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※こちらの記事は、弊社が運営する若手プロフェッショナル向けキャリアアップ支援サービス「Liiga(リーガ)」からの転載となっております。
はじめに
金融機関のクライアントへの人材紹介を専門とするExecutive Search会社の株式会社スタート・プランニング・ジャパン代表取締役・山崎正氏へのインタビューの後編です。
後編では、PEファンドから内定がでやすい候補者の内面的な特徴や山崎氏が語る若手とベテランプロフェッショナルの違いを語っていただきました。
どうぞご覧ください。
知られざるPEファンドの転職事情。人材エージェントが語るその実態とは(前編)
選考ではキャラクター重視。PEファンドへの転職が成功しやすい人材像とは
- 前編では主にPEファンドへ転職しやすい方のご経歴をお伺いしました。PEファンドから内定が出る方と出ない方で性格など内面的な部分の違いはありますでしょうか。
他の企業も同じことが言えるかもしれませんが、PEファンドの選考では個人の能力や財務系の知識があったうえでリーダーシップや、コミュニケーション能力、人から信頼を得る力などは重視されます。
特にその中でもコミュニケーション能力などの個人が持つキャラクターは非常に重要視されている印象です。
- 個人が持つキャラクターですか。
はい。PEファンドに入社すれば若くして投資先企業の経営人や従業員と話すわけです。
そのため、目上の方々に対し物怖じせず、むしろ可愛がられるようなコミュニケーションを取れるようなキャラクターの持ち主が実際にPEファンドから内定をいただいています。
極端な例を挙げると、「君、若いけどしっかりしてるよね?」と上司や投資先の方に聞かれたときに「いやいやそんなことないっすよ〜。じゃあ、今日飲みにいきますかね?」というような軽いノリで会話ができる人ですね。(笑)
そのような軽いノリを持ちつつ、実際に仕事をするときちんとこなしてくれるような方はファンドからも非常に好まれますし、とてもウケがいいですね。
私が先日、ある日系コンサルティングファームからPEファンドへの転職をサポートさせていただいた方はその典型でした。
その方は選考におけるモデリングテストの出来はあまりよくなかったそうです。ただ人柄が非常に良く、地頭も良さそうだという評価をいただきPEファンドへの転職が決定しました。
- 能力だけでなく、キャラクターも重視されているのですね。どの程度の割合で重視されるのでしょうか。
若ければ若いほどキャラクター重視ですね。もちろんもともとの基礎の能力や知識は持っていて前提という話ですが。
年齢が上がれば上がるほどスキルや経歴を見られるようになります。
また、外資系投資銀行やPEファンドによっては、本当に濃いキャラでないとクライアントから弱そうに見られてしまうため採用しないそうです。
私がサポートさせていただいている方の中には外資系投資銀行の面接に進み、その会社の方とのディナーまでしたものの、最終的にはうまくいかなかった方がいます。非常に優秀な方だったのですが、企業側からするとパンチが弱いと感じてしまったのだそうです。
また、ファンドはどこもベンチャー企業と似ている部分が多いので選考に進むにあたりそのあたりも考慮しなければいけません。
- ベンチャー企業ですか。どのような点が似ているのでしょうか。
仕事を与えられるのではなくて自分から動いて仕事を作っていけるようなタイプじゃないと活躍できないところですね。
大きい組織の中で優秀な方であってもPEファンドの面接官からみたら、能動的に自分から動いていくタイプではないなと判断されてしまい、うまくいかないケースも多いのです。
そういうタイプというものは面接でも見抜かれますし、その人のキャラにも表れます。
そのため、選考では主体性や積極性を強くアピールする必要がありますね。
PEファンドへ転職することは大きなリスクを負うということ
- 転職市場における人気職種のコンサルティングファームへ転職する際には志望動機が非常に重要視される傾向があります。PEファンドや投資銀行への転職する際の志望動機はどの程度重要視されるのでしょうか。
志望動機が重要視されることはPEファンドや投資銀行でも同様ですが、PEファンドでは特に重要視される印象です。
PEファンドでは1件の案件に投資して、投資した案件をイグジットするまでに5年とかかかるわけです。PEファンドによっては1年スパンでクライアント先に常駐し、毎日毎日家からその会社まで通って企業価値向上にコミットしなければなりません。
そのため、面接の際に「将来的には経営者になりたいので、そのためにPEファンドでキャリアを積みたい」ということを言うと、ファンドの方からは「じゃあうちにはそんなに長くいるつもりがないのですね。うちは結構です」と断られてしまいます。
面接では自分のこれからのキャリアは「PEの投資家を目指すんだ」という気持ちで話さないとダメですね。
- 候補者の方はどのような背景があってPEファンドに転職したいと思われるのでしょうか。
会社の経営に自分が責任を持ってより深く携わっていきたいと考えて転職される方が非常に多いです。
例えば投資銀行やコンサルティングファームでM&Aのアドバイザリーとかやっていると最終的にクライアントがM&Aを実行した時点でそのプロジェクトは終了します。
