「根底にはコーディングによる開発への苦手意識がずっとある」。こう話すのは、ソフトウェアエンジニア職で、メルカリをはじめ複数のメガベンチャー内定を得たAさん。Aさんは日本最高峰のエンジニアリング組織を持つメルカリに内定した一方で、周囲のエンジニアのレベルの高さには常に引け目を感じてきたという。
Aさんはどのようにソフトウェアエンジニアリングのスキルを伸ばし、どんなキャリア像を描いているのか。「小手先の就活対策は本質的ではない」と話すAさんの考えから、ソフトウェアエンジニア志望者が知っておくべきことの真髄が見えてくる。【北川直樹】
1. ソフトウェアエンジニアでの就職を諦めていたが、長期インターンで自信をつけた
2. 面接で話せるのは結局自分の技術経験だけ。小手先の対策は本質的ではない
3. コミュニケーション能力を生かした取り組みが評価された
4. メルカリで成功し、グローバルで日本のソフトウェアエンジニアの地位を上げたい
目次
ソフトウェアエンジニアでの就職を諦めていたが、長期インターンで自信をつけた
——プログラミングをはじめた経緯を教えてください。
A:大学1年ときで、情報系の授業がきっかけです。元々、高校の頃から数学が好きだったのですが、より社会に直接的に応用する領域で数学を勉強したくて、情報工学系に進学しました。はじめはプログラミング入門の授業で、Javaなどを触っていました。
——その後、どんなプログラミング言語を学びましたか。
A:2年に上がってからは、数理の実験でC言語やC++を使うようになりました。研究室に入ってからPythonを使っていました。
——授業外でプログラミングに触れることはあったんでしょうか。
A:2年生の冬ごろから参加するようになった長期インターンで、GoやRuby on Railsを使っていました。個人でプロダクト開発をしたことがなかったので、社会勉強もかねて参加しはじめました。
あとは、もともとアルゴリズムで問題を解くのが好きだったので、競技プログラミングコンテストのAtCoderをやっていまいした。AtCoderのレベルは緑と水色の間くらいで、LeetCodeも少しだけ触っていました。
——長期インターンにはどれくらい参加しましたか。
A:大学院に進む頃までに、1ヶ月以上のインターンには5〜6社程度参加しました。参加したのは主にメガベンチャーで、実務を経験できたのは良かったです。
——たくさん参加したんですね。
A:そうですね。私の場合、個人開発などのポートフォリオがなかったので、最初はかなり苦労しました。パレートの法則のようになっていて、優秀層にはどんどん参加のチャンスが与えられますが、そうじゃない人はそもそも長期インターンに参加すること自体の難易度が高いんです。
1社目に通ってからは参加への障壁が下がって、色んな会社で経験を積めるようになりました。
——その頃から、ソフトウェアエンジニアで就職することは考えていたんですか。
A:考えていませんでした。いくつかインターンに参加したときの所感に加え、周囲にいた学生のレベルの高さを痛感し、自分の能力では無理だろうと思ったんです。世の中にはとんでもなく優秀なエンジニアがいるなと……。この頃から、根底には常にコーディングによる開発への苦手意識があります。
それでもIT分野には関わりたいと思っていたため、自分の適性により合ったキャリアとしてIT系の技術営業職や、コーディングをしないIT技術関連職を考えるようになりました。
——周囲のレベルの高さとは、具体的にどんな部分のことでしょうか。
A:初期に参加したメガベンチャーでのインターンで、他の参加者のキャッチアップの速度と能力の高さを感じました。
私はわからないことがあった際、何から課題を解決していけばいいか分からず、メンターなど周囲のアドバイスを受動的に求めるだけの状態になっていました。一方で彼らは、自力で課題を解決し、どんどん前に進める人ばかりだったんです。
——そこから、ソフトウェアエンジニアを目指すことに決めた転機は。
A:メルカリの長期インターンです。非常にレベルの高い環境でしたが、自分の中でのブレイクスルーを通して、キャリア感を見直すことができました。
——詳しく聞かせてください。
A:それまでは多くのエンジニアリング経験を積んでいた一方で、自信を無くしてしまっていました。そこで、最後に能力よりもカルチャーフィットのある人に機会を与えてくれるメルカリのインターンにチャレンジしてみようと思ったんです。
当初は、日本最高峰のエンジニアリング組織を持つメルカリのインターンに参加すれば、自分の適性の有無に納得できて、これからのキャリアやIT業界への関わり方を見極められるかなと考えていました。
ですが、このインターンではメルカリが掲げるバリュー(*)である「Go Bold」精神のもと、分からないなりにでも能動的に課題に向かって行動することを、Pro(「Be a Pro」)のエンジニアが、「All for One」でサポートしてくれました。
*:ミッション | 採用情報 株式会社メルカリ
そして段々と自分も成果を上げられている実感を得ることができ、自分がここで働いて良いという納得感をつかめたんです。
——ソフトウェアエンジニア職には、どんな魅力を感じたのでしょうか。
A:一番はキャリアの拡張性です。メルカリのインターン中に社員の方と話す中で、中長期でキャリアを考えた時に、最初にソフトウェアエンジニアをするのが一番強く、その後の選択肢も広がるという話を聞いたんです。
先に上げたIT系の技術営業職についても、ソフトウェアエンジニアから転向するのはあると思うのですが、その逆は障壁が高いと。こういうことを聞く中で、ソフトウェアエンジニアになることの魅力をより深く知りました。
面接で話せるのは結局自分の技術経験だけ。小手先の対策は本質的ではない
——就活の選考対策はしましたか。
A:いいえ、就活向けに何かをしたということはなかったですね。自分がそれまでにやってきたことを整理して対応しました。
——過去の応募者の事例なども調べなかったと。
