カギは「デジタルアシュアランス」。トーマツパートナーに聞く、監査法人の最前線

カギは「デジタルアシュアランス」。トーマツパートナーに聞く、監査法人の最前線

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2026/05/27

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デジタルアシュアランス。学生にとっては聞き慣れない言葉かもしれない。しかしながら昨今、このワードの存在感が増している。

「デジタルアシュアランスは、今や社会・経済を前に進める上で不可欠」と言うのは、有限責任監査法人トーマツのパートナーであり、デジタルアシュアランス事業部長でもある齋藤雅司さん。AI(人工知能)やクラウドなどが当たり前のように使われる現代社会を、安心・安全の側面から支えるのがデジタルアシュアランスだという。

注目を集めるこの領域の仕事とは、どのようなものか。どんなキャリアパスがあるのか。デジタルアシュアランスについて、グローバルをフィールドに豊富な経験・知見を持つ齋藤さんに聞いた。

〈Profile〉
齋藤雅司(さいとう・まさし)
有限責任監査法人トーマツ パートナー。
デジタルアシュアランス事業部長。
デロイト アジア パシフィック デジタルアシュアランス統括責任者。
トーマツ入社後、デロイトの北米事務所での業務経験を経て、現在はグローバルでビジネスを展開する商社、製造業、小売業に対する会計監査、IT監査、アドバイザリー業務などに従事。
米国公認会計士、公認内部監査人、公認情報システム監査人、CISSP、AAIA(Advanced in AI Audit)の資格を持つ。

※内容や肩書は2026年5月の記事公開当時のものです。

デジタル化が進展するほど、デジタルアシュアランスの社会的意義が高まる

──そもそもデジタルアシュアランスは、どのような内容を指しているのですか。

齋藤:一言で表すと、「ITシステムを第三者の立場でチェックして、そのITシステムが信頼できるものであると対外的に示す仕事」となります。

──このITシステムへの信頼を示す仕事は、学生には聞き慣れないものかもしれませんね。

齋藤:そうですね、その通りだと思います。学生には聞き慣れないでしょうし、イメージしにくいかもしれません。その認識の下、業務の内容、意義をより理解してもらうにはどうするかを常に考えていて、実は事業部の仲間と共に「われわれの行っている業務をもっと分かりやすくステークホルダーの皆さんに理解してもらおう」という話になり、『アシュアランス ステークホルダーを信頼でつなぐ』という本を出版しました。

──その本の内容にも興味があるのですが、まずはデジタルアシュアランスの必要性をもう少し理解したいです。

齋藤:デジタルアシュアランスの必要性が高まってきている社会背景を一言で言うと、「デジタル化が進展し過ぎて、そのプロセスがブラックボックス化されてしまい、もはや人間の目だけでは、生成されるアウトプットの信頼性を確認できなくなってきている」ということかもしれません。ERP(統合基幹業務システム)もそうですが、クラウド、AIなど、企業が活用しているあらゆるデジタル技術について同じことが言えると思います。

──確かに、デジタル化が進展する中で、ブラックボックスの領域が拡大していることは重大な社会課題ですね。

齋藤:その通りです。もしブラックボックス領域に対して、社会全体でチェックしていく機能が存在しないとどうなるか、反証的に話をします。

例えば、企業が知らぬ間に不正確な数値をステークホルダーに開示してしまったとしたら、結果としてその数値が正しいとして意思決定をしたステークホルダーに多大な被害をもたらしてしまうかもしれません。

また、企業がデジタル活用で利用している個人情報や機密情報が知らぬ間に漏洩(ろうえい)してしまい、結果として大きなコンプライアンス違反を起こしてしまうかもしれません。

さらには、こういった不祥事のニュースを知った企業経営者の中には、自社でも同じような事態が発生して経営責任を問われることを恐れるあまり、デジタル技術の活用推進に躊躇(ちゅうちょ)してしまう人もいるかもしれません。

──昨今、企業のデジタル活用に関連した不祥事が、ニュースとして取り上げられる機会も増えていますね。

齋藤:そういった状況下において、もし企業がデジタル活用を進める中で生じたブラックボックスの領域におけるリスクと管理体制を、可視化する社会的な枠組みがあったらどうでしょうか。デジタルアシュアランスというのは端的に言うと、まさにこの社会的な枠組みのことになります。