そのためその後、そのクライアント企業の買収先の経営がうまくいく、いかないということに対して責任を負う必要は一切ないのです。
しかし、そのように経営の責任を負わなかったり、経営そのものに深く関与できない部分が嫌だという方が多いですね。
一方でPEファンドに行けば若くして投資先企業の株主として、社外取締役などのポジションで事業会社の経営に携われます。そういう部分にチャレンジできるのはPEファンドの良さでもあります。
そのため、投資銀行やコンサルティングファームでプロジェクトをこなしていくうちに最終的には自分が責任を持ちながら実際に経営に携わり、その会社を良くしていきたいという気持ちが芽生え始め、それが実現できるPEファンドへ転職することを決意される方が非常に多いです。
また、コンサルティングファーム出身の方だと、クライアントからプロジェクトを受注し、戦略を練って提示したものの結局クライアントは実行しなかった経験を持っている方が多く、そのもどかしさが積み重なってPEファンドへの転職を決意される方も多いです。
- 責任を負い、経営に深くに関与するということはそれだけ覚悟も必要になってくるように感じます。
そうですね。PEファンドというのは今のファンド案件を成功させ、次のファンドレイズができないとそこでクローズになり、自分達も失業してしまうわけです。しかも自己資金で出資しているので、成功すれば10倍もの資金になり返ってくるケースもありますが、失敗した場合は自分たちにお金は戻ってきません。
そのリスクを承知のうえで入社を決意しなければなりません。
お金にはある程度貪欲であるべき
- PEファンドへ入社された後はどのようなキャリアを歩む方が多いのでしょうか。
先ほどの志望動機の話とは少し矛盾してしまうのですが、最終的に「プロの投資家を目指す」というよりは「経営者になりたい」とおっしゃる方が非常に多いです。
- その次のキャリアとしてはやはり事業会社の経営者や自分で起業される方も多いのですね。
事業会社の経営企画室長になりたいという人もいれば、自分で起業される方も多いですよね。
ただ、先ほど申し上げたようにPEファンドの選考の面接で経営者になりたいと強く言うと、企業側からは「じゃあ、事業会社に行けばいいじゃないですか」と断られてしまうケースがあります。
やはりPEファンドは経営に携わりたいという思いで志望される方が非常に多いのですが、私がもしPEファンドの人間だったとしても「投資ファンドで投資をやりたいんだ」、「キャピタリストやファンドマネージャーとして一流の投資家を目指していきたいんだ」とおっしゃる候補者を採用したいなと思いますね。なんて言ったってファンドなんですから。
投資して儲けなければならないのです。しかし、そういう感覚をお持ちの方というのは案外少ないものですね。
一方で、PEファンドというのはヘッジファンドやハゲタカファンドみたいに「俺は儲けたい」とお金にガツガツしすぎていることを言うと合わなかったりするので、そのあたりの強弱は気を付けなければなりません。
しかし、やはりファンドに行くからには自分で投資案件を見つけ、投資を実行し、バリューアップすることによってリターンをだして、「最終的に儲けたい」という気持ちをある程度面接で推し出さないと、「絶対に事業会社行った方がいいですよ」とか「独立したらどうですか」ということを言われてしまいますね。
- ある程度はお金に貪欲な気持ちを面接で伝えなければならないのですね。
そうですね。ある程度です。
その線引きは難しく、PEファンドによって異なるので私は候補者の方には事前にきちんと説明していますね。特にPEファンドはそれぞれのファンドで理念の違いなどがあるのでそのあたりは選考に進むにあたって理解しておかなければなりません。
しかし、本当にその人がそのファンドにカルチャーマッチするかしないかということは面接をしてみないとわかりません。そのため私は何社か同時に面接するように勧めています。
PEファンドや投資銀行は肉食動物の世界
- PEファンドや投資銀行へ転職するためにはそれに伴ったご経歴やモデリングの経験、財務の知識が必要であるということがわかりました。それ以外で特に身に着けるべきこと、気を付けるべきことなどがあれば教えていただいてもよろしいでしょうか。
とにかく謙虚な気持ちを持ち、自分が知らないことをどんどん自分で吸収していったり、前向きに自分から働きかけていこうとしたりするタイプがPEファンドや投資銀行への転職を成功させていますね。
やはり一般的な会社の環境と投資銀行やPEファンドの環境は違うんですよね。
例えるならばぬるま湯と熱湯風呂くらいの違いです。一般的な会社は言ってしまえば草食動物の世界で投資銀行やPEファンドは肉食動物の世界です。
そのため、自分から主体的に行動を起こし、様々なことを主張し、貪欲に学んでいく姿勢がある方でないと生き残ることは難しいかもしれません。
肉食動物なのに間違えて草食動物の世界に入ってしまった方は、肉食動物の世界へ入れる可能性はあります。
しかし、草食動物の方は肉食動物になることは難しいですね。そのあたりの向き不向きはよく考えた方が良いかもしれません。
「己を知っていること」。山崎氏が語る若手とベテランの違い
- 山崎さんが若手プロフェッショナルのキャリアをサポートするようになったのは比較的最近だとお伺いしましたが、若手とベテランの考え方や志向の違いなどを感じることはありますか?