A:はい。ESや面接でそういった小手先の対策をしても、その先の選考でスクリーニングされてしまうと考えて、一切調べませんでした。結局語れることは自分の技術力に依拠するので、そういった過去の事例を見たところで意味がないと思ったです。
また、すでに就職している大学の先輩の話で、学生がそういったことを調べすぎているがゆえに、お互いのマッチを見定めることが難しくなっているという話を聞いたことがあるんです。これはお互いにとって不幸なことなので、自分はしないようにしているということもあります。
——ソフトウェアエンジニアの採用選考は、書類審査と面接に加え、技術面を見るテストもあると思います。どんな手応えでしたか。
A:書類と面接は、ありのままという感じで、自分がこれまでやってきたことの整理をして臨みました。面接で話したのは、それまでのインターンで自分がしてきたことについてです。
コーディングテストについては、もともと好きでAtCoderやLeetCodeを遊びでやっていたので、それが生きたと思います。特にテストに向けてなにかを特別に学習したということはないです。
あえて言うなら、選考対策のためにAtCoderなどをするのではなく、楽しんでやるくらいのマインドを持つことが大事だと思います。私の周りの優秀な人には、そういう人を多く見ました。
——メルカリをはじめ、複数のメガベンチャー企業から内定を得たということですが、どこに就職するかは迷いませんでしたか。
A:すぐに決められるものではありませんでしたが、最終的には迷いませんでした。私はメルカリで約半年間インターンをしていて、メルカリのエンジニアリング組織がどんなチームなのかをある程度知っていました。このことは、就職先を決める意思決定の上で大きかったように思います。
例えばインターンを経験せずに内定を得ていた他社の場合、内定を承諾しないとインターンに参加できない会社もあって、メルカリと同じレベルで自信を持って、飛び込んでいく意思決定ができなかったんです。
——なるほど。それは大事な指標ですね。
A:私がファーストキャリアで一番大事にしたいことは、中期的なキャリアを見据えた上でしっかりとした技術の型が学べ、それを担保できる開発環境があり、自分自身がユーザーの目線を持てるプロダクトを持っていることです。
メルカリのエンジニアは、年の近い先輩がどういう仕事をしているのか、一定の職位についた人がどんな働き方をしているのか、開発環境はどうなっているのかということがある程度わかっていました。また、実際に自分がメルカリを使っていたので、ユーザーを具体的にイメージすることもできたんです。
キャリアを積み重ねていく上でこれがとても重要だったので、自ずと答えは明らかになっていきました。
コミュニケーション能力を生かした取り組みが評価された
——複数の企業から内定を得た中で、Aさんが評価されたのはどんなところだと思いますか。
A:コミュニケーション能力でしょうか。企業のソフトウェアエンジニアは、個人でサービス開発をしているわけではないので、チームでプロダクトに向き合って仕事をすることが求められます。例えば、自分が今何をしていて、どこで躓いているかなど様々なことを、ドキュメンテーション等を通じて仲間に伝えていく能力が大事になるんです。
私はインターンを通してエンジニアリングの経験を他の学生よりも多く積んでこれたと思いますが、実力はメルカリの他の内定者と比べて高くないです。
しかし、チームで動いた時にしっかりと成果に結びつけることができているという部分が評価されたのだと考えています。
——そういったコミュニケーション能力は、どのようにして身につけたのでしょうか。
A:インターンに参加する中で学んでいったように思います。ある程度のエンジニアリング経験を積んだ頃に参加したインターンで、社員の人が親身に連日1on1をしてくれたことがあったんです。その時に自分から能動的に動いていくことの大切さを学びました。
チーム開発の経験を積む中で、どう立ち回ればうまく組織が回るのかを考えるようになったことが大きかったのだと思います。
——自分のことをアピールする上で大事なことはなんだと思いますか。
A:伝えたいメッセージをしっかり考え、自分のエピソードの中でしっかり語れることだと思います。面接する企業側が欲しいのは、面接で話されるエピソード自体ではなく、そこに含まれる思想や、強みの再現性だと思うんです。
この部分をしっかりと伝えられるように準備することが大事なのではないでしょうか。
——そうするためのアドバイスがあれば聞かせてください。
A:場当たり的な対策は意味がないので、なるべく早いうちから開発経験を積んでいくことをおすすめします。過去の積み重ねだけが自分を助けてくれると考えるからです。
個人開発ができる人はそれを進めていくのでも良いでしょうし、私のようにインターンを通して学ぶのも良いと思います。
メルカリで成功し、グローバルで日本のソフトウェアエンジニアの地位を上げたい
——ソフトウェアエンジニアとして、今後のキャリアはどのように考えていますか。
A:ソフトウェアエンジニアは1社で長く働く人は少ないと考えていて、そういうキャリアを考えた時に、どこでも戦っていけるエンジニアになれるかどうかが不安な学生は多いと思います。
実際に私もそう思っていて、その不安を補うために、特定領域のスペシャリストとして実力を担保した上で、マネジメントや育成の方向に進んでいきたいなとイメージしています。自分がこれまでお世話になってきた人にしてもらったことを、自分も提供できるような人材になりたいです。
これまで会ってきたエンジニアの人たちはそういうキャリアの人が多かったですし、エンジニアリングのスペシャリストになるのは自分よりも優れたエンジニアであるべきだと考えています。
——今描いている人生のビジョンは。
A:私はまだ日本のITサービスが世界に出ていって大きく成功した事例はないと思っていて、これをメルカリで実現したいです。それができれば、日本のソフトウェアエンジニアの地位がグローバルで上がることや、この業界にさらに優秀な人が集まって盛り上がることにつながると思うからです。
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