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「外資系」といえば必ず付きまとうのが「英語」。優秀な外資就活ドットコムのユーザーの皆さんの中にも、英語に苦手意識がある、読み・書きは得意だけどしゃべれない、といった方は少なくないのではないでしょうか。
そんな外資系トップティア企業の一つとされるモルガン・スタンレーに、TOEIC380点で内定した先輩がいます。その先輩、小茂鳥雅史さんは、子どものころから一貫して英語が嫌いでしたが、同社を2年で退職後、自ら英会話教室「スパルタ英会話」を立ち上げました。
小茂鳥さんはモルガン・スタンレーの仕事の中で、英語に関してどのように振る舞ってきたのか、困った点はなかったのか、そしてその経験が英会話スクールの起業にどのように結び付いてるのかといったことを聞いてきました。【丸山紀一朗】
「会話はチャットで!」インドの同僚に必死の要請
――英語スキルについて事実関係を確認させてください。内定した時に何点だったのですか?
小茂鳥:モルガン・スタンレー(以下、モルスタ)に内定が決まった段階ではTOEIC380点くらいでした。その後、モルスタの先輩からTOEIC800点以上にしないとダメといわれたので、猛勉強の末、入社の段階では800点までは取得しました。
――元が380点とはいえ800点まで上げるのは大変だったと思います。どんな勉強をしたのでしょう?
小茂鳥:入社前に1カ月間、会社がカナダ留学に行かせてくれたのですが、勉強は全くしませんでした。授業中は本当に皆が何を言っているか分からないので、ずっとネットサーフィンしていましたし、夜は飲み歩いて楽しかった記憶しかありません。
TOEICの点数を上げるためにやったのは、いわゆる問題集を何冊も、何周もするということ。1周目にミスしたところだけを2周目にやり、というのを繰り返し、必ず100点が取れるまでやり続けます。それをいつまでに何冊終わらせる、という目標を置いていましたね。
――モルスタの同期や先輩などの英語スキルはいかがでしたか?
小茂鳥:社員は皆ほとんどTOEIC900点以上ですし、同期でたまたまもう一人だけできない人がいましたが、900点に届かないのは我々2人だけでした。おそらく全世界的に見てそうだったのでしょう。基本的に皆、1年以上の留学経験があって英語ペラペラでした。
――実際の仕事では苦労しましたか?
小茂鳥:800点とはいえ全然しゃべれないので苦労しました。緊急性を要する案件が発生した時、例えばインドと直接やり取りする必要があるのですが、僕は英語がしゃべれない。ですから「電話じゃわからないからチャットにしてくれ!」とお願いしていました。上司の前でやり辛かったですが、意思疎通できないよりましだと思い、必死でしたね。
ミーティングなどでも英語で話さなければいけない場面はありましたが、それはかなり入念に準備をしていけば大丈夫でした。僕のいた部署は日本企業、日本人がお客さんであることがほとんどなので英語の必要性が比較的低く、使っても週に1~2回くらい。英語によるコミュニケーションの大きなトラブルはなかったですね。
激務の中での勉強法「仕事と英語をつなげてしまえ」
――とはいえ英語が必要な環境です。日々のハードワークの中でどのように英語を勉強していましたか?
小茂鳥:毎朝5時には出勤し、その日の相場に関するニュースや海外トレーダーのオピニオンなどを英語で収集して、日本語に翻訳してお客さんに発信していました。「仕事と英語学習をつなげてしまえ」と自分なりに考えてやったことです。金融に関する英語しか出てこないので、毎日続けているとそのうちほぼ調べずに、すべて読めるようになりました。
これは実際、お客さんから喜ばれていたようで、僕が退職するときには、けっこうたくさんの方から「毎日楽しみに読んでいたのにー」というお言葉をもらい、うれしかったです。こうして海外の最新情報を分かりやすく届けることで、お客さんとの良い関係性作りができていたのだと思います。
――英語の話ではありませんが、モルスタでのお仕事自体は楽しめましたか?
小茂鳥:楽しかった部分と、しんどかった部分がありますね。お客さんと話しているのは大好きでして、一緒に富士山に登ったり美味しいものを食べに行ったり、映画に行ったりフットサルを一緒にやったりという関係性まで築けたのは、仕事の枠を超えて楽しめましたね。
一方でしんどかったのは、元々の金融知識や政治経済の一般常識がなさ過ぎたことです。元々理系で「相対性理論」などへの関心はとても強かったのですが、総理大臣の名前といった時事にはまったく関心がなく、最初の3カ月くらいは本当に苦労しました。
あとは「目に見えぬプレッシャー」を、僕は心からは楽しめなかったかもしれません。明示的に先輩らから「これをやれ」といわれるわけではないのですが、これをやらなければいけないと自分で思ってしまう窮屈な感じのストレスは僕には合わなかったですね。学生時代に起業した経験もあったので、自分の自由にできる環境への渇望はありました。
女性から言われた“boring”の意味すら分からなかった
――学生時代など、元々英語に対してどのような向き合い方をしていましたか?