デジタル化の進展によりブラックボックス化しやすいERP、クラウド、AIに内因するリスクとそのリスクへの対応状況を可視化し、ステークホルダーとも共有される枠組みです。これにより、情報システムから生成された財務情報などが信頼性を伴ってステークホルダーに開示できるようになり、ステークホルダーもさまざまな意思決定を安心してできるようになる。そういった枠組みを、われわれは社会に提供していきたいと思っています。
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──デジタル化が進展すればするほど、デジタルアシュアランスの社会的意義が高まるということですね。

齋藤:出版した本の中では、あえて概念的に「デジタル社会が進展すると、経済学的に言う情報の非対称性が発生しがちになる。われわれは、その情報の非対称性を解消するための信頼を付与し、ステークホルダー同士が安心して、意思決定できる、つながることができる、そういった社会の枠組みとなっていく」としています。

これは、監査法人であるわれわれが社会に対して果たすべき役割でもあり、またデロイト トーマツ グループの存在意義として共有されている「私たちは誠実であることを掲げ、信頼と信用を築き、社会に貢献していく」というメッセージにも合致していると考えています。

──この社会的意義のある領域でキャリアを築いていくことも、有望な選択肢の一つになりそうですね。

齋藤:デジタル領域において、社会へ貢献するためのキャリア設計のパターンは複数あって良いと思いますし、また、あるべきだと思っています。デジタルの戦略立案を専門としてキャリアを歩むことも素晴らしいですし、またデジタルの実装を専門としてキャリアを歩むことも素晴らしいと思います。併せて、今後デジタル化が進展していけばいくほど、デジタル化に対して、第三者的に安心を提供する仕事は間違いなく必要になっていきますし、このキャリアを歩む専門家は、マーケットの中での希少性がより高まっていくと思っています。

トーマツのデジタルアシュアランスだからこそ実現できるキャリア

──デジタルアシュアランスについて、またその社会的意義について理解できました。では、トーマツでキャリアを構築することのメリットについても教えてください。

齋藤:トーマツでデジタルアシュアランス業務を行うことによるキャリアとしてのメリットという観点で、3点ほど話をさせてください。まずは、一つの組織で「IT監査とITアドバイザリー業務を一体運営している」点です。

われわれの祖業である会計監査業務におけるIT監査での品質の徹底・向上は、トッププライオリティ事項だと考えています。IT監査の品質を高めていくには、企業が活用するAIなどのエマージングリスクに対応した手続きの実施が必要となります。

ただし、IT監査だけに従事しているとエマージングリスク領域の知見が、タイムリーにキャッチアップできないこともあります。そこで、AIガバナンスに関するITアドバイザリー業務も同じ組織で提供する体制を整備することにより、企業がAIを活用した際のリスクに関する知見を深めるとともに、その知見をIT監査業務に活用できるようにしています。

この枠組みによって、組織としてのメリットが生じるだけではなく、メンバー一人一人が、最新のエマージングリスクにも対応できるIT監査人になり、プロフェッショナルとしての価値を高めていくことにもつながると思っています。
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◇2026年6月より上図の体制へ

──確かに、一つの組織でIT監査とITアドバイザリーの双方を提供できることが社会のためにも個人のキャリアのためになるのであれば、良い枠組みですね。

齋藤:2点目は「デロイト トーマツ グループの連携による知見の獲得」です。われわれの強みはコンサルティング領域、リスクアドバイザリー領域、サイバー領域において、マーケットからも一定の評価を得ている合同会社デロイト トーマツの仲間がいることです。この仲間と共にアドバイザリー業務を実施する機会も多くあり、デロイト トーマツ グループ内でさまざまな知見を獲得できます。もしキャリアとしての希望があれば、グループ内でのキャリア転換を行うことができる点も、特徴の一つとして挙げられます。

そして3点目は、「グローバルフィールドでの活躍」です。何と言っても、われわれデロイト トーマツ グループの特徴は、グローバルで一定のビジネス規模を有するデロイトの一員であるということです。

当然ながら、グローバルでのさまざまな最先端の知見を持ったメンバーとつながることができ、多くの物事を吸収できる環境にあります。それだけではなく、キャリアとしてもグローバルのフィールドで活躍する機会が多くあります。

