会員登録すると
このコラムを保存して、いつでも見返せます
就職したら仕事をバリバリしたいけれど、結婚や子育てと両立できるだろうか――。そんな不安を胸に抱きながら、就活している女子学生は少なくないかもしれません。しかし、アビームコンサルティングの執行役員を務めるコンサルタント・岩井かおりさんは「就活のときに心配しすぎて、自分の可能性を狭めないでほしい」とアドバイスします。二人の子どもを育てながら、グローバルな舞台の第一線で働き続けてきた岩井さん。これまで、どんなことを考えながらキャリアを歩んできたのか、できるだけ率直に語ってもらいました。(取材・構成:亀松太郎、撮影:岸田浩和)
留学のため、他の学生よりも出遅れた就職活動
――岩井さんは1992年に上智大学外国語学部を卒業して、最初の会社である食品メーカーに入社したということですが、どんな就活をしたのでしょうか?
岩井:私は他の人と比べて、かなり出遅れたスタートでした。大学3年から1年間、アメリカに留学して、帰国したのは4年生の6月でした。日本に戻ってきたら、友人はみんな就活を終えていました。慌てて会社回りを始めて苦労しましたが、「グローバル」という軸だけは譲りたくなかった。海外で活躍する機会がある企業を中心に探しました。
――食品メーカーを選んだのは、なぜですか?
岩井:その会社の役員が、女性の活躍を意識していて、且つ、グローバルに展開していきたいという考えを持った方だったので、「この会社だったら面白いことができるかもしれない」と思いました。
――前職の食品メーカーには8年ほど在籍したということですが、どんな仕事だったのでしょう?
岩井:当時は女性は一般職で働く方が多かったですが、私は総合職として海外営業の仕事をしていました。いろんな国へ出張して、海外のエージェントに自社の製品を売り込んでいく。自分が紹介した製品が日本から海外へ出ていき、市場に出回るというのは、とても面白い経験で、刺激的でした。
――女性も男性と同じように働ける会社だったということでしょうか。
岩井:私自身の仕事の内容には満足していましたが、会社全体でみると、少なからず男女の差はありました。たとえば、女性だけが全員制服でしたし、女性だけがお茶くみをする、という習慣も残っていました。大学までは「男女関係なく成績の良いほうが優秀だよね」という世界だったので、このような風土は衝撃的でした。
――そんな違和感もあって転職を考えた、と。
岩井:転職を考えたのは結婚して、一人目の子どもを出産した後です。私は出産後も以前と同じように海外と接点を持つ仕事をしたかったのですが、復職後は国内の仕事だけに限定されるようになりました。もともと前職では、私が育児休暇を取得した第1号でした。会社としても初めてのことばかりで、上司が気を遣って楽な仕事にしてくれたのですが、「何かが違う」と思ってしまって。もっとグローバルに活躍したいと思い、転職を決意しました。
「男女の機会の差がないこと」に驚いた
――それでアビームに転職したということですが、食品メーカーとコンサルティングファームでは、仕事の内容も違うのではないですか?
岩井:まったく違う仕事ですね。私が入社した当時は、海外オフィスから外国籍のコンサルタントがたくさん出向してきている時代でした。彼らが日本でプロジェクトをするために、日本人のバイリンガルのコンサルタントが必要だということで、採用されました。ちょうど30歳のときでした。
――全然違う業界に移って、戸惑いはなかったですか?
岩井:良い意味で驚いたのは、男女の機会の差がなかったことです。転職エージェントから「女性の社員にも機会が等しくある会社」と勧められたのですが、実際に入ってみると本当にその通りでした。こんなに当たり前に、女性でも仕事と役割が与えられるのか、と驚きました。
もちろん男女の差がないといっても、男性と女性がまったく同じように働かないといけないわけではありません。私の場合は、子どもがまだ小さかったので、病気のときなどは、周りが配慮してくれました。あくまで「機会は与えるから、そこでしっかり成果を出してほしい」ということです。
――男女が同じように働けるというのは、コンサルタントという仕事の性質もあるのでしょうか。
岩井:他のコンサルティングファームのことは詳しくわからないため一概には言えませんが、男女関係なく働ける会社が多いように思います。コンサルティングファームは、コンサルタント自身が商品です。クライアントのニーズに応えることが、私たちコンサルタントに求められていることなので、男女はもちろん、年齢や国籍など一切関係ありません。
――岩井さんは現在、アビームコンサルティングの執行役員プリンシパルとして、ITマネジメント&サービスセクターを率いているということですが、その部門は600人もいるそうですね。具体的にどのような仕事をされているのでしょうか。
岩井:ITをコアにしたコンサルティングサービスを提供する部署です。私はその責任者として、クライアントにしっかりとしたソリューションやサービスを提供できているか、メンバーがちゃんと成長できているかといったことを考えながら、このセクターを運営しています。
そういう組織運営の仕事に加えて、30〜40くらいのプロジェクトの責任者もしています。クライアントに、システムを導入して、安定的に運用・改善していく。そのとき、QCD(品質・コスト・納期)が十分かどうかに注意しながらプロジェクトを進めるとともに、クライアントとの良好な関係を構築していきます。
――さらに社内のダイバーシティ推進にも関わっている、と。
岩井:今年の4月から「Diversity & Inclusion Initiatives」という全社プロジェクトの責任者を担っています。多様性を尊重し、一人ひとり価値観の異なる社員と向き合い、どうしたらそれぞれの力が最大限に発揮でき、活き活き仕事ができるのかを他のメンバーと議論しながら考えています。仕事と子育ての両立支援も重要なテーマで、パパママ社員によるワークショップや育児休業中社員に向けた復職セミナーを行うことで社員同士の結びつきを強めたり、外部講師の講演会等を通じた全社的な意識改革も推進したりしています。
――それだけの仕事をこなしながら、同時に子育てもしていくのは、大変ではないですか?