小茂鳥:小学生の時に英語塾みたいなのに入れられたのですが、僕すごくシャイな子どもだったので馴染めませんでしたし、英語が嫌いになりました。中学校でも英語は大嫌いで、大好きな数学に逃げていました。大学でも嫌いで、英語のテストはぎりぎりの線で乗り越えました。
それでも大学時代、海外旅行にはまった時期がありました。友人と、ネパールで友達を作る旅をした時、声をかけた女性が「ボーリング、ボーリング」って言っているので、僕は「(球を投げてピンを倒す)ボーリング?」などと会話していたのですが、本当は“boring”、つまり「退屈だ」と言われたことに後から気付いてショックでした(笑)。
就活に向けてさすがにこのままの英語力だとまずいと思い、友人と1週間で英単語1900個を覚える勝負をしました。1日15時間くらい勉強し、元々理系で答えのあるものを覚えるのは得意だったこともあり、人間やればできるのだなと思いました。
――ずっと英語が嫌いだったのに、なぜわざわざ外資系に就職したのでしょうか?
小茂鳥:大学1~2年生のころに家庭教師派遣の会社を起業した経験があったため、また起業したいという思いがありました。そのため、元々社会に出ても2~3年で辞めようと考えており、それができる会社を探していました。それに加え、大きな仕事がしたいと考えていたので、商社か不動産か外資系かに絞りました。
その中で一番選考の早かった外資系を4社受けて、モルスタに内定をもらえたので就活をやめちゃいました。その前にOB訪問や会社説明会などはたくさん行きましたが、内定ももらえてしまったので、就活を終わりにして遊ぼうと思ったのが本音です。
英語が好きになったのはモルスタを辞めた後
――昔から一貫して「英語嫌い」だと思いますが、モルスタを辞める直前あたりでは好きになっていたのでしょうか?
小茂鳥:モルスタを辞める段階では、「やっと慣れたな」くらいですね。楽しいとか好きという感情は全くなかった。嫌いじゃなくなってきたというくらいでした。そのころは勉強もかねて、『ワンピース』の英語のマンガなどを読んだりしていましたが、「英語が楽しい」というよりは「英語で読んだ本が楽しい」という感覚でした。
――では英語を好きになったのはモルスタを辞めた後なのですね?
小茂鳥:そうですね。モルスタを辞めてから、1年間くらい試行錯誤を繰り返していました。NPO法人を立ち上げたり、スマホアプリを作ってみたり。その中で外国人と一緒に英会話サークルもやっていて、そこで「必要に駆られて」ではなく「自然としゃべる」英語の楽しさを感じ始めました。
極端にいえば、真に英語を楽しいと思い始めたのは1年前くらいからかもしれません。数年前に立ち上げたスパルタ英会話で、外国人の講師を採用し、彼らとコミュニケーションを取ってビジネスを作り上げていく。その過程で彼らともっともっと話したいと思ったことで、自然と英語も好きなりました。
――改めて、なぜ英会話スクールを立ち上げたのでしょうか?
小茂鳥:僕自身、社会に対するさまざまな課題意識があります。英語だけではないです。ただその中で、英語は自分が苦労したことであるのが大きい。そして英会話サークルなどをやっているうちに、助けてくれる仲間が増え、僕の提供するサービスが欲しいと言ってくださる人も増えまして、とても良い環境が整ったから立ち上げました。
スパルタ英会話、一人一人に「最適化」させるこだわり
――スパルタ英会話で一番こだわっていることは何ですか?
小茂鳥:一番こだわりがあるのは、一人一人のお客さんに「最適化」した方法で英語を身につけてもらうため、「最適解」をご用意することです。例えば、そのお客さんが金融業界に勤めていれば金融についてどのように英語で勉強するかを提案します。「こういう勉強法が苦手です」という人には別のやり方を提示します。
英語のプロフェッショナルとしてベストな解を提案しつつも、これもあるよ、あれもあるよといった具合に、引き出しを多く持っておくことが重要です。多店舗展開する大手の英会話教室になると、この一人一人に合わせた最適化がしづらくなるため、僕らはそこには踏み切らず、サービスの質を上げていきたいと思っています。
――英語を身につけるための目標設定にも独特の方法があると聞きます。
小茂鳥:エッセンスは2つあります。一つは自分で設定した目標に対して、上からも下からも繰り返し検証することです。例えば、「12月までTOEIC900点」という目標を定めたら、逆算して10月には何点取らなければならず、そのためにはどのくらいのテキストをやらなければいけない、といった具合です。
そしてもう一つは、このように細かく分解していった計画が、本当に達成できそうか一生懸命想像することです。その結果、仮に「できない」となれば、目標設定がおかしいか、期間がおかしいか、やり方がおかしいかの3つの中から原因を考え、もう一度目標設定をやり直します。
このように時間と労力をかけ、本当に細かく考え直しながら目標を設定し、「あとはやるだけ」というところまでプランを作り込むことが大事です。
――外資就活ドットコムを利用するトップティア学生の中にも英語に苦手意識のある人はいます。そんな皆さんにメッセージをお願いします。
小茂鳥:伝えたいのは、「自分の思った道しか答えはない」ということです。
モルスタ時代の先輩に似たようなことを言われました。僕が先輩たちに、どうやったら営業がうまくできるかを聞いて回ったことがあるのですが、ある先輩が「結局お前が考えられることしか先輩たちもやっていない。秘法や秘術はない。お前が考えたことを本気でやり続けるしかない」とおっしゃっていたのが印象深いです。
すなわち、英語が本当に必要だと自分で思えば本気でやればいいと思います。例えば面接の質疑応答を50個くらい用意すれば、すぐにすべて答えられるようになるでしょう。一方で、「いやおれは日本語だけで乗り切るぞ」と思うのであれば別の部分を磨けばいいと思います。正解は一つではない。自分の信じた答えに向かって、柔軟に戦略を考えてください。
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