実際に、私も20代の時にデロイトの北米事務所に赴任し、貴重な業務経験を積むことができました。そして今も、デロイトのアジア太平洋地域において、IT監査とITアドバイザリーを推進する組織の統括責任者を務めており、アジア各国の専門家とつながりながら、クライアント、マーケットに最善のサービス提供を行える体制を築いています。
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齋藤:3点挙げましたが、共通して言えることはクライアント、マーケットの期待に応えるための組織としての枠組みであると同時に、今後マーケットから求められるプロフェッショナル像を実現する中で、個人としてのステップアップにも活用できるという点です。そのための機会を、トーマツは入社してくれた人に提案・提供できると考えています。

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採用したいのは向学心が旺盛で、何かに没頭できる人

──齋藤さんも、新卒でトーマツに入社したそうですね。

齋藤:そうなんです。私自身も、実はIT監査を自らのキャリアの第一歩として考え、トーマツに入社して今に至っています。

──どのような点に引かれたのですか。

齋藤:まずグローバルという点では、世界的なファームのグループなので希望する経験を得られる可能性がある。それから、自分に欠けていた専門性については、会計監査やITという世界共通の領域で知見・スキルを会得できるのが魅力だと感じました。

これらの領域は国内外で資格の枠組みが整っているので、勉強した成果が証明書という形に残って、対外的に発信できるのもポイントです。実際、私は国内の資格だけでなく、入社後に米国公認会計士、CISA(公認情報システム監査人)、CIA(公認内部監査人)やCISSPの資格も取得できました。実は、この年になってもまだ勉強を続けており、今年に入ってからAAIAというAI監査人のグローバル資格にもチャレンジして、取得できました。これからも、私自身が率先して多様な専門性の会得にチャレンジしていきたいと思っています。

──齋藤さんが長らくトーマツで働き続けていることについて、デロイト トーマツ グループのカルチャーも影響していますか。

齋藤:そう思います。グループ全体で相互尊重の意識が強い人が多い印象です。互いに仕事の進め方や専門性に対してリスペクトし合う感じなので、居心地がいいんです。

──その中でも、新卒から入って、組織のリーダーを担当している点が興味深いですね。どのような新卒人材を採用したいと考えていますか。

齋藤:向学心が旺盛で、何かに没頭できる人ですね。会計監査やITのバックグラウンドがあるとなお良いですが、それは必須ではなく、とにかくいろいろな知識を吸収し、社会に貢献していきたいという気概を持っている人にチャレンジしてほしいです。

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国際的な連携機会も豊富。多様なキャリアパスがあるトーマツ

──トーマツのデジタルアシュアランス部門に新卒入社した人は、どのような業務から任されることになりますか。

齋藤:入社後2〜3年は、先輩職員のサポートを受けながら、現場でIT監査業務をしっかり習得してもらう形になります。経験を積んでいく中で、ITシステムが業務プロセスのうちでどのように活用されているのか、また、企業はどのようなITリスクに直面し、それに対応するためにどのようなガバナンスを構築しているかについて習得できると思います。

その後、段階的に裁量が増していき、IT監査をさらに深めるのも良いですし、ITアドバイザリー業務にチャレンジする人もいます。また、海外の事務所へ派遣される人や、デロイト トーマツ グループの他のビジネスに異動するケースもあるので、キャリアの選択肢は多岐にわたっています。

──トーマツのデジタルアシュアランス部門に新卒入社した人のキャリアパスについて、どのように考えていますか。

齋藤:さまざまな可能性があると思います。私のように有限責任監査法人トーマツの中で、一定のマネジメントロールに携わる例もあれば、AI分野を極めているパートナーもいる。サイバーセキュリティの専門家になる道もあるし、コンサルティングに興味があればグループ内のコンサル部門に移る選択肢もあります。

デロイト トーマツ グループではアジア パシフィックの統括組織が一体運営をしているので、国際的な連携の機会も豊富にあります。私が現在担当しているような、リーダーロールを目指していくのも良いですし、グローバルなキャリアを目指す人にもフィットするのではないでしょうか。多様なキャリアの可能性・選択肢がある点は、トーマツを就職先に選ぶメリットの一つだと感じています。
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