岩井:大変といえば大変ですが、夫も育児に関して全面的に協力してくれていることもあり、仕事をしているから子育てが辛かったということはないですね。逆に「仕事をしているから子育てを楽しめている」と思うことも多いです。
――どういうことですか?
岩井:仕事がうまくいかないとき、家に帰って子どもと接することで、良いリフレッシュになりますし、子育てに行き詰ったときは、仕事で発散して気持ちを切り替えています。家庭と仕事どちらもあるからこそ、良いサイクルが回っていると感じています。二人の子どもはこれまで私に「仕事をやめてほしい」と言ったことはなく、むしろ「仕事を続けてほしい」といつも言います。仕事が家庭にも良い影響を与えていると感じています。
――就活中の女子学生には励みになりそうな言葉です。
岩井:強く伝えたいのは、結婚や出産について、就活のときに悩む必要はないということです。まだ結婚していない女性社員から「結婚後はどう働けば良いでしょうか」と相談されることもあるのですが、どういう人と結婚して、どんなタイミングで子どもが生まれるかがわからない状況で、あれこれ悩んでも意味はないのです。
それよりも大切なことは、いま自分は何をしたいのかを考えて、目の前のできることをしっかりとやったほうが良い。就職する前からいろんなことを予測しすぎて、自分の可能性を狭めないでほしいですね。
コンサルタントに求められる「人を巻き込む力」
――岩井さんはITを核にしたソリューションのコンサルタントとして活躍してきたということですが、コンサルタントにとって重要な資質とはなんでしょうか?
岩井:コンサルタントにもいろいろなタイプがありますが、私が絶対に必要だと思うのは「人を巻き込む力」です。コンサルタントというと、論理的思考力があって、プレゼンテーションスキルのある人というイメージがあるかもしれませんが、それだけでは不十分です。クライアントのゴールを実現するためには、きちんと周りを巻き込んで、チームとして成果を出せるかどうかが重要です。
――いわゆる「リーダーシップ」ということかと思いますが、日本の社会では伝統的に「リーダーは男性」という風潮が強いように感じます。女性が周りの人を引っ張っていくコツはありますか?
岩井:そこは私もこれまで模索しながらやってきましたが、女性らしいリーダーシップの取り方もあるのかな、と感じています。男性の場合は「俺についてこい!」とグイグイ引っ張っていくやり方もあるでしょうが、私の場合は、メンバーの話を聞きながら、全体を一つの方向に向かわせていく「調整型」のほうが合っているのかな、と。
私も、ITマネジメント&サービスのセクター長になったときは、前任者が力強いリーダーシップを発揮する男性だったので、どうやって600人ものメンバーを束ねていけば良いのか悩みました。しかし、徐々に自分なりのコミュニケーションのスタイルでやっていけば良いと気づき、自信が持てるようになりました。
――最後に学生に向けて、何かアドバイスをお願いします。
岩井:男女問わず、学生時代にやっておいたほうが良いのは「やり抜く経験」です。プロジェクトごとに成果を求められるコンサルティングという仕事では特にそうですが、特定のゴールに向かって仲間と一緒に取り組んで、何かをやり遂げることが重要だと思います。
私の場合は、学生時代にダンスサークルに所属していたのですが、年に数回しかない舞台のために、何十人もの仲間と徹底的に議論して、昼も夜も練習しました。やり遂げたときの達成感や、ゴールに向けた合意形成のプロセスなどは、コンサルタントとしてプロジェクトに取り組むときに「あのときと同じ感覚だな」と思うことがあります。学生のうちに、ぜひ何かにチャレンジしやり遂げてほしいと思います。
会員登録すると
このコラムを保存して
いつでも見返せます
マッキンゼー ゴールドマン 三菱商事
P&G アクセンチュア
内定攻略 会員限定公開
トップ企業内定者が利用する外資就活ドットコム
この記事を友達に教える