やはりキャリアに対する考え方の違いは感じます。ある程度プロとしてやってきている方と新卒入社して3、4年目の方ではその人間性や己をわかっているか否かという点を含めて全然違います。
- 己をわかっているとはどういうことでしょうか。
例えば今までの人生で良い大学を卒業し、新卒でも良い企業に入社してうまく人生を積み重ねてきた方の中には、今まで経験したことがない仕事でも「自分は何でもできる」と大きな自信をもっている方が非常に多いです。
そのこと自体は全く悪くないのですが、自信があるあまり、自分の能力を過信してしまうんですよね。転職活動時にも十分な対策を施さなかったり、不十分な志望動機で選考に進んでしまう方が多いです。
そして、最初は自信を持って転職活動に取り組んでいたものの、なかなか選考に進めず、本人が自分の実力不足を段々実感してくるといった感じです。
僕からも準備するようには伝えているのですが、それでも十分に対策を行わない方も多く、そういう方はうまく転職活動は進みませんね。
そのため、現在の自分の能力に天狗になっているような方が投資銀行やPEファンドへ転職し、活躍することは難しいですね。今の会社の中では自分が優秀かもしれませんが、外にはいくらでも優秀な人がいるわけです。
- 転職活動を経験していない若手の方が「己を理解する」ということは非常に難しいうように感じます。どのように自分の実力を理解したり、外の世界の優秀な方の存在を知ることがよいと思いますか?
例えば稲盛さんなどの経営者の本を読み、世の中の優秀な方々がどのような苦労を経て成功をしてきたのかということを理解することは1つの手だと思います。
また、PEファンドへの転職を目指すのであれば、日本バイアウト研究所という機関が出しているバイアウトに関するシリーズ本がおすすめです。
そこには過去の実際の案件においてファンドが投資した投資先の企業の方々がどう思っているかということやその案件をバイアウトやイグジットするまでどういう苦労があったかとういこと等が詳しく書いてあります。
そういう書物を読み、現在ファンドにいる優秀な方々が苦労してやっとリターンを得ていることを感じることで自分は「やっぱりまだまだなんだな」ということを実感することができるはずです。
その本を読んでも心の琴線に触れないのであれば、転職はせず、今の企業に勤めていた方が良いかもしれません。
- ちなみに他におすすめの本などはありますでしょうか。
事業再生や事業承継に関することでも先ほど申し上げたバイアウトシリーズを読むことがいいと思います。あとは外資系投資銀行の若手が書いている残酷日記みたいなブログや本があるのでこちらもおすすめです。
こういった先輩方の本やブログを読み、とにかく下積み時代から寝ないで雑用も含めて仕事をする覚悟を自分の中に植え付けた方がいいかもしれません。
- 本を読み、転職先の実態を知ることは非常に大事なのですね。
そうですね。特に日系・外資系問わず投資銀行やPEファンドは花形の仕事をすぐに与えられるわけではないので下積みを経なければなりません。
そのため、徹夜してでも与えられた仕事をやり遂げる達成感や大きな案件の中の一部に自分が携われたことに喜びを感じれるような人でないと続かないと思います。
だからこそ転職をする前に業務の中身をわかってることが重要です。そして自分が今やりたいと思っていることは本当にやりたいことなのかということを改めて考えた方がいいかもしれません。
まず自分がやりたいと思っている仕事や業界、転職したいと思っている企業に関することをきちんと勉強をして理解をし、それでも本当にやりたい仕事であると感じるのであれば転職をするべきだと思います。しかし、現時点で漠然とした気持ちで転職したいと思っているのであれば、まず自己確認を行う段階から始めなければいけないですね。
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