味で、KPMG税理士法人としてはどのようなことを試みていますか。
宮原:例えば、会計上の過去と現在のデータを比較して現状分析や将来予測をする場面などで、AIをもっと活用しようとしています。これまでそういった場面では、税理士一人一人の経験則に依存することが多かったのですが、AIを使うことで経験の少ない若手でも高度な分析や予測ができるようになります。
──クライアントに対する支援の質が底上げされるほか、ほかの業務に割く時間を増やせるというメリットも生じそうですね。
宮原:その通りです。テクノロジーを用いることで分析や書類作成のような作業的な仕事は可能な範囲で効率化して、その分一人一人が「クライアントとの対話」にもっと時間を割くようにしていきたいと考えています。クライアントと対話を繰り返すことで、本質的なニーズが見えてくるし、革新も生まれやすい。ビジネスパートナーとして価値を提供していく上で、大事なことだと感じています。
──そのような変革が進む中、社員一人一人に求められる能力も変化していますか。
宮原:そうですね。これまでは、とにかく知識の量が重要でした。今求められているのは、まずは傾聴力。クライアントのニーズを正しく把握する上で、必須の力です。あとは、「問う力」ですね。
──問う力とは。
宮原:言い換えると、疑問を持つ力。例えばクライアントから案件をオーダーされた際、「本当にその内容で進めていいのだろうか?」と自分で考え問い直す力です。

宮原:元のオーダーの方向性が妥当なら、それに従って実行すればいいのですが、そうではない場合、よりニーズに即した方向性の提案をする。これができるか否かは、大きいと思います。
国際競争の激化やテクノロジーの進展、政情の不安定化などによって、先行き不透明な状況が続いています。クライアント側が迷いながらオーダーすることも多いので、問いを繰り返しながら「一緒に最適解を探る」力と姿勢のある人は、活躍できると思います。
KPMG税理士法人は「研修のクオリティー」が際立っている
──新卒で入社する人など、若手にはどのようなことを期待しますか。
宮原:若い世代は既に述べた傾聴力や問う力のほか、自己を表現する力や意欲も持ち合わせていることが多いので、クライアントとの対話などでそれらを発揮してもらえるのではないかと、期待しています。
一方で対話そのものについては、若いとあまり経験していない人も少なくないと思います。そのため、若手には、クライアントの元に赴いて話をする機会などを積極的に提供して、そういった生々しい場面・状況を数多く経験してほしいと思っています。
──なるほど。ところでグローバルな税理士法人の中で、KPMG税理士法人の特徴はどんなところにあるのでしょう。
宮原:入社を検討する人の目線で言うと、研修のクオリティーは際立っていると思います。入社時の研修についてはどの法人も力を入れていると思いますが、KPMG税理士法人の特徴は、職位が上がるときの研修も充実していること。ほかのファームを経験した人から、その違いを指摘されることも少なくありません。

宮原:それに研修内容は定期的にアップデートされて、陳腐化しないようになっています。経営サイドが「人=財産」という考え方で投資を惜しまないことが、こうした強みにつながっていると感じます。
変化する税務コンサルタント。「今新卒に戻っても、もう一度このキャリアを選択する」ほど面白い
──ではビジネス上の強みは、どのようなところにありますか。
宮原:クライアントとの対話力と、税務に関する専門性の両方をバランスよく発揮できる点ですね。どちらか一方に偏りがちですが、KPMG税理士法人は両方を追求する。対話を通じてクライアントの課題を正確に把握した上で、専門性を発揮しつつオーダーメード型で丁寧にニーズに応えていて、その点が評価されていると感じます。
──KPMG税理士法人に興味を抱いている学生に、伝えたいことはありますか。
宮原:誤解を恐れずに言うと、税理士という呼び名は、もう古いかもしれませんね。よりフィットするのは、税務コンサルタント。「税を切り口にさまざまな価値を提供する頼もしいビジネスパートナー」という意味で使っていますが、こうやって呼び名を変えた方がいいくらい、この仕事は大きく変化しています。
要は、税務の知識を提供するというこれまでの価値提供スタイルは残りつつも、課題解決の方法を共創するコンサルティング的な色合いが、もっと強まりつつある。実は1990年に新卒でKPMGピートマーウィック(現KPMG税理士法人)に入った際、このコンサルティング的な側面に引かれて入社先に選びました。
会計は万国共通の概念だし、税制は各国の政治・経済と密接に結び付いている。この領域の知識を身に付けつつ、得た知識を使って企業経営をサポートするのは、とても面白そうだと思ったのですよね。
実際、キャリアを重ねる中でそのような税務コンサルティング的な仕事を数多く経験することができましたが、今後はさらに機会が増すように思います。だからこそこの分野は、今とても面白い。今新卒に戻っても、もう一度このキャリアを選択すると思います